ウイスキー好きの間で長年語り継がれてきた幻のバーボン、「エヴァンウィリアムス23年」。その名を耳にしたことがある方なら、23年という驚異的な熟成年数と、青いワックスで封印された印象的なボトルを思い浮かべるかもしれません。ところが近年、この銘柄が“終売状態”にあるという噂が広まり、ファンの間に衝撃が走っています。この記事では、その背景や理由、現在の入手方法、そして再販の可能性まで、徹底的に掘り下げていきます。
エヴァンウィリアムス23年とは?長期熟成が生んだ伝説のボトル
「エヴァンウィリアムス(Evan Williams)」は、アメリカ・ケンタッキー州の名門蒸留所、ヘブンヒル(Heaven Hill)が手がける代表的なバーボンブランド。ブラックラベルや12年などの定番商品で知られていますが、その中でも“23年熟成”はまさに別格の存在です。
このボトルは、熟成期間23年というバーボン界でも稀有な長期熟成を経ており、アルコール度数107プルーフ(約53.5%)という高めの度数でボトリングされています。長い年月を経て深い琥珀色を帯びた液体は、重厚なオークの香りとキャラメルやヴァニラの甘み、そして樽由来のスパイスが複雑に絡み合う芳醇な味わいを生み出します。
特徴的なのが、ブルーのワックスシールで封印されたボトルデザイン。視覚的にも特別感があり、コレクターズアイテムとしての人気も高い一本です。
なぜエヴァンウィリアムス23年は終売したのか?
まず明確にしておきたいのは、メーカーであるヘブンヒル社から「公式に終売」と発表されたわけではありません。ただし、流通状況や蒸留所の動向を総合的に見ると、事実上の終売、あるいは“極めて入手困難”な状態になっているのは間違いありません。
その理由は主に3つあります。
1. 長期熟成ゆえの原酒枯渇
23年という長期熟成は、バーボンの世界でも異例。アメリカンホワイトオークの新樽で熟成させるため、20年以上も寝かせると「エンジェルズシェア」と呼ばれる蒸発によって原酒が大きく減少します。さらに熟成が進みすぎると、樽香が強くなりすぎて商品化できないことも。つまり、23年ものを継続的に造り続けるのは、物理的にも非常に難しいのです。
2. 1996年のヘブンヒル火災の影響
ヘブンヒル蒸留所では1996年に大規模な火災が発生し、多くの熟成樽と倉庫を失いました。この事故により、1990年代前半に仕込まれた原酒が失われ、長期熟成ラインの供給に長く影響を与えたとされています。その影響は現在でも残っており、23年クラスの在庫を確保するのが難しい状況が続いています。
3. 流通経路の限定化と輸出優先
エヴァンウィリアムス23年は、アメリカ国内では一般販売されておらず、蒸留所併設の「Evan Williams Bourbon Experience」などのギフトショップでのみ入手可能だった希少ボトルです。さらに、多くの在庫が日本を含む海外市場に輸出されていたこともあり、近年では現地でも姿を見かけることがほとんどなくなっています。
ファンが「終売」に衝撃を受けた理由
バーボン愛好家が多いアメリカでも、23年熟成というスペックは非常に珍しい存在。一般的なバーボンは4〜10年程度が主流で、20年以上寝かせるとコストもリスクも跳ね上がります。そのため、「エヴァンウィリアムス23年」は“バーボンの限界に挑んだ逸品”として特別な地位を築いてきました。
そんな伝説的なボトルが市場から姿を消すとなれば、衝撃を受けるのも当然です。SNSやウイスキーコミュニティでは「もう手に入らないのか」「最後の1本を開けられない」といった声が多数上がっています。実際、販売停止の明確なアナウンスがないため、“いつの間にか終売していた”という印象を持つファンも少なくありません。
現在の流通と価格動向
では、今エヴァンウィリアムス23年を手に入れようとすると、どのような状況になっているのでしょうか。
日本国内では、一部のウイスキー専門店やオークションサイトで流通しているケースがありますが、価格はかつての定価を大きく上回っています。数年前までは10万円前後で見かけることもありましたが、現在は20万円以上、場合によっては30万円超というプレミア価格で取引されることも珍しくありません。
海外では、米国の一部オンラインショップにて「Evan Williams 23 Year 2025 Release」として販売されている例もありますが、価格は1,000ドルを超える水準に達しています。しかも在庫はごく僅かで、購入できる保証はありません。
このように、現時点では“定価で新品を入手する”ことはほぼ不可能。実質的に「終売」状態といえるでしょう。
再販の可能性はあるのか?
ウイスキーファンとして最も気になるのが、「再販はあるのか?」という点です。結論から言えば、現時点でエヴァンウィリアムス23年の定期的な再リリースは予定されていません。ヘブンヒル社の公式サイトやプレスリリースにも、新たな出荷情報は確認できない状況です。
ただし、完全に再販の可能性がゼロとは言い切れません。ヘブンヒルは長期熟成原酒の管理・再利用に積極的で、これまでも特別エディションや蒸留所限定品として過去の熟成原酒をリリースしてきました。したがって、将来的に“限定再販”や“記念ボトル”という形で23年熟成クラスの原酒が登場する可能性はあります。
とはいえ、それが「同じエヴァンウィリアムス23年」として再登場するとは限らず、異なるラベルやブランドで出るケースも考えられます。そのため、現行のボトルを手に入れることができるうちに確保しておく、という判断も一つの選択肢です。
エヴァンウィリアムス23年を入手する方法
もし今から探すなら、以下の3つのルートが現実的です。
1. 国内の専門店・中古市場をチェック
ウイスキー専門店、特にプレミアムボトルを扱う店舗では、稀に在庫が出ることがあります。また、中古ボトル専門店や高級リカーショップのオンライン販売でも入荷する場合があります。価格は高騰していますが、状態の良い個体を狙うなら信頼できる店舗を選ぶことが大切です。
2. オークションやフリマサイト
ヤフオクや楽天市場などでの個人取引でも見かけることがあります。ただし、偽物や保存状態の悪いボトルも混在しているため、購入時にはラベルやワックスの状態、液面の高さなどをしっかり確認しましょう。
3. 海外通販・現地購入
アメリカの蒸留所直営店「Evan Williams Bourbon Experience」では、極まれに在庫が復活することがあります。旅行などの機会があれば、立ち寄ってみるのもおすすめです。ただし購入制限や持ち帰りの関税手続きなど、事前の確認が必要です。
代替ボトルの選択肢
もしエヴァンウィリアムス23年を手に入れるのが難しい場合、同じヘブンヒル蒸留所が手がける「エヴァンウィリアムス12年」や「エライジャクレイグ23年」なども検討に値します。特にエライジャクレイグ23年は同じマッシュビルを使用しており、熟成年数も近いため、風味の方向性が似ていると評価されています。
また、近年では「ヘンリーマッケンナ10年」や「ヘブンヒル17年」など、同社が誇る長熟系ラインも注目を集めており、希少バーボンの世界を味わうには十分な選択肢となります。
ウイスキー愛好家が語る「23年の魅力」
飲んだ人の多くが共通して語るのは、エヴァンウィリアムス23年の“熟成の深み”と“ウッドの余韻”です。最初に立ち上がる香りはキャラメルやヴァニラ、シナモン、そしてわずかなチェリー。口に含むと、長年の樽熟成による重厚なウッドスパイスとタンニンが広がり、最後はレザーやトーストオークのようなドライな後味で締めくくられます。
まさに「長熟バーボンの完成形」とも呼ばれる味わいであり、一本開けるごとに“歴史を飲む”ような体験を味わえると言われています。
エヴァンウィリアムス23年の終売と今後への期待
エヴァンウィリアムス23年の終売は、バーボンファンにとって大きな節目とも言える出来事です。長期熟成という奇跡を体現したこのボトルは、もはや伝説的な存在となりつつあります。しかし、終売という事実が、同時に“価値の証明”でもあるのも確かです。
今後もし再販があるとすれば、それは限定的な特別リリースとして登場する可能性が高いでしょう。いずれにしても、エヴァンウィリアムス23年という名前が、バーボン史に刻まれた名品であることに変わりはありません。
最後に一言。もしどこかでこのボトルを見つけたなら、その瞬間こそが“買い時”です。23年という時を経たウイスキーが再び手に入る保証は、もうどこにもないのです。

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