「カデックス軟膏が手に入らない」「市販で似た薬はある？」――そんな声を最近よく聞きます。
実はカデックス軟膏は医療用医薬品であり、一般のドラッグストアには並ばない処方薬。だからこそ、似た効果をもつ代替品を探す人が多いのです。この記事では、カデックス軟膏の特徴を整理しつつ、市販で入手しやすい代用薬や代用法をわかりやすく紹介します。
カデックス軟膏とは？特徴と使われ方
カデックス軟膏は「ヨウ素」を有効成分とする外用薬です。正式には「ヨウ素含有デキストリンポリマー軟膏」で、滲出液を吸い取りながら徐々にヨウ素を放出し、殺菌作用を長時間維持できるという特徴があります。
主に使用されるのは、次のような症状です。
- 褥瘡（じょくそう、いわゆる床ずれ）
- 下腿潰瘍や熱傷潰瘍
- 感染や壊死組織を伴う創傷
創面を清潔にしつつ治癒を促す「創傷治療軟膏」として病院で処方されます。ヨウ素は広範囲な抗菌作用をもち、細菌や真菌にも効果があるため、感染予防の目的でもよく使われます。
カデックス軟膏が手に入りにくい理由
カデックス軟膏は処方箋が必要な医療用医薬品です。そのため、薬局で自由に購入することはできません。
また、ヨウ素系の薬剤は長期間や広範囲に使用すると、まれに甲状腺機能への影響が出る可能性があるため、医師の管理下での使用が推奨されています。
「以前使っていたが今は病院でしかもらえない」「似た薬をドラッグストアで探したい」といった場合、完全に同一成分の市販薬は存在しません。
ただし、「似た目的や作用をもつ市販薬」「同様の効果を期待できる治療法」は複数あります。
カデックス軟膏の代替品として考えられる市販薬
ここでは、目的や症状別に「カデックス軟膏の代わりに使いやすい」市販薬を紹介します。
それぞれ効果の方向性が異なるため、傷の状態に合わせて選ぶのがポイントです。
1. 軽い傷・皮膚の保護を目的にする場合
- 白色ワセリン（プロペトなど）
刺激が少なく、乾燥や摩擦から皮膚を守る保護剤。軽度の擦り傷やかぶれ、湿疹などに向いています。
滲出液が少ない浅い傷なら、ワセリンで十分に保護・保湿できます。 - 亜鉛化軟膏
酸化亜鉛が皮膚を保護し、軽い炎症を抑える働きがあります。かゆみやかぶれを伴う場合にも使われます。 - アズノール軟膏（市販名：アズノールEXなど）
有効成分アズレンが炎症を鎮め、皮膚の再生を助けます。軽い火傷や湿疹、日焼けのケアにも適しています。
これらは「カデックスほどの殺菌力」はありませんが、軽度の創傷や皮膚トラブルの初期対応には有効です。
2. 化膿や感染リスクがある傷の場合
滲出液が多い・膿が出る・赤く腫れている――そんな傷には、抗菌作用を持つ軟膏が有効です。
- クロマイ-P軟膏AS
抗生物質クロラムフェニコールとステロイドを含み、化膿性皮膚炎やとびひ、毛嚢炎などに効果があります。
炎症を抑えつつ、細菌感染の悪化を防ぐ役割を果たします。 - ユーパスタコーワ軟膏
医療用ではありますが、カデックスと並んで褥瘡や潰瘍に使われることが多い薬です。主成分は硫酸カルシウムで、滲出液を吸収しながら創面を清浄化します。医師の処方が必要ですが、近い目的で用いられる代表的な外用薬です。
市販薬で抗菌を目的とする場合は、「感染性皮膚炎」「とびひ」などの効能が明記されている製品を選ぶのが目安です。ただし、ステロイド入りは長期使用を避け、薬剤師の指導のもとで使いましょう。
3. 皮膚の再生・治癒促進を目的にする場合
傷がある程度治ってきた段階では、皮膚の再生を助ける軟膏が役立ちます。
- アクトシン軟膏
有効成分ブクラデシンナトリウムが血流を改善し、肉芽形成を促します。
褥瘡や潰瘍の治癒期に使用されることが多く、創傷治癒促進剤として知られています。 - プロスタンディン軟膏
血行を促進し、皮膚再生をサポートします。滲出液が少なくなった後の回復段階に適しています。
これらはカデックスのような殺菌効果はありませんが、「再生を助ける」点で役割が似ています。
代替品を選ぶ際のポイント
代替薬を選ぶときは、次の3つを意識すると失敗しにくいです。
- 傷の状態を見極める
滲出液が多い／少ない、感染している／していない――これを把握するだけで、選ぶ薬の方向性が変わります。 - 目的を明確にする
殺菌が目的なのか、保護・再生が目的なのかを決めましょう。カデックスは「殺菌＋吸収＋治癒促進」を兼ねる薬ですが、市販品はどれか一つに特化していることが多いです。 - 自己判断で長期使用しない
感染が疑われる場合や、2週間以上改善が見られない場合は皮膚科の受診が必要です。
また、ヨウ素アレルギーや甲状腺疾患のある人は、ヨウ素系外用剤を避けましょう。
家でできるカデックス軟膏の代用ケア方法
市販薬を使う際は、薬そのものよりも「創面管理（ケアの仕方）」が重要です。
以下の流れで処置を行うと、感染を防ぎつつ治癒を促進できます。
- 流水でやさしく洗う
石けんを使わず、水またはぬるま湯で汚れや膿を落とします。
強くこすらず、ティッシュなどで軽く水分を拭き取る程度にします。 - 抗菌または保護軟膏を薄く塗る
傷の状態に応じて、ワセリン・亜鉛化軟膏・抗菌軟膏などを選び、清潔な指または綿棒で薄く塗ります。 - ガーゼまたはフィルムで保護
空気に触れると乾燥して治りが遅くなるため、滲出液が多い場合は滅菌ガーゼで覆いましょう。
最近では「湿潤療法用の絆創膏（ハイドロコロイド系）」も便利です。 - 1日1～2回の交換
ガーゼが汚れたり滲出液が増えたら交換します。悪臭や発赤が強まる場合は感染のサインなので、早めに医師へ相談を。
カデックス軟膏の代替が難しいケースとは？
以下のような場合は、市販薬での対応は限界があります。
- 傷が深い、または治らない潰瘍
- 滲出液や膿が多く、臭いが強い
- 糖尿病や循環障害をもつ人の下肢潰瘍
- 壊死組織がある、または痛み・熱感を伴う
こうしたケースは、感染や壊死が進行している可能性があり、外科的処置や専門的な創傷管理が必要です。
カデックス軟膏は医師のもとで使用される薬であり、これを完全に代用する市販薬は存在しません。
カデックス軟膏の代替品を使う前に知っておきたいこと
ヨウ素を含む外用剤は、アレルギー体質や甲状腺疾患を持つ人では注意が必要です。
また、ヨウ素を含むうがい薬や消毒液を併用すると、体内のヨウ素量が増え、甲状腺に負担がかかるおそれがあります。
市販のヨウ素入り製品を選ぶときは、成分欄を必ずチェックしましょう。
また、「抗菌剤＋ステロイド配合軟膏」を長期使用すると、皮膚のバリア機能が弱まったり、真菌感染が起こることもあります。
自己判断での塗布は短期間にとどめ、悪化時は専門家のアドバイスを受けることが重要です。
まとめ｜カデックス軟膏の代替品を上手に使うコツ
カデックス軟膏は、ヨウ素の殺菌力と滲出液吸収力を兼ね備えた創傷治療薬です。
そのため「まったく同じ市販薬」は存在しませんが、症状や目的に合わせて代用できる薬はあります。
- 軽い傷や乾燥 → 白色ワセリン、亜鉛化軟膏、アズノール軟膏
- 化膿・感染リスク → クロマイ-P軟膏AS、抗菌外用剤
- 再生促進 → アクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏
最も大切なのは「状態に合った薬を選ぶこと」と「悪化時は医療機関に相談すること」。
創傷ケアは自己判断で長引かせると、治りが遅れるだけでなく、感染症や慢性潰瘍の原因になることもあります。
カデックス軟膏の代替品を上手に活用しながら、早く・安全に治すためのケアを心がけましょう。
