「じょっぱりが終売したって本当?」
そんな声が、青森の地酒ファンの間でささやかれています。
津軽の人々に長く愛されてきた辛口の日本酒「じょっぱり」。
その名は、青森弁で“意地っ張り”を意味し、まさに地元の気質を体現した銘柄です。
しかし近年、「販売終了」や「見かけなくなった」という情報が相次ぎ、ファンの間に動揺が広がりました。
この記事では、じょっぱりがなぜ“終売”となったのか、その背景と現在の状況、そして今後どこで入手できるのかまでを徹底的に整理していきます。
じょっぱりとは?青森が誇る“意地っ張り”な辛口酒
じょっぱりは、青森県弘前市にある六花酒造(ろっかしゅぞう)が手がける代表銘柄。
「じょっぱり」という言葉は津軽弁で“頑固者”や“意地っ張り”を意味します。
名前の通り、他の酒とは一線を画す辛口スタイルを貫いた地酒です。
昭和40年代、全国的には甘口の濃厚な日本酒が主流でした。
そんな中で「どこの酒にも似せず、津軽らしい頑固な酒を造りたい」との思いから生まれたのが、じょっぱり。
すっきりとした辛口ながら、口に含むと旨味がじんわりと広がるのが特徴で、「淡麗辛口の中に温かみがある」と評されてきました。
青森の居酒屋で“じょっぱりください”と注文するのは、地元の人にとって当たり前。
津軽の冬を支えてきた定番の地酒として、長年親しまれてきた存在です。
じょっぱりが終売となった背景
そんな青森の顔ともいえる銘柄が、なぜ「終売」状態になったのか。
背景には、単なる生産終了ではなく、酒造業界全体の変化と蔵元の大きな決断がありました。
日本酒市場全体の縮小
1970年代以降、日本酒の国内消費量は減少の一途をたどっています。
ビールや焼酎、ワイン、チューハイなどの選択肢が増え、若い世代の“日本酒離れ”も進行。
六花酒造でも、生産量の減少とともに販売戦略の見直しを迫られました。
ピーク時には2万石以上を醸していたとされる六花酒造も、時代の流れには逆らえず、
「量」から「質」へと舵を切る必要が出てきたのです。
蔵の移転と新体制への転換
六花酒造は長年、弘前市の広大な敷地に蔵を構えていましたが、設備の老朽化が深刻化。
土地の再開発計画により蔵を移転することになり、新蔵の建設を決断しました。
新しい蔵では、従来の大規模生産から少量仕込み・高品質生産へと体制を一新。
仕込みタンクを小型化し、洗米・発酵・搾りのすべてを丁寧に管理できる環境を整備しました。
この移転を機に、蔵としての方向性も大きく見直されたのです。
「じょっぱり」ブランドの封印
そして最も大きな決断が、「じょっぱり」のブランドを一度“封印”するという判断でした。
新蔵でのスタートを前に、「これからは純米・吟醸に特化した新しいブランドで挑戦する」と方針転換。
蔵の象徴でもあったじょっぱりは、2022年末をもって旧体制での醸造を終了し、実質的に終売状態となりました。
「長年親しまれたブランドを手放すのは苦渋の決断だったが、未来の酒造りのためのリセットだった」
蔵元はそう語っています。
終売の真相は「再生」の一歩だった
「終売」と聞くと、どうしても“もう二度と飲めない”という印象を持ってしまいます。
しかし、じょっぱりの場合、それは「終わり」ではなく「再生」への第一歩でした。
六花酒造は、新ブランド「杜來(とらい)」を立ち上げます。
名前には、“新しい時代に挑む”という意味が込められており、小仕込みでの高品質な純米酒造りを目指しています。
蔵の公式コメントでも、「じょっぱりの魂は、杜來へと受け継がれている」と語られており、
味わいや理念そのものが消えたわけではありません。
つまり、じょっぱりの終売とは“ブランドの一時的な休止”であり、
酒造りの姿勢を未来へ繋ぐための選択だったのです。
ファンの声と復刻の動き
じょっぱりの終売が報じられた際、多くのファンから「惜しい」「また飲みたい」という声が寄せられました。
青森出身者にとって、じょっぱりは故郷の象徴。
帰省のたびに買って帰るという人も多く、その喪失感は大きなものでした。
こうした声に応えるかのように、六花酒造は2024年に「JOPPARI 特別純米酒」を復刻。
新しい設備で仕込みながらも、旧蔵で使われていた酵母や麹菌を受け継ぎ、
味わいの方向性も“あのじょっぱりらしさ”を大切に再現しています。
精米歩合60%、淡麗辛口の飲み口ながら、旨味の芯がしっかりと感じられる仕上がり。
まさに「復刻版」と呼ぶにふさわしい一本です。
限定出荷ではありますが、地元青森の酒販店を中心に販売が始まり、
「新しいのに懐かしい」「これぞじょっぱり」と好評を得ています。
今どこで買える?じょっぱりの入手方法
では、現在じょっぱりを手に入れたい場合、どこで探すのがいいのでしょうか。
ここでは、現実的な入手ルートを紹介します。
1. 復刻版「JOPPARI 特別純米酒」
まずチェックすべきは、六花酒造の新蔵で造られている復刻版「じょっぱり特別純米酒」。
2024年以降、青森県内の特約店や一部オンラインショップで販売が始まっています。
720mlボトルで手に入りやすく、価格も1,000円台後半〜2,000円台と良心的です。
購入する際は、蔵元公式サイトや信頼できる地酒専門店を確認しましょう。
数量限定での出荷のため、在庫があるうちの購入がおすすめです。
2. 旧ラベル版(終売前の在庫)
「昔のじょっぱりを味わいたい」という方は、旧ラベル在庫を扱う酒販店を探してみましょう。
ただし、製造から年数が経過しているものもあるため、品質や保管状態を確認することが重要です。
古酒としての味わいを楽しむのも一つの方法ですが、価格がプレミア化しているケースもあります。
3. 青森の酒蔵・地元店舗を訪ねる
旅行や出張の機会に青森を訪れるなら、現地の酒屋や蔵元直売所を訪ねてみるのもおすすめです。
地元限定商品や蔵出しの限定酒が入手できることもあります。
弘前駅周辺や青森空港の土産店などでは、復刻版を取り扱う店舗も出てきています。
終売から見えた、地酒の新しいあり方
じょっぱりの終売は、多くのファンにとってショックな出来事でした。
しかしその裏には、老舗蔵が“これからの酒造り”に向けて踏み出した強い意志があります。
大量生産をやめ、小仕込み・純米造りにこだわる。
ブランドを一度手放してでも品質に集中する。
それは、単なる経営判断ではなく、「地酒としてどう生きるか」という哲学に近いものです。
そして今、じょっぱりは再び津軽の風土とともに歩み始めました。
その姿勢こそ、名前の通り“じょっぱり(意地っ張り)”なのかもしれません。
じょっぱり日本酒が終売?これからの楽しみ方
結論から言えば、じょっぱりは“完全な終売”ではなく、“新しい形での復活”を遂げています。
旧蔵時代の味を懐かしむ人も、新しい純米版の味を楽しむ人も、それぞれのじょっぱりを語り継いでいく。
そんなブランドの再生が、今まさに進行中です。
もしあなたが「もう一度あの辛口を飲みたい」と思うなら、
復刻版「JOPPARI 特別純米酒」や青森の地酒店をぜひチェックしてみてください。
時代が変わっても、津軽の魂を込めた酒づくりは続いています。
じょっぱりの名は、これからも青森の地で息づいていくでしょう。

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