「サントリー樹氷」と聞くと、あの白樺模様のボトルや、すっきりとした飲み口を思い出す方も多いのではないでしょうか。かつて家庭の定番焼酎として長く親しまれてきた「サントリー樹氷」ですが、近年「終売になったのでは？」という声が相次いでいます。この記事では、その真相と背景を丁寧に紐解いていきます。
サントリー樹氷とは？日本の焼酎文化を支えた名ブランド
サントリー樹氷は、1978年に登場したサントリー初の甲類焼酎ブランドです。当時、同社はまだ焼酎の製造免許を持っておらず、発売当初は「スピリッツ（マイルドウォッカ）」として販売されていました。
白樺のデザインが印象的なスクエアボトルに、透明でクセのない味わい。若い世代を中心に“おしゃれな焼酎”として人気を集め、家庭でも居酒屋でも広く浸透していきました。
1980年代に入ると、いわゆる“酎ハイブーム”が到来。焼酎をレモンや炭酸で割って楽しむスタイルが定番化し、サントリー樹氷の軽やかさがその流れにぴったりとはまりました。
1993年には製造免許を取得し、正式に「焼酎甲類」としてリニューアル。サントリーの技術を生かしたクリアな味わいは、長年にわたり家庭用焼酎の定番として愛されることになります。
サントリー樹氷が人気を集めた理由
サントリー樹氷がここまで長く愛された理由は、何といってもその「飲みやすさ」と「清涼感」にあります。クセがなくすっきりとした味わいは、どんな割り方にも合う万能さが魅力でした。
炭酸やウーロン茶、緑茶割りはもちろん、果汁を入れたカクテルにも相性抜群。焼酎が苦手な人でも「サントリー樹氷なら飲める」と評判になるほどでした。
また、広告戦略の巧みさも見逃せません。白樺をイメージしたボトルと「清らかな自然」を感じさせるネーミング、さらに俳優・女優を起用したテレビCMが話題を呼び、“都会的で洗練された焼酎”というイメージを確立しました。
家庭では冷蔵庫に常備され、飲食店ではボトルキープの定番に。1990年代には「大樹氷」「SUPER樹氷」などの派生ラインも登場し、シリーズとしての厚みを増していきました。
しかし近年、「見かけなくなった」との声が…
ここ数年、ネット上では「サントリー樹氷を見なくなった」「どこにも売っていない」といった投稿が相次いでいます。
実際、スーパーや酒量販店の店頭から姿を消しており、オンラインでも在庫限りの販売や、終売表記のあるページが散見されます。
サントリー公式サイトの「製造終了商品一覧」にも、一時期「サントリー樹氷」の名前が掲載されていたとする情報があり、実質的に製造・出荷を終えている可能性が高いと考えられます。
ただし、公式に「終売日」や「販売終了のお知らせ」が発表されたわけではありません。いわば“静かに姿を消した”形で、長年の販売を終えたとみられます。
終売の背景にある3つの要因
1. 焼酎市場の変化と嗜好の多様化
1980〜90年代にかけては甲類焼酎の黄金期でしたが、2000年代以降は「本格焼酎」ブームへと流れが変わります。芋や麦など素材の個性を前面に出す焼酎が人気を集め、サントリー樹氷のような“無味・無臭系”の甲類焼酎は徐々に存在感を失っていきました。
さらに近年はRTD（缶チューハイ）市場が急拡大。手軽に飲める商品が主流となり、“自分で割る焼酎”の需要が減少していったのです。
2. コロナ禍による製造・流通の見直し
2020年以降、アルコール業界全体がコロナ禍の影響を受けました。外食需要の減少に加え、アルコール原料を医療用に転用する動きも広がり、製造ラインの再編が進みました。
その中で、販売量が減少していたサントリー樹氷のようなロングセラー商品は、コスト削減やブランド整理の対象になった可能性があります。
実際に、一部の業界関係者は「医療用アルコール生産のために製造を中止した」と証言しています。
3. サントリーのブランド戦略シフト
サントリーはここ数年、RTDやプレミアムウイスキーなど、付加価値の高いカテゴリーに注力しています。
「こだわり酒場のレモンサワー」や「タコハイ」など、手軽で若年層にも人気のある商品が次々と登場。こうした新しい流れの中で、古くからあるサントリー樹氷シリーズを維持する意義が薄れたと見ることもできます。
つまり、企業としての戦略的リソースを「成長領域」へ振り分けた結果、サントリー樹氷は静かにその役割を終えたと考えられます。
消費者の反応と「復活を望む声」
SNSや掲示板では、「青春の味だった」「また飲みたい」という声が今も根強く見られます。
特に昭和・平成初期に青春時代を過ごした世代にとって、サントリー樹氷は“懐かしの定番”であり、焼酎の入り口でもありました。
一方で、若い世代の中には「名前は知っているけど飲んだことがない」という人も多く、世代交代の象徴とも言えるかもしれません。
また、リユース市場では未開封ボトルがコレクターズアイテムとして出回っており、「終売になってから値段が上がった」との声もあります。
長年愛されたブランドが“幻の焼酎”として再び注目を集めているのは、なんとも感慨深い話です。
もし今、サントリー樹氷を飲みたいなら
完全な終売が公式に発表されていないとはいえ、店頭や大手通販サイトで新品を入手するのは非常に難しくなっています。
一部の業務用倉庫や酒販店で在庫が残っているケースもありますが、基本的には流通在庫限りと考えてよいでしょう。
どうしても手に入れたい場合は、信頼できる通販サイトやリユース市場を慎重にチェックするのがおすすめです。
また、「サントリー樹氷のようなすっきり系焼酎を探している」という人には、現在でも販売されている甲類焼酎ブランド（例：宝焼酎や鏡月など）を試してみるのも一つの方法です。
それぞれ風味やアルコール感が異なりますが、“割って楽しむ”という点では共通しており、あの懐かしい味わいを思い出させてくれるかもしれません。
サントリー樹氷の歴史が教えてくれること
サントリー樹氷の終売は、単なる一商品の終わりではなく、日本の焼酎文化の転換点を象徴しているとも言えます。
1970〜80年代の「焼酎＝安くて軽い酒」というイメージを刷新し、都会的でスタイリッシュな存在へと押し上げた功績は大きいでしょう。
その後の焼酎ブーム、RTD文化の発展など、今のアルコール市場の土台を築いたのも、こうしたブランドの存在があったからこそです。
サントリー樹氷終売の真相と、これからの焼酎文化
サントリー樹氷は、公式な発表こそないものの、現在はほぼ終売状態にあります。
半世紀近くにわたり多くの人に愛されたブランドが静かに姿を消したのは、時代の流れと消費者の嗜好変化の結果とも言えるでしょう。
しかし、その“透明で清らかな味わい”は、いまも記憶の中に生き続けています。
これからも、焼酎は時代に合わせて姿を変えながら、私たちの暮らしの中に寄り添っていくはずです。
もしどこかで「サントリー樹氷」のボトルを見かけたら、ぜひ手に取って、その懐かしい透明感をもう一度味わってみてください。
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