アバフェルディ16年が終売?そのニュースの真相
「アバフェルディ16年が終売したらしい」──ウイスキー好きのあいだでそんな話題が広がりつつあります。アバフェルディといえば、ハイランド地方の名門蒸溜所が生み出す「ハチミツ香るウイスキー」として世界的に知られる存在。中でも16年は、シェリー樽由来の芳醇な甘みと奥行きある味わいで、12年よりもリッチ、21年よりもバランスが取れた逸品として人気を集めてきました。
しかし近年、日本国内でこの「アバフェルディ16年」を見かける機会が明らかに減っています。酒販店でも「終売」「入荷未定」の札が並び、SNSでは「もう買えないの?」「在庫が消えた」といった投稿が目立ち始めました。いったい、何が起きているのでしょうか。
アバフェルディ蒸溜所と16年の位置づけ
アバフェルディ蒸溜所は1896年、スコットランド・ハイランド地方で創業。ブレンデッドウイスキー「デュワーズ15年(Dewar’s)」のキー・モルトとしても知られ、伝統的なハニー香と柔らかな果実味を持つモルト原酒を生産しています。
シングルモルトとしてのアバフェルディは、これまでに12年・16年・21年などの熟成年数ラインアップを展開。その中でも16年は、オロロソ・シェリー樽でフィニッシュされたリッチなテイストが特徴で、12年の軽やかさと21年の重厚さの中間に位置する「ちょうど良い贅沢」として愛されてきました。
そのバランスの良さから、初心者にも上級者にも人気が高く、「山崎12年の代わりに楽しめるハイランドモルト」として注目されたこともあります。
アバフェルディ16年「終売」の報道と流通の現状
2024年後半から2025年にかけて、日本国内の酒販業界では「アバフェルディ12年・16年・21年が順次終売になる」との情報が流れました。いくつかの専門メディアでは、輸入元経由で「日本向け販売枠が終了した」とする文面が出回ったと報じています。
実際、ウイスキー専門店の公式サイトでも16年ボトルが「販売終了」「在庫限り」と表記されており、Amazonや楽天でも出品数が急減。かつて1万円前後で手に入ったボトルが、今では2倍近い価格で並行輸入として販売されている例も見られます。
ただし重要なのは、「生産そのものが終わった」というわけではない点。アバフェルディ蒸溜所の公式サイトには、依然として16年がラインナップとして掲載されています。つまり、世界的な生産は継続しており、日本だけが“正規輸入ルートから外れた”という状況と考えられます。
なぜアバフェルディ16年は国内で終売になったのか?
ここからは、終売に至った背景を整理していきます。いくつかの要因が重なっていると見られます。
1. グローバル販売戦略の見直し
アバフェルディを保有するのはバカルディ社。デュワーズやロイヤルブラックラなど、同社が展開する他ブランドとの整合性を取るため、日本市場向けの出荷枠を見直した可能性が高いと報じられています。特定国向けの販売を縮小することで、他地域への供給を安定させる狙いがあるとみられます。
2. 原酒不足と熟成年数の再構築
世界的なウイスキーブームにより、長期熟成原酒の確保はどの蒸溜所にとっても課題です。特に12年超の熟成年数ボトルは、原酒の需給バランスが崩れやすく、優先的にブレンデッド向けへ回される傾向があります。アバフェルディ16年も例外ではなく、デュワーズ15年向けの原酒確保を優先した結果、単一ボトルとしての出荷量を絞った可能性があります。
3. 日本市場での価格帯・競合整理
日本市場では近年、シングルモルトの価格が急騰しています。中価格帯の16年クラスは、12年やNAS(ノンエイジ)との価格差が開きすぎたことで、戦略的にラインナップを整理したのではないかという見方もあります。
4. 為替・物流コストの高騰
円安や輸送コストの上昇も無視できません。特に輸入酒は為替の影響を受けやすく、利益率を維持するために「販売停止」や「再構築」という形を取るケースが増えています。
アバフェルディ16年の味わいと人気の理由
改めて、このボトルがなぜ人気を集めたのかを振り返ってみましょう。
アバフェルディ16年の魅力は、ハイランドらしい優雅さとシェリー樽由来の濃厚な甘みの融合にあります。香りはハチミツ、トフィー、ドライフルーツ、ベリー、そしてほのかなナッツ。味わいは柔らかく、バニラやキャラメルの甘さの中にスパイスとチョコレートの苦味が交錯します。後味は心地よく長く続き、ストレートでもロックでも上品に楽しめるのが特徴です。
その香味バランスは「グレンファークラス15年」「グレンモーレンジィ・ラサンタ」などと比較されることもあり、“シェリー樽系ハニーウイスキー”の代表格として多くの愛飲家に支持されてきました。
終売後の入手方法と現行流通の実情
2025年現在、アバフェルディ16年は日本国内の正規流通ではほぼ姿を消しています。しかし、並行輸入ルートや海外通販ではまだ購入可能な場合があります。
一方で、価格は高騰傾向にあり、在庫が尽きれば再入荷の見込みは薄いとされます。中古市場やオークションでも少量ながら流通しており、未開封品はコレクターズアイテム化しています。
購入を検討する場合は、正規輸入品と並行輸入品の違い、保管状態、偽造品リスクに注意しましょう。特に高額取引が増えている今、信頼できる販売店での購入が安心です。
アバフェルディ16年に似たおすすめ代替ウイスキー
終売により手に入れにくくなった今、似た味わいを楽しめる代替銘柄をいくつか紹介します。
1. グレンモーレンジィ・ラサンタ
シェリー樽熟成の代表格。甘くスパイシーで、チョコやレーズンの風味が心地よい。アバフェルディ16年の「シェリー×ハチミツ」系統が好きな人にはぴったりです。
2. グレンファークラス15年
スペイサイドの名門によるシェリー樽の重厚モルト。16年よりややドライですが、深いコクと余韻が共通しています。
3. アベラワー16年ダブルカスクマチュアード
アメリカンオークとシェリー樽の二重熟成で、フルーティーかつスパイシー。より豊潤な甘さを求める人におすすめ。
4. デュワーズ15年
アバフェルディ16年の原酒を多く使ったブレンデッド。より軽やかに、しかしハニー香を感じたいならこの選択肢も有力です。
今後の再販や復活の可能性は?
現時点では、アバフェルディ16年が再び正規ルートで日本に戻るという公式発表はありません。ただし、蒸溜所での生産は継続しているため、限定ボトルや特別仕様として再登場する可能性はゼロではありません。
実際、近年のウイスキー業界では「一度終売→限定復活」という流れも珍しくなく、アバフェルディのような人気ブランドなら将来的な再入荷の可能性も十分考えられます。今後は蒸溜所や輸入元の動きをこまめにチェックしておくとよいでしょう。
アバフェルディ16年終売まとめ:今のうちに味わっておきたい名品
アバフェルディ16年の終売は、多くのウイスキーファンにとって寂しいニュースです。
ただし、終売とはいえ「日本での正規販売終了」にとどまるため、世界的に完全に消滅したわけではありません。並行輸入や中古市場ではまだ入手のチャンスがあり、今のうちに確保しておくのも一つの手です。
ハチミツのような甘美な香りと、シェリー樽由来の深い余韻──。このボトルを味わえる時間は、もう長くないかもしれません。
そして、アバフェルディ16年を愛した人には、グレンモーレンジィ・ラサンタやグレンファークラス15年といった近い系統のモルトが、新たな出会いを運んでくれるでしょう。
ウイスキーは一期一会。
だからこそ、今、手に取って味わう一杯が、きっと特別な時間になるはずです。

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