「えっ、黒缶が終売って本当?」
そんな声がSNSで広がり始めたのは、ここ数年のことです。スーパーやドラッグストアの棚から少しずつ姿を消し、ネット通販でも「在庫限り」や「販売終了」の文字を見かけるようになりました。長年、愛猫の定番ごはんとして親しまれてきたアイシアの「黒缶」。その一部シリーズが販売終了となった背景と、黒缶が支持され続けた理由、さらに代わりに選ばれているキャットフードまで、詳しく見ていきましょう。
黒缶とは?40年以上続くロングセラーブランド
「黒缶」は、アイシア株式会社が展開する猫用総合栄養食シリーズです。かつおやまぐろを中心とした赤身肉を主原料にし、猫の健康を支えるタウリン、ビタミンE、DHAなどをバランスよく配合。香り豊かで食欲をそそる味わいが特徴で、多くの猫たちに“食いつきの良さ”で支持されてきました。
シリーズは缶詰タイプやパウチタイプなど多彩に展開され、子猫用からシニア用まで幅広いラインナップがありました。とくに160gの缶を3つセットにした「黒缶3P」シリーズは、スーパーでもよく見かける定番中の定番。コスパの良さと品質の安定感で、日常使いにぴったりなフードとして長く愛されてきた存在です。
黒缶の一部商品が終売に
2023年、アイシアの公式サイトで「黒缶シリーズの一部商品が製造および販売を終了する」との告知がありました。対象となったのは、黒缶ミニや黒缶プレミアム、黒缶パウチの一部商品。具体的には以下のようなアイテムがリストアップされています。
公式発表では理由についての詳細な説明はなく、単に「販売終了のお知らせ」として掲載されました。そのため「シリーズ全体が終売になるのでは?」という不安の声が広がりましたが、実際には黒缶ブランドそのものが消滅したわけではありません。現在も主要な缶詰シリーズや一部パウチ製品は継続して販売されています。
つまり、“黒缶が完全に終売した”というよりは、“一部ラインナップが整理された”というのが正確なところです。
なぜ一部が販売終了になったのか?
メーカーから公式な理由の発表はありませんが、いくつかの要因が考えられます。
まず、猫用フード市場全体のトレンド変化です。近年はグレインフリー(穀物不使用)や高たんぱく、腎臓ケアなど、より機能性・安全性を重視したフードが主流になっています。長年同じレシピで販売してきた黒缶の一部製品は、こうしたトレンドに合わせるためにリニューアルや統廃合の対象になった可能性があります。
次に、原材料や物流コストの上昇も大きな要因でしょう。まぐろやかつおなどの魚介原料は価格変動が激しく、採算の取れないアイテムを整理する動きが業界全体で進んでいます。特に容量の小さいミニ缶やトッピング系のラインは、コスト面で継続が難しくなったと推測されます。
さらに、シリーズの多様化による在庫・流通負担の問題もあります。黒缶は数十種類もの味・容量展開がありましたが、売れ行きが安定しない一部を減らすことで、製造効率を高めたのかもしれません。
飼い主の反応:「なくなるなんて信じられない」
黒缶の終売ニュースが広まると、SNSや掲示板では飼い主たちの悲鳴が相次ぎました。
「うちの子、黒缶しか食べないのに!」
「急に店頭から消えてて焦った」
「在庫を見つけたからまとめ買いした」
こうした声が多数寄せられ、特にシニア猫や偏食気味の猫を飼っている人からは“代わりが見つからない”という悩みも多く聞かれます。長年与えてきたフードが急に手に入らなくなるのは、猫にとっても飼い主にとっても大きなストレスです。
一方で、「黒缶ブランド自体がなくなるわけじゃないと知って安心した」という声もありました。今も継続販売されている製品を探して購入している人も多く、人気シリーズとしての根強い支持がうかがえます。
黒缶が長年愛された理由
なぜ、ここまで黒缶が長く愛され続けてきたのでしょうか。その理由を整理すると、大きく4つあります。
1. 魚のうま味と香りにこだわった嗜好性の高さ
まぐろやかつおの赤身肉をふんだんに使い、猫の本能を刺激する香りと味を実現。食いつきの良さは口コミでも定評があり、偏食気味の猫でもよく食べるという声が多くあります。
2. 安心の国産総合栄養食
アイシアは国内生産にこだわり、黒缶シリーズは総合栄養食として設計されています。保存料・着色料・香料不使用の商品も多く、飼い主が安心して与えられる品質が魅力でした。
3. 手に取りやすい価格と入手性
スーパーやホームセンターでも購入できる手軽さと、リーズナブルな価格設定。日常的に続けやすいフードとして支持を集めてきました。
4. 豊富なラインナップ
トッピングの違いや年齢別の仕様など、愛猫の好みや体調に合わせて選べる多様性。これが“黒缶で育った猫”を数多く生んだ理由のひとつです。
終売後に選ばれている代替商品
黒缶の一部が手に入らなくなった今、飼い主たちはどんな代替商品を選んでいるのでしょうか。ポイントは「魚メイン・総合栄養食・食いつきの良さ」の3つ。黒缶に慣れた猫にも比較的スムーズに切り替えやすいタイプが好まれています。
- 銀のスプーン 三ツ星グルメシリーズ(ユニ・チャーム)
まぐろやかつおを使用したウェットタイプが豊富で、黒缶と似た香りと食感が特徴。食べ慣れた味を求める猫に合いやすい。 - カルカン パウチ(マースジャパン)
全国どこでも手に入りやすく、まぐろ・かつお系の味が多い。価格帯も近く、黒缶ユーザーの乗り換え先として人気。 - モンプチ クリスピーキッス/モンプチ パウチ(ネスレピュリナ)
少し高級感を求める飼い主に人気。香り高く、偏食気味の猫にも向いています。 - アイシア MiawMiaw ジュレシリーズ
実は同じアイシア製品。まぐろベースでやさしい味わいが特徴。黒缶の食感を好む猫には、ジュレタイプやパウチタイプのMiawMiawも候補になります。
猫によって味や食感の好みが大きく異なるため、まずは少量から試して様子を見るのが安心です。特にシニア猫の場合は、急な切り替えで食欲が落ちることもあるので、旧フードと新フードを混ぜながら徐々に慣らすのがおすすめです。
黒缶終売が映す、キャットフード市場の変化
黒缶の一部終売は、単なる商品整理ではなく、市場の変化を象徴する出来事とも言えます。
ここ数年、猫の健康寿命が延びたことで、フードにも「機能性」「安全性」「品質志向」が強く求められるようになりました。腎臓ケア・毛玉ケア・アレルギー対策など、細かなニーズに応える製品が増えています。
また、消費者の意識変化も大きな要因です。SNSや口コミで「原材料」や「成分分析」を重視する飼い主が増え、企業はより透明性の高い商品を求められています。黒缶も長年親しまれたブランドとしての使命を終え、新しい時代に合わせたリニューアルや再構築のフェーズに入ったのかもしれません。
まとめ:黒缶は完全には終わっていない
「アイシア黒缶 終売」という言葉だけが独り歩きしていますが、実際には黒缶ブランドがすべて消えたわけではありません。
販売終了となったのは一部ラインナップであり、今も主力商品は継続中です。
ただ、長年親しんできた味や形状が変わってしまうことに寂しさを感じる飼い主も多いでしょう。そんなときは、同じ魚ベースのウェットフードを探してみるのがおすすめです。黒缶が長年愛された理由──手頃な価格、信頼の品質、猫が喜ぶ味──を満たす製品は、今もきっと見つかります。
愛猫が安心して食べられる“次の定番”を見つけることが、黒缶の歴史を引き継ぐ最良の方法かもしれません。

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