オルセノン軟膏を使っていた方の中には、「もう手に入らないの?」「代わりになる薬はあるの?」と感じている人も多いと思います。
この記事では、オルセノン軟膏が使えなくなった背景や、代替として考えられる医療用・市販の軟膏、そして注意すべきポイントをわかりやすく整理していきます。
オルセノン軟膏とはどんな薬?
オルセノン軟膏は、褥瘡(じょくそう)や皮膚潰瘍などの治療に使われてきた医療用軟膏です。主成分は「トレチノイン・トコフェリル」で、これはビタミンA誘導体(レチノイド)とビタミンE誘導体を組み合わせた成分。
皮膚の再生を助け、肉芽形成(新しい皮膚を作る過程)を促進する作用があります。
いわば「傷の再生力を高める」目的で使われる外用薬で、熱傷や糖尿病性潰瘍、下腿潰瘍などにも処方されていました。
ただし刺激が強いこともあり、創傷の状態を見極めて使用する必要がある薬でした。
オルセノン軟膏が販売終了・供給停止になった理由
現在、オルセノン軟膏0.25%は製造・出荷が停止されており、薬局や病院でも入手が難しい状況になっています。
メーカーによる正式な「販売中止」通達は、在庫限りで終了とされており、再供給の予定はないとされています。
医療現場でも長年使用されてきた薬だけに、突然の供給停止に戸惑う声も多く、代替薬を探す動きが広がっています。
代替薬を選ぶ前に知っておきたいこと
「代替品」というと、つい“似た成分の薬を探せばいい”と思いがちですが、創傷治療では少し事情が違います。
オルセノン軟膏は肉芽形成を促進する薬である一方、潰瘍や褥瘡の状態によって必要な薬のタイプがまったく変わります。
- 壊死組織がある → 組織を除去する薬(デブリードマン用軟膏)が必要
- 感染が疑われる → 抗菌・殺菌作用のある薬が必要
- 浸出液が多い → 吸収・湿潤環境を保つ薬が必要
- 乾燥している → 保湿・皮膚保護系の軟膏が適切
つまり、「同じ成分」よりも「同じ目的」をもつ薬を探すことが大切です。創の状態を見極めることが、代替薬選びの第一歩になります。
医療用で代替が検討される軟膏
オルセノン軟膏の目的である“創傷治癒促進”に近い医療用薬はいくつか存在します。
それぞれ作用の違いや得意分野があるため、医師と相談のうえで選ぶのが基本です。
アクトシン軟膏
有効成分:ブクラデシンナトリウム
肉芽形成を促進し、潰瘍や褥瘡などの治癒を助けます。オルセノン軟膏と同様の目的で使用されることが多く、医療現場での代替候補として最も有力とされています。
アズノール軟膏
有効成分:ジメチルイソプロピルアズレン
炎症を抑え、皮膚の修復を助ける青色の軟膏。軽いびらんや湿疹、浅い創傷に使用され、刺激が少ないのが特徴です。市販薬としても入手しやすい点がメリット。
亜鉛華軟膏
有効成分:酸化亜鉛
皮膚を保護し、滲出液を吸着する性質があります。浅い傷や湿疹、軽い褥瘡の初期段階に使われることが多い薬です。
ユーパスタコーワ軟膏
医療用の創傷治療剤で、滲出液の多い傷や褥瘡に適しています。湿潤環境を保つタイプの軟膏で、治癒を助けるサポート的な役割があります。
カデックス軟膏
有効成分:カデキソマー・ヨウ素
壊死組織や感染を伴う創傷に用いられ、殺菌作用とデブリードマン(壊死組織除去)作用を持ちます。滲出液が多い傷にも有効で、清浄化を目的とした薬です。
ブロメライン軟膏
有効成分:ブロメライン(酵素)
壊死組織を分解し除去するための薬です。感染や壊死を伴う深い褥瘡や潰瘍に使用され、創面をきれいにする役割を果たします。
市販薬で代用できる可能性があるもの
市販薬で完全にオルセノン軟膏を代用することはできませんが、軽い傷や炎症などには市販の外用薬が役立つことがあります。
アズノール軟膏(OTC版)
薬局で購入可能。軽い炎症や擦り傷などに使えます。刺激が少なく、肌の弱い人でも比較的安心して使えるタイプです。
亜鉛華軟膏
安価で手に入りやすく、皮膚の保護や炎症の軽減に役立ちます。乾燥傾向の傷や軽い褥瘡予防にも使われます。
ワセリン
刺激がなく、皮膚の保護や乾燥防止に有効。治療薬というよりは、保湿・補助ケアとして使うと効果的です。
これらの市販薬はあくまで軽症向け。
深い傷、滲出液が多い潰瘍、壊死組織のある創傷などには使えないため、症状が重い場合は必ず医師に相談しましょう。
スキンケア用レチノールは代用にならない
ネット上では「ビタミンA配合クリーム(レチノール)」をオルセノン軟膏の代わりに使うという情報も見かけますが、これは誤解です。
スキンケア用のレチノールはあくまで美容目的であり、創傷や潰瘍の治療には適していません。むしろ刺激が強く、傷口に塗ると悪化するリスクもあります。
同じ“レチノイド系”という点では似ていますが、用途も濃度もまったく異なります。創傷治療では使用しないよう注意が必要です。
創傷の状態別・おすすめの代替アプローチ
創のタイプごとに、目的に合った外用薬を使い分けるのが理想です。
軽いびらんや浅い傷
アズノール軟膏や亜鉛華軟膏など、市販で入手できる保護系軟膏が適しています。
創面を清潔に保ち、乾燥させすぎないよう湿潤環境を意識することがポイントです。
滲出液が多い場合
ユーパスタコーワ軟膏のような湿潤療法用の薬や、吸収性ガーゼを併用すると治りが早くなります。
ガーゼ交換は1日1〜2回を目安に行いましょう。
壊死組織や感染の疑いがある場合
カデックス軟膏やブロメライン軟膏など、抗菌・酵素分解作用をもつ薬が有効です。
ただし、刺激が強いため医療従事者の管理下での使用が推奨されます。
肉芽形成を促したい場合
アクトシン軟膏が第一候補となります。オルセノン軟膏と目的が近く、創傷治癒を後押しします。
医師の処方で使用できるので、再生促進を目的とする場合は医療機関に相談を。
医師に相談すべきサイン
- 傷が2週間以上治らない
- 滲出液が増えている、悪臭がする
- 周囲の皮膚が赤く腫れている
- 痛みや熱感が強くなった
- 糖尿病などの基礎疾患がある
これらに当てはまる場合は、自己判断せず早めに受診してください。
創傷治療は「清潔」「湿潤」「適切な外用薬」の3要素がそろって初めて効果を発揮します。
まとめ|オルセノン軟膏の代替品を正しく選ぶために
オルセノン軟膏の販売終了は残念ですが、創傷治療には多くの選択肢があります。
アクトシン軟膏やアズノール軟膏、ユーパスタコーワ軟膏など、創の状態に合わせて代用できる薬を選ぶことが可能です。
一方で、「スキンケア用のレチノール」や「自己判断での市販薬使用」は避けるべきです。
創傷の種類や深さ、感染の有無などを医師と相談しながら、安全にケアを続けることが大切です。
創面の清潔を保ち、湿潤環境を整え、適切な薬を使う——その積み重ねが治癒への近道になります。
オルセノン軟膏が使えなくなっても、焦らず、正しい知識と方法で対応していきましょう。
