キーボード選びって、結局「打鍵感」と「静音性」に尽きますよね。
長時間の作業でも心地よく、かつ周囲に気を遣わずにタイピングできるか。
今回は、PFUが誇る新世代モデル HHKB Studio を実機で徹底的に触り込み、その打鍵感と静音性を中心にレビューしていきます。
HHKB Studioとは?従来モデルとの違い
まず最初に、HHKB Studioの立ち位置を整理しておきましょう。
HHKB(Happy Hacking Keyboard)シリーズといえば、プログラマーやクリエイターから絶大な支持を受けてきたコンパクトキーボード。
しかしStudioでは、従来の「静電容量無接点方式」を離れ、新開発のメカニカルスイッチを採用しています。
それだけでなく、HHKBとしては初めて「ポインティングスティック」と「ジェスチャーパッド」を搭載。
つまり、キーボード1台でマウス操作まで完結できるという意欲作なんです。
サイズはHHKBらしい60%配列(308×132mm)で、重量は約930g。
Bluetooth 5.0による4台マルチペアリングにも対応しており、モバイル環境でもストレスなく切り替えが可能です。
打鍵感:静電容量無接点とは異なる「しっかり系」
HHKBといえば、あの“スコスコ”した打鍵感を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、HHKB Studioは明確に違います。
スイッチは新設計の静音リニアメカニカルスイッチ。押下圧は約45g。
打ち始めは軽く、ストローク中盤にかけてスッと沈み込む、滑らかで芯のある打鍵感です。
キーを押したときの感触は「軽やか」よりも「しっかり」寄り。
底打ち感がやや明確で、打ち終わりに確かな反発を感じられます。
これがタイピングリズムを取りやすく、個人的には非常に気持ちいい。
一方で、従来の静電容量無接点方式(HHKB Type-Sなど)に慣れた人には、「やや固く感じる」「浮遊感が少ない」との声も。
要するに、打鍵感はより“メカニカルキーボード的”な直感的フィードバックを楽しめる方向へと振られています。
静音性:音質まで計算された“上質な静けさ”
HHKB Studioのもう一つの注目ポイントは、その静音性の高さ。
メカニカルスイッチと聞くと「カチャカチャうるさいのでは?」と心配するかもしれませんが、心配無用です。
実際にタイプしてみると、驚くほど静か。
金属的な高音は抑えられ、コトコトとした低めの落ち着いた打鍵音が響きます。
底打ち音が丸く、リニアスイッチ特有の“パチパチ感”がない。
防振構造やダンパーによって、キーの上下運動のノイズがうまく吸収されています。
静音タイプの赤軸や茶軸よりも静かに感じるレベルで、オフィスでも自宅でも気兼ねなく使えます。
個人的には、静電容量無接点のHHKB Type-Sより「音は低く、やや重厚」という印象。
耳障りなノイズが少なく、タイピング音そのものが“落ち着いたBGM”のように心地よいです。
実際の使用感:慣れれば手放せない完成度
HHKB Studioを数日使い込んで感じたのは、慣れれば圧倒的に快適ということ。
ただし、最初は少し戸惑う部分もあります。
60%配列特有のキー配置やFnキー操作は、慣れないうちは戸惑いがち。
特に矢印キーが独立していないため、最初は「使いづらい」と感じる人もいるでしょう。
しかし、慣れてしまえば話は別。
指の移動量が減り、手首の負担が明らかに軽くなります。
キーの反応も素早く、まるで脳とキーボードが直結したような操作感です。
また、ポインティングスティック(中央の小さなスティック)とジェスチャーパッドの組み合わせが予想以上に便利。
マウスに手を伸ばす時間が減り、エディタやブラウザ操作がスムーズになります。
カーソル移動やスクロール操作までキーボードで完結する体験は、慣れると病みつきです。
HHKB Studioの静音スイッチは誰向けか?
静音性と打鍵感の両立を狙ったHHKB Studioですが、どんな人に向いているかを整理します。
- 長時間タイピングをする人
指に負担が少なく、疲れにくい設計。反発感と軽さのバランスが絶妙。 - 静かな環境で作業する人
音のトーンが低く、周囲への配慮が必要なオフィスやカフェにも最適。 - メカニカルのフィードバックを好む人
押した感触を明確に感じたいタイプには最高の相棒。 - ミニマルなデスク環境を作りたい人
マウスを省略し、キーボードだけで操作できるスマートさ。
逆に「静電容量無接点の独特なフワッとした感触が好き」な人には、少し方向性が違うかもしれません。
Studioはあくまで“しっかり打てる、でも静か”というメカニカルの良さを追求したモデルです。
接続性と機能面も抜かりなし
HHKB Studioは、単なるキーボードではありません。
Bluetooth 5.0によるマルチペアリング、USB-C接続、有線/無線の両対応など、使い勝手が幅広いです。
4台までデバイス登録できるため、
「ノートPC・デスクトップ・タブレット・スマホ」を簡単に切り替えて使えます。
切り替え操作もスムーズで、ラグはほとんど感じません。
また、DIPスイッチや専用ソフトでキーの割り当てを自由に変更可能。
自分好みの配列を細かくカスタマイズできるのも、HHKBシリーズならではです。
一点注意したいのは、重量。
約930gとずっしりしているので、持ち運び用というよりは据え置きでの使用向きです。
他シリーズとの比較:HHKB Type-Sとの違い
同じHHKBでも、静電容量無接点方式のHHKB Type-Sシリーズとは打鍵感が大きく異なります。
- Type-S:軽くて静か。押下感は“空気を押すような柔らかさ”。
- Studio:リニアで直線的。押した分だけ確実に沈む感覚。
どちらが優れているというより、「柔らかいタッチ」か「しっかりした打鍵」かの好みの差です。
静音性に関してはほぼ互角で、音の“質”が異なるだけ。
Type-Sは軽やかで無音寄り、Studioは重心が低い“トコトコ音”という印象です。
結果として、「より明確な打鍵感を求めつつ静音も妥協したくない人」にはHHKB Studioが最適です。
気になるポイント・弱点も正直に
どんな製品にも弱点はあります。
HHKB Studioの場合、以下の点には注意が必要です。
- 価格が高め
実売4万円前後。品質を考えれば妥当ですが、気軽には手が出しにくい。 - Bluetooth接続の安定性
一部レビューでは、再接続時の遅延や認識不良が報告されています。
有線接続なら安定するため、固定環境ではUSB-Cを推奨。 - 独特な配列への慣れ
EscやCtrlの位置、Fnキーの組み合わせなど、慣れが必要。
ただし慣れた後の快適さは群を抜いています。
このあたりを理解した上で導入すれば、大きな満足を得られるはずです。
HHKB Studioの魅力を総括すると
HHKB Studioは、単に“静かなキーボード”ではありません。
「確かな打鍵感」「上質な静音性」「合理的な操作性」を兼ね備えた、新しいHHKBの形です。
従来の静電容量無接点方式とは明確に違う方向へ進化しつつも、
タイピングに集中できる“余白”の設計思想はそのまま。
そしてポインティングスティックやジェスチャー操作といった新機能で、
キーボードだけで作業が完結するという未来を提示しています。
長時間の入力作業を快適に、静かに、正確にこなしたい。
そんな人にとって、HHKB Studioはまさに理想的な選択肢といえるでしょう。
HHKB Studioの打鍵感や静音性を実機で徹底検証レビュー:まとめ
最後にもう一度、このレビューの要点を振り返ります。
- 打鍵感は“軽やかでしっかり”。静電容量無接点とは違う魅力。
- 打鍵音は低く、静かで、耳に優しい。
- コンパクト配列とポインティングデバイスで操作がスマート。
- 高級感ある仕上げと高い静音性で、集中できる作業環境を実現。
価格はやや高めですが、それを補って余りある完成度。
「一生モノのキーボード」を探しているなら、HHKB Studioは間違いなくその候補に入るはずです。
静かな部屋で、心地よい打鍵音を響かせながら仕事をする――
そんな理想のデスク環境を、HHKB Studioが現実にしてくれます。
