みなさん、こんにちは。北海道の生活に欠かせない交通手段、「道南バス」の運賃が2025年4月から値上げされることをご存知ですか?普段から通勤や通学、買い物で利用されている方には気になるニュースですよね。この値上げ、実は単なる物価上昇の影響だけではありません。背景には、私たちの「足」を支える公共交通が直面する、深くて複雑な課題が横たわっているんです。今日は、道南バスの運賃改定の中身を詳しく見ながら、その背景にある本質的な問題と、私たちの生活にどのような影響があるのか、一緒に考えていきたいと思います。
具体的な運賃改定の中身を確認しよう
まずは、実際にどのように運賃が変わるのか、具体的に見ていきましょう。今回の改定は、2024年11月に道南バスから申請され、2025年2月に北海道運輸局が認可したものです。
路線バスの均一区間の値上げ
例えば、胆振・日高管内で運行されている路線バスの一部均一区間では、これまで290円だった運賃が320円に上がります。30円の値上げは、毎日利用する方にとっては、月単位、年単位で考えると無視できない出費の増加になりますね。
定期券の価格改定も実施
通勤や通学でほぼ毎日利用する方に影響が大きいのが、定期券の値上げです。1ヶ月通勤定期券は、13,050円から14,400円へ、1,350円の値上げとなります。室蘭市中心部の一部区間では、利用状況によっては最大で2,700円も値上げされるケースがあり、通勤者の家計への影響が懸念されます。
運賃関連サービスの一部終了
値上げと合わせて、利用者にとって残念なお知らせもあります。一部のバスカードや、高齢者の方が便利に使っていた乗り放題券の販売が終了するのです。これにより、現金で支払う場合の負担増に加え、支払いそのものの利便性も少し下がってしまうことになります。
都市間高速バスに「変動運賃制」が登場
一方で、路線バスとは別に、新たな試みも始まっています。2025年10月から、新千歳空港や札幌と室蘭・登別を結ぶ3路線の都市間高速バスで、「変動運賃制」 が導入されました。これは年末年始や海外からの旅行者が増える時期(例えば中華圏の旧正月・春節など)に、最大で900円運賃が上乗せされる仕組みです。逆に空いている時期は通常運賃なので、旅行の計画を柔軟に立てられる方には、新しい選択肢となるかもしれません。
運賃値上げの背景にある「運転手不足」という深刻な課題
「なぜ今、値上げなのか?」その直接の理由は、ニュースなどでもよく耳にする、燃料費や人件費など全体的な物価の上昇です。しかし、今回の値上げを深く理解するためには、そのさらに奥にある、バス事業そのものを揺るがす「運転手不足」 という根本的な問題に目を向ける必要があります。
この問題は道南バスだけの話ではありません。実は、同じく札幌~室蘭間を走る「高速むろらん号」と「高速しゃこたん号」を運行する北海道中央バスは、2025年11月末での運行廃止を決めました。その理由はまさに「乗務員不足で、現在のバス路線や便数を維持することが困難」であること。値上げで対応できる段階を超え、「運行そのものが成り立たない」 という、より深刻な事態に陥っている事業者も出ているのです。
なぜこんなに運転手が不足してしまったのでしょうか?背景には、社会全体の労働人口の減少と、従業員の高齢化があります。あるバス会社の例では、従業員の平均年齢が50代半ばに達していると言います。定年退職する方がいても、なかなか新しい若い人材が入ってこない。この状態では、今ある路線を現状通り走らせ続けること自体が、どんどん難しくなっていきます。
こうした状況の中で、少しでも収入を増やし、今いる貴重な運転手さんの待遇を改善し、新しい人材を呼び込むための努力を続けるためには、運賃の見直しは、事業者にとっては避けて通れない現実的な選択肢の一つなのです。私たち利用者にとっては負担増ですが、この値上げが、路線を廃止せずに今後も走らせ続けるための「命綱」の一部となっている側面もあることを理解する必要がありそうです。
私たちの生活への影響は?地域社会はどうなる?
では、この運賃値上げは、実際に私たちの生活にどんな影響を与えるのでしょうか?
家計への直接的な影響
まず真っ先に感じるのは、やはり家計への影響です。特に、車を持たずにバスを生活の足として頼っている学生や高齢者、毎日通勤で利用する方にとって、月々の交通費の増加は生活設計を見直さなければならないほど大きな出来事です。定期券の値上げ幅が大きい区間では、それだけ毎月の固定費が増えることになります。また、これまで割引券などを活用してやりくりしていた方にとっては、その販売終了が追い打ちをかける形になります。
「交通空白地域」の発生リスク
さらに、もっと長期的で深刻な影響として考えられるのは、路線の維持が難しくなり、廃止や減便が進むことです。もし、あなたの家の近くを走る唯一のバス路線がなくなってしまったら?買い物にも、病院に行くにも、友人に会いに行くにも、不便きわまりない状況に陥ってしまいます。このように公共交通から取り残されたエリアは 「交通空白地域」 と呼ばれ、高齢者の方が「買い物難民」や「通院難民」になってしまうなどの社会問題を引き起こします。地域のお店や施設を利用する人が減れば、地域経済そのものも衰退していく、そんな負の連鎖が起こりかねないのです。
持続可能な「地域の足」を未来に残すために
道南バスは過去にも大きな経営危機を経験し、その度に事業の形を変えながら乗り越えてきた歴史があります。今回の都市間バスにおける「変動運賃制」の導入も、変化する需要に合わせて収益を確保しようとする、新たな挑戦の一つと言えるでしょう。
しかし、運転手不足という根本問題の解決なくして、持続可能な未来は描けません。今回の運賃値上げで得られた収入の一部が、運転手の賃金引き上げや労働環境の改善に確実に回され、この仕事の魅力を高めていくことが不可欠です。同時に、これだけでは解決が難しい部分については、自治体による支援や補助、住民参加型のコミュニティバス、予約制の乗合タクシー(デマンド交通)など、地域が一体となった多様な交通手段の創出を考えていく時代に来ているのかもしれません。
私たち利用者にできることは何でしょうか?まずは、この値上げの背景にある現実を知り、単なる「嫌な値上げ」として片づけないこと。そして、可能な範囲でこれからもバスを利用し続け、地域の「足」を支える一人になること。それが、結局は自分自身や地域の未来の便利さ、豊かさを守ることにつながると私は信じています。
道南バス値上げの先にある、北海道の公共交通の未来
今回の道南バスが値上げへ向かう決断は、単なる企業の経営判断というよりは、少子高齢化や人口減少という日本全体、特に北海道が直面する大きな社会課題が、私たちの日々の生活に直結する形で現れてきた「象徴」なのかもしれません。
運賃が上がれば、利用者は減るかもしれません。しかし、利用者が減れば、さらに経営が苦しくなり、サービスが維持できなくなる。このジレンマをどう乗り越えるか。答えは簡単には見つかりませんが、事業者だけに任せるのではなく、私たち利用者や地域住民、自治体が一緒になって、「どうしたらこの地域に必要な交通を将来に残せるか」を対話し、試行錯誤していくことが、これからはますます重要になっていくでしょう。
今回の調査を通じて感じたのは、一本のバス路線が、単に人を運ぶだけでなく、地域の命綱であり、コミュニティの絆そのものでもあるということ。道南バスが値上げへと踏み切ったこの変化を、私たちの地域の未来を考えるきっかけにしたいですね。
