「アラン マクリームーアが終売したらしい」という話題、ウイスキー好きなら一度は耳にしたことがあるかもしれません。
ピーティーな香りをまとったアラン蒸溜所の異色作として人気を集めていたマクリームーア。なぜ終売になってしまったのか、そして今後どんな代替品を選べばいいのか――。この記事ではその背景や今後の動きを、ウイスキー愛好家の目線でわかりやすく整理していきます。
アラン マクリームーアとは?
アラン マクリームーア(Machrie Moor)は、スコットランドのアラン島にあるロックランザ蒸溜所(Lochranza Distillery)が生み出したシングルモルト。
通常のアランウイスキーはノンピート(ピートを焚かない)麦芽で造られるのに対し、マクリームーアはあえてピート麦芽を使うことで、スモーキーな香りをまとった特別なシリーズとして登場しました。
ピート値はおよそ20ppmと控えめ。アイラ系のような重厚なスモークではなく、フルーティーで明るいアランらしさの中に、ほどよくスモークが漂う仕上がりが特徴です。
「ピートの入門編」としても人気で、ピーティーウイスキーを試してみたい人にとっての“最初の一歩”にもなっていました。
終売といわれる背景
では、なぜマクリームーアが「終売」と言われているのでしょうか。いくつかの理由が考えられます。
1. ピート製造の拠点が移った
2019年、アラン島南部に新たな蒸溜所「ラッグ蒸溜所」が完成しました。
この新しい蒸溜所は、ピート麦芽を使ったウイスキーの専門ラインとして設計されており、以降アラン島でのピート系原酒の製造はすべてラッグへ移行しています。
つまり、従来ロックランザ蒸溜所で造られていたマクリームーアは「役割を終えた」ともいえる状況。
今後、ピーティーなアラン系ウイスキーはラッグブランドで展開されていく方針が示されています。
2. ブランド整理と再構築
アラン蒸溜所は、1995年創業の比較的新しい蒸溜所ですが、近年ブランドラインの整理を進めています。
ノンピート系は「アラン」として統一し、ピート系は「ラッグ」へ分離。これにより、それぞれの個性をより明確に打ち出す狙いがあります。
マクリームーアはこの過渡期に生まれた“橋渡し的な存在”ともいえるでしょう。ブランドの再編に伴い、自然な流れで終売扱いとなったと考えられます。
3. 原酒・生産体制の都合
ピート原酒は、仕込みから熟成まで通常よりも管理コストがかかるタイプ。
ロックランザ蒸溜所ではもともとノンピートをメインとしていたため、ピート原酒の生産量は限られていました。
在庫の枯渇や熟成計画の見直しも、終売の一因になった可能性があります。
4. 国内流通の縮小
日本の輸入代理店では「終売」「在庫限り」と表記されているケースが増えています。
国内ではすでに正規流通が止まっており、店頭やオンラインで見かけるのは在庫分のみ。
このことからも、実質的にマクリームーアは「終売」と見なしてよい状況といえます。
味わいの魅力と評価
マクリームーアが愛された理由は、なんといってもその“バランス”にあります。
香りは柑橘やリンゴのようなフルーティーさに、軽いスモーキーさが寄り添う印象。
口に含むとハチミツやバニラの甘み、ナツメグやジンジャーのスパイスが広がり、最後にやわらかなピートスモークが余韻を残します。
ピートの強さよりも、明るくクリーンな印象が前に出るため、重すぎないピートウイスキーとして多くのファンを獲得しました。
レビューでは「ピートが少し荒い」との声もありますが、それも含めて個性的。
アラン10年の優等生的な完成度に対し、マクリームーアは“野性味を残した弟分”のような魅力を持っています。
終売後も注目したいポイント
「もう買えないの?」と思う人も多いですが、実はまだチャンスはあります。
- 一部のオンラインショップやバーでは在庫が残っている
- 流通在庫は減少傾向だが、プレミア価格ではなく定価近辺で見つかる場合もある
- 終売品としてコレクション価値が上昇している
ただし、終売=完全な生産終了とは限りません。
マクリームーアは、今後ラッグ蒸溜所のピートラインへと形を変えて再登場する可能性もあると見られています。
代替品としておすすめのウイスキー
マクリームーアを気に入っていた人、また「軽めのピートが好き」という人に向けて、代替候補をいくつか紹介します。
1. アラン マクリームーア10年
マクリームーアシリーズの後継としてリリースされたのが「アラン マクリームーア10年」。
バーボン樽熟成・20ppmのピート仕様で、果実香とスモークのバランスをさらに洗練させた印象です。
現行では最も正統な“マクリームーア後継”といえるでしょう。
2. ラッグ蒸溜所のピーテッドシリーズ
アラン蒸溜所の姉妹蒸溜所として生まれたラッグでは、より本格的なピートタイプを展開しています。
「Lagg Inaugural Release」「Lagg Corriecravie Edition」などは、スモーキーながらもトロピカルフルーツのような明るさを感じさせる仕上がり。
マクリームーアの系譜を受け継ぎつつ、よりヘヴィーピートへ踏み込んだ路線です。
3. 軽やかスモーク系の他ブランド
- キルホーマン マキヤーベイ:アイラ産ながら柔らかく甘いスモーク。
- ブナハーブン トッハ・アダ:アイラ島でもライトピート派に人気。
- タリスカー10年:スパイシーで海風のようなピート香が特徴。
いずれも“ピートは感じたいけれど重すぎない”という層におすすめです。
購入時の注意と楽しみ方
終売品を探す際には、以下のポイントも押さえておきましょう。
- 信頼できるショップで購入する
模倣ボトルや状態不良のリスクを避けるため、正規代理店や評価の高い店舗を選ぶこと。 - 価格変動に注意する
希少化に伴い価格が上昇傾向。過度なプレミア価格には注意を。 - 保存環境を整える
コレクション目的なら直射日光・高温を避けて保管。ウイスキーは開栓後もゆっくり変化を楽しめます。 - 飲み比べを楽しむ
アラン10年、マクリームーア10年、ラッグのシリーズを並べて味わうと、それぞれの進化や個性の違いがはっきりわかります。
アラン マクリームーア終売が意味するもの
マクリームーアの終売は、単なる“販売終了”ではなく、アラン蒸溜所のブランド戦略の転換点ともいえる出来事でした。
ピート系はラッグへ、ノンピート系はアランへ――。
それぞれの個性をより明確に打ち出すための整理だったのです。
そして、マクリームーアが残した「果実香+穏やかなピート」という個性は、今でも多くのファンの記憶に残っています。
もしまだどこかで出会えるなら、ぜひ一度その味を確かめてみてください。
終売をきっかけに、アランの“次のピート”であるラッグの世界へ足を踏み入れてみるのもきっと楽しいはずです。
アラン マクリームーア終売の理由と今後の楽しみ方
マクリームーアが終売になった背景には、ラッグ蒸溜所への移行やブランド再編といった戦略的な理由がありました。
しかし、それは「終わり」ではなく「進化の始まり」。
アランらしい華やかさと、スモークの余韻を愛するピーテッドファンにとって、マクリームーアは今も特別な存在です。
軽やかなピートの魅力をもう一度味わいたいなら、マクリームーア10年やラッグの新シリーズを試してみましょう。
終売のニュースをきっかけに、アラン島のウイスキーをもう一段深く楽しむチャンスが、今まさに訪れています。

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