無線機の世界で注目を集めている「FTX 1」。
発売以来、アマチュア無線家の間では「次世代のオールモード機」として話題になっています。この記事では、実際の使用感や性能、メリット・デメリットをわかりやすくレビューします。購入を検討している人が「これなら納得できる」と思えるよう、率直な視点で紹介していきます。
FTX 1とは?どんな無線機なのか
FTX 1は、八重洲無線が開発したオールモードSDRトランシーバーです。
HFから430MHzまでの広帯域に対応し、SSBやCW、AM、FM、C4FMデジタルなど、あらゆるモードで通信が可能。いわば「1台で何でもできる万能機」という立ち位置です。
設計思想は「コンパクトでありながら妥協のない性能」。
フィールドでも固定局でも同じように高品質な通信を楽しめるよう、八重洲らしい堅実な作りが感じられます。
また、モデルは大きく2タイプ。
- FTX 1 Field:持ち運びに適した10W機。バッテリー駆動対応。
- FTX 1 Optima:100Wの高出力アンプを備えた固定局向け。
ヘッド部分は共通で、アンプユニットを接続することでFieldからOptimaへ拡張できる仕組みになっています。
この柔軟性こそ、FTX 1シリーズ最大の特徴といえるでしょう。
デザインと操作性 ― 八重洲らしさと進化の両立
初めて手に取ったとき、多くの人が感じるのは「しっかりした作り」です。
筐体は金属製で剛性感が高く、ボタンやつまみの感触も安定しています。携帯機としてはやや大きめですが、屋外運用を想定した堅牢設計は安心感があります。
ディスプレイは4.3インチのカラータッチパネル。
スペクトラムスコープやフィルター設定を指先で直感的に操作できるため、従来のダイヤル操作と比べて格段に扱いやすくなりました。
また、MAIN/SUBの2波同時受信にも対応。
たとえばHFで交信しながら、UHF帯のモニターを同時に行うといった運用が可能です。
この機能は慣れるまで少し時間がかかるものの、コンテスト運用や複数バンドの待ち受けには非常に便利です。
SDR受信がもたらす高い感度と安定性
FTX 1の心臓部は、最新のSDR(ソフトウェア・ディファインド・ラジオ)受信回路。
この方式は、従来のアナログ回路に比べて信号処理の自由度が高く、ノイズリダクションやフィルタリングが非常に精密に行えます。
実際に使ってみると、強い隣接信号がある環境でも混変調が起きにくく、クリアな受信ができる印象。
HF帯のコンディションが悪い日でも安定しており、DSPによるノイズ処理が優秀です。
特に、SDR特有の滑らかなスペクトラム表示は、バンドの混雑具合を一目で把握できる点で高く評価されています。
「視覚的に見ながら調整する感覚」は、従来の無線機とは一線を画しています。
フィールドでの使いやすさ ― 実運用レビュー
FTX 1 Fieldは、ポータブル運用を意識して設計されています。
付属のバッテリーパックは約6400mAhの大容量で、HF帯SSBで約9時間、V/UHF帯FMで約8時間の運用が可能。外部電源をつなげば10W出力で長時間運用もできます。
山頂運用や移動運用でも実際に使ってみると、
「重さはそれなりにあるが、安定感がある」という感想が多いです。
小型化を優先して操作性を犠牲にする機種が多い中、FTX 1はしっかりとした筐体と見やすい画面を両立しています。
技適番号は本体に印字されず、電源投入時にディスプレイに表示される仕組み。
法的な要件を満たしつつ、見た目を損なわない工夫も感じられます。
音質とオーディオ性能 ― 聞きやすさが段違い
八重洲の無線機といえば「音が良い」と言われることが多いですが、FTX 1もその例に漏れません。
内蔵スピーカーの音はクリアで、高域と中域のバランスが良く、長時間聞いても疲れにくいチューニングです。
特にデジタルモードやFT8などの受信では、ノイズが少なく信号が浮き上がるように聞こえる印象。
外部スピーカーを使わなくても十分に満足できる音質です。
送信音についても、標準マイクでナチュラルかつ明瞭。
一部ユーザーからは「標準マイクでも十分」「外部マイクを使えばさらに伸びやか」といった声もあります。
FTX 1のメリット ― この1台でできることの多さ
実際にレビューを通して感じられたFTX 1のメリットを整理してみましょう。
- HFから430MHzまで、オールバンド・オールモードに対応
- SDR受信による高い感度とノイズ耐性
- 2波同時受信で運用効率が向上
- タッチパネルで直感操作が可能
- フィールド運用にも耐える堅牢設計
- Optimaユニット接続で100W出力も可能
- 内蔵バッテリーでも長時間運用ができる
このように、用途を選ばず幅広く使えるのがFTX 1の強み。
とくに「移動運用と固定運用を両方楽しみたい」というユーザーには理想的な選択肢です。
デメリット・注意点 ― 買う前に知っておくべきこと
もちろん、完璧な機種というわけではありません。
使いこなすうえで気になる点もいくつかあります。
まず重さ。バッテリー込みで約1.6kgと、携帯機としてはやや重めです。
リュックに入れて持ち歩くことはできますが、長距離の登山運用などには少し不向きかもしれません。
次に価格帯。
FTX 1 Fieldは15万円台後半、FTX 1 Optimaは20万円前後と、エントリー機に比べると高価です。
ただし、性能と拡張性を考えると「複数台を持たずに済む」というコストパフォーマンスの良さもあります。
また、2波同時受信や複数設定の管理は慣れが必要。
メニュー構成は分かりやすいものの、細かい設定を使いこなすには一定の経験が求められます。
さらに、発売初期は一部機能がファームウェア更新で追加される予定となっているため、購入時には最新バージョンを確認するのが安心です。
他機種との比較で見えるFTX 1の立ち位置
同クラスで比較されることが多いのが、ICOMのIC-705やYaesuのFT-991Aなど。
これらと比べると、FTX 1はより「フィールド運用と据え置きの両立」に重点を置いています。
IC-705よりもサイズは大きいものの、100W出力対応や堅牢性では上。
FT-991Aよりも操作系が進化しており、SDRによる受信特性も優秀。
まさに「中間的なポジションでありながら、どちらの良さも取り入れた万能機」といえます。
FTX 1はどんな人におすすめか
- ポータブルでも本格的な通信を楽しみたい
- 1台でHFからUHFまでをカバーしたい
- SDR受信の高感度と操作の快適さを重視する
- 将来的に100W運用にも挑戦したい
- コンテストや移動運用を効率的にこなしたい
こうしたユーザーにとって、FTX 1は非常に満足度の高い選択肢です。
一方で「軽量・安価・簡易運用」を求める人には少しオーバースペックかもしれません。
自分のスタイルに合うかどうか、購入前に見極めておきましょう。
購入時にチェックしたいポイント
- ファームウェアのバージョン
最新版に更新されているか確認。特にデジタル通信機能に関係します。 - 付属アクセサリ
バッテリーやケーブル、マイクの有無を販売店で確認しておくと安心。 - 設置環境
固定運用の場合はアンプユニット(Optima)を導入するかどうか検討。
フィールド中心ならField単体でも十分です。 - 保証とサポート
八重洲無線は国内サポートが充実しており、修理対応もスムーズ。正規販売店での購入が推奨です。
FTX 1の実力をレビューして感じた結論
FTX 1は、今後の無線ライフを長く支えてくれるポテンシャルを持ったトランシーバーです。
高感度SDR受信、直感的なタッチ操作、2波同時受信など、従来機では得られなかった快適さを実現しています。
確かに価格は高めですが、「1台であらゆる運用をこなせる」ことを考えれば、その価値は十分。
携帯性、拡張性、性能のバランスが取れた、まさに八重洲無線の本気を感じるモデルです。
購入前に迷っている人へひとこと。
FTX 1は「どこでも、どんな通信でも楽しみたい」という欲張りな無線家の期待に応えてくれる1台です。
この1台を手にすれば、フィールドでも自宅でも、あなたの声がより遠くまで届くはずです。
