長年愛されてきた「ピース」たばこが、ついに終売になる――そんなニュースが駆け巡り、愛煙家の間に衝撃が走りました。戦後の日本を象徴する銘柄として、そして“香りのピース”として知られるブランドだけに、その存在の終わりを惜しむ声が絶えません。ここでは、ピースたばこの歴史や終売の背景、そして後継ブランドとして注目される銘柄まで、じっくり解説していきます。
戦後の象徴として誕生した「ピース」
ピースが誕生したのは、1946年1月。終戦から間もない混乱期、日本たばこ産業の前身によって発売されました。
ブランド名「Peace（平和）」には、戦後の再生と新しい時代への希望が込められており、公募によって名づけられたと言われています。戦火をくぐり抜けた人々にとって、“平和のたばこ”という名前は特別な響きを持っていました。
発売当時は、まだたばこが自由販売されたばかりの時代。入手困難だった高級葉を使い、香り豊かでまろやかな吸いごたえを実現したピースは、瞬く間に人気を集めます。青を基調にしたパッケージも印象的で、1952年には世界的デザイナー、レイモンド・ローウィが手がけた「ピース紺」のデザインが登場。これがブランドイメージを決定づけ、今も多くの愛煙家に“美しいたばこ”として記憶されています。
「香りのピース」シリーズと多彩な展開
ピースの魅力といえば、なんといってもその香り。上質なバージニア葉を中心にブレンドされ、深いコクと甘みのある香りが特徴です。時代が進むにつれ、さまざまな派生シリーズが登場しました。
定番の「ピース（20本入）」をはじめ、「ピース・ライト」「ピース・スーパーライト」「ピース・リトルシガー」など、軽い吸いごたえのバリエーションも増えていきます。さらに、2010年代以降には「ピース・アロマ・インフィニティ」シリーズが誕生。「香りこそがピースのすべて」というキャッチコピーとともに、ピース・アロマ・インフィニティ、ピース・アロマ・ロイヤル・100’s・ボックス、ピース・アロマ・クラウン・100’s・ボックスといった高級志向の銘柄が展開されました。
これらは特製フィルターや厳選バージニア葉によって、芳醇で華やかな香りを実現。紙巻きたばこの中でも特に“香りを楽しむ”ブランドとして、ファンの支持を集めていました。
終売のニュースとその背景
そんなピースシリーズの中でも、近年「終売」という言葉が現実のものになりました。2024年、日本たばこ産業（JT）は「ピース・アロマ・インフィニティ」シリーズの一部を在庫売り尽くしをもって販売終了すると発表。
対象となったのは「ピース・アロマ・インフィニティ」「ピース・アロマ・ロイヤル・100’s・ボックス」「ピース・アロマ・クラウン・100’s・ボックス」の3銘柄です。
販売終了の理由として、JTは「販売数量の減少」と「品質維持の難しさ」を挙げています。紙巻たばこの市場はここ10年で大きく縮小しており、加熱式や電子たばこの普及が急速に進みました。特に若年層の喫煙離れが顕著で、高価格帯・香り重視の銘柄は市場の変化に対応しづらくなっていたのです。
また、法規制や健康意識の高まり、たばこ税の引き上げなども影響しました。かつて“贅沢なたばこ”とされたピース・アロマ・インフィニティも、時代の流れの中で販売維持が難しくなったのです。
「終売ロス」に揺れる愛煙家たち
この発表を受けて、SNSや愛煙家コミュニティでは「ついにこの時が来たか」「アロマロイヤルの香りが忘れられない」「ピースがなくなるのは寂しい」といった声が多数投稿されました。
ピースは単なる嗜好品ではなく、戦後から令和にかけての“文化”として親しまれてきたブランド。多くの人が「父や祖父の世代から続くたばこ」としての思い出を語り、その終売を時代の節目として受け止めています。
一部の店舗では、終売発表後に在庫が急速に減少。地方の販売店では「残り数カートンで完売」という告知も出るなど、ファンによる“買い納め”の動きも広がりました。ネットオークションでは、限定パッケージや旧モデルのピースが高値で取引される例も見られ、コレクターズアイテム化の兆しもあります。
ピースブランドは完全に消えるのか？
今回の終売はあくまで「ピース・アロマ・インフィニティ」シリーズの一部であり、「ピース」ブランド全体がなくなるわけではありません。
現在も「ピース（20本入）」「ピース・ライト・ボックス」「ピース・スーパーライト・ボックス」などの主力製品は継続して販売されています。
とはいえ、過去を振り返ると、ピースシリーズの一部銘柄が段階的に整理されてきた経緯もあります。消費者の嗜好が「軽い吸いごたえ」や「クリーンな香り」へ移行するなか、重厚で香り高いクラシックなピースは、徐々に時代とのギャップを広げつつあります。
そのため、「いつかはブランド全体が姿を消すのでは」という不安を抱くファンも少なくありません。
後継ブランドとしての候補たち
終売を受けて、次に何を選ぶかという話題も盛り上がっています。
同じピース系統の中では、「ピース・ライト・ボックス」や「ピース・スーパーライト・ボックス」が後継候補として挙げられます。これらは軽めのブレンドながらも、ピース特有の香りと甘みを残しており、“現代版ピース”として評価されています。
また、「ピース・リトルシガー」も注目株です。葉巻に近い構造を持ち、香りをしっかり楽しめる仕様になっており、アロマシリーズ愛好者からの人気が高いです。
ただし、どの銘柄も完全に同じ香味を再現できるわけではなく、「似ているけど別物」「あの深みがない」といった意見も少なくありません。長年アロマロイヤルを愛用してきた層にとっては、代わりのない存在だったといえるでしょう。
変わりゆく喫煙文化と「ピース」の象徴性
ピースが歩んできた歴史は、日本の喫煙文化そのものと重なります。戦後の再建期に人々の心を癒やし、高度経済成長とともに「贅沢なたばこ」としての地位を築き、そして令和の時代にその姿を変えようとしている。
その存在は、単なる嗜好品ではなく「時代の記憶」を宿した文化的アイコンでした。
近年では健康志向や禁煙化が進み、公共の場での喫煙規制も強化されています。たばこ業界も加熱式や電子製品へとシフトを加速させており、紙巻きたばこを取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。
そうした中で、ピースのように“香り”や“味わい”を重視する銘柄が減っていくのは、ひとつの時代の終わりを象徴しているのかもしれません。
ピース終売を前に、今できること
もしあなたがピース・アロマ・インフィニティシリーズの愛用者なら、今のうちに在庫を確保しておくのも一つの方法です。販売は在庫限りで終了するため、店頭から消えるのは時間の問題。見つけたら最後の一本として手に取る人も多いようです。
また、似た味わいを探すなら、同系統のブレンドを扱う銘柄やリトルシガー、加熱式専用のバージニア葉ブレンド製品を試してみるのも良いでしょう。
一方で、終売をきっかけに“禁煙”や“嗜好の見直し”を考える愛煙家も増えています。たばこは嗜好品でありながら、健康リスクや社会的ルールも伴う存在。ブランドの歴史や文化を尊重しつつ、時代に合わせた選択をすることも大切です。
ピースたばこがついに終売？その意味を考える
「ピースたばこがついに終売」というニュースは、単に一つの銘柄が消えるという話ではありません。
それは、戦後から続く日本の喫煙文化の変化を象徴し、そして“香りを楽しむたばこ”という価値観の終焉を示しています。ピースが残したのは、煙の向こうにある時代の記憶と、たばこに込められた「平和」への願いです。
これからの時代、同じ香りや味わいを求めるのは難しいかもしれません。それでも、ピースというブランドが築いてきた美学と哲学は、愛煙家の心に生き続けるでしょう。
終売を惜しむ声の中には、懐かしさとともに「ありがとう」という感謝が確かにあります。
ピースが灯した小さな煙の輪は、今もどこかで静かに揺れ続けているのです。
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