ドライアイ治療薬として長年多くの人に使われてきた「ジクアス点眼液」。しかし近年、出荷停止や供給制限などの影響で「手に入らない」「他の薬で代わりになるものは？」と悩む人が増えています。今回はそんな方に向けて、ジクアスの特徴と代替品として検討できる点眼薬・市販薬をわかりやすく整理します。
ジクアス点眼液とはどんな薬？
ジクアス点眼液は、有効成分「ジクアホソルナトリウム」を含むドライアイ治療薬です。涙の「水分」と「ムチン（ねばり成分）」の両方の分泌を促すことで、目の表面をうるおし、乾燥やゴロゴロ感を和らげます。
従来の人工涙液のように“外から水分を補う”タイプではなく、“自分の目の涙の分泌を促す”作用を持つのが大きな特徴です。ドライアイ治療薬の中でも、より根本的なアプローチができる薬として広く使われてきました。
使用方法は通常1日6回点眼。防腐剤無添加のタイプ（ジクアスLX点眼液3％）もあり、長期的に安心して使える設計になっています。
なぜジクアス点眼液の代替品が求められているのか
2024年に入り、ジクアスLX点眼液3％の一部ロットで防腐剤の濃度に不具合が見つかり、自主回収・出荷停止となりました。この影響で、薬局・病院でも在庫が不足し、代替薬への切り替えが必要になった患者が増えています。
ただし、同じ成分（ジクアホソルナトリウム）を含む市販薬は存在しません。ジクアス点眼液はあくまで「処方箋医薬品」に分類されており、ドラッグストアなどで購入することはできません。
そのため、代替品を考えるときには「ジクアスと似た働きを持つ薬」「ドライアイ症状の緩和に役立つ市販薬」をうまく組み合わせて考える必要があります。
ジクアス点眼液に近い作用をもつ処方薬
ジクアスと同様に「涙の質」に着目した治療薬はいくつかあります。その中でも特に代替候補として挙げられるのが以下の薬です。
● ムコスタ点眼液UD2％（レバミピド点眼液）
ジクアスと並んでよく使われるのが「ムコスタ点眼液UD2％」。胃薬として知られるムコスタの成分を点眼用にしたもので、角膜や結膜の細胞に働きかけてムチンの産生を促進します。
ジクアスが“水分とムチンの両方”を促すのに対し、ムコスタは“ムチン特化型”といえる薬です。乾きやすさよりも「目の表面の違和感」「しみる」「ゴロゴロ感」が強い人に向いています。
● ヒアレイン点眼液（ヒアルロン酸ナトリウム）
ヒアルロン酸の高い保水力で、涙液層を安定させる点眼薬。涙の補助としての基本薬ともいえる存在で、医療機関では軽～中程度のドライアイに広く処方されています。
ただし、ムチン分泌促進作用はなく、ジクアスとは作用の仕組みが異なります。乾燥が主な症状の場合には十分な改善が期待できます。
この2剤は医師の診察・処方が必要ですが、ジクアスが手に入らない場合の代表的な代替薬として使われることが多いです。
ドライアイ症状の緩和に使える市販の点眼薬
処方薬とまではいかなくても、市販薬でもドライアイの不快感を和らげられるものがあります。代表的なタイプを紹介します。
● ヒアルロン酸配合の目薬
代表例：ヒアレインS、ロートドライエイドEXなど。
ヒアルロン酸が目の表面をコーティングし、水分を保持します。点眼後のしっとり感が強く、目の乾きや疲れ目のケアに最適です。
防腐剤無添加タイプを選べば、長期使用やコンタクト装用中でも安心して使えます。ただし、ジクアスのような涙の分泌促進作用はありません。
● 人工涙液タイプ
代表例：ソフトサンティア、マイティアCLシリーズなど。
涙とほぼ同じ成分で作られており、不足した水分を補います。刺激が少なく、1日に何回でも使える点が特徴。軽度のドライアイには十分効果が見込めます。
● 疲れ目・乾き目向けの総合型点眼薬
代表例：ロートVアクティブ、アイリスCL-Iなど。
ビタミンB6やアミノ酸などを配合し、目の代謝をサポートするタイプ。乾き目に加えて、長時間のスマホ・PC使用による疲労を感じる人におすすめです。
市販薬はあくまで“対症療法”ですが、軽度の症状であれば十分なケアが可能です。
市販薬でカバーできない部分と注意点
ジクアス点眼液は涙の質・量を根本から改善する薬であるのに対し、市販の目薬は基本的に目の表面を一時的にうるおすものです。
そのため、症状が強い・長引く場合には自己判断で市販薬を続けず、眼科受診が推奨されます。
また、以下の点にも注意が必要です。
- 同じ目薬でも使用回数の上限があるものがある
- 防腐剤入りタイプは頻回点眼で刺激を感じることがある
- コンタクトレンズ装用中に使用できない製品もある
「軽度の乾燥には市販薬」「改善しない・異物感が続く場合は病院」――この線引きが大切です。
ドライアイ対策は生活習慣の見直しも重要
点眼薬だけでなく、日常のケアもドライアイ改善に大きく関わります。
- エアコンの風が直接目に当たらないようにする
- 加湿器で室内の湿度を保つ
- パソコンやスマホを見るときは、まばたきを意識的に増やす
- 1時間に1回は画面から目を離して遠くを見る
これらを意識するだけでも、乾きや疲れの軽減につながります。
また、ブルーライトカット眼鏡や温めアイマスクなどの併用もおすすめです。
ジクアス点眼液の代替品を選ぶときの考え方
ジクアス点眼液が手に入らない場合、代替薬を選ぶ際は「症状のタイプ」と「目的」を整理すると失敗しにくくなります。
- 乾きやすい → ヒアルロン酸配合点眼薬
- 涙がすぐ蒸発する → 人工涙液
- 目のゴロゴロ感・粘つき → ムコスタ点眼液UD2％
- 慢性的な症状・角膜障害 → 医師による治療継続
もし以前ジクアス点眼液を使用していて効果を実感していた場合は、医師に相談のうえ「ムコスタ」や「ヒアレイン点眼液」を組み合わせた治療に切り替えるケースもあります。
ジクアス点眼液の代替品まとめ｜ドライアイ治療に使える市販薬は？
まとめると、ジクアス点眼液は涙の「水分」と「ムチン」を増やす特殊な処方薬で、市販薬では完全な代替は難しいのが現状です。
しかし、ヒアレインSやソフトサンティアなどのヒアルロン酸配合点眼薬や人工涙液をうまく活用すれば、軽度の乾きや不快感を十分にケアできます。
ドライアイは放置すると角膜障害や視力の低下につながることもあるため、症状が強いときは早めの眼科受診を。
日常のケアと目薬の正しい選び方を組み合わせて、目の健康を長く保ちましょう。
