ウイスキー愛好家の間で長年親しまれてきた「オーヘントッシャン スリーウッド」。
その芳醇で奥行きある味わいを支えるのは、三回蒸留と三種類の樽熟成という独自の製法です。
しかし近年、「スリーウッドが終売になったらしい」という噂が広がり、ファンの間で衝撃が走りました。
本記事では、終売の背景から味わいの魅力、そして代替となるおすすめウイスキーまでを詳しく解説します。
オーヘントッシャンスリーウッドとは？
スコットランド・ローランド地方にあるオーヘントッシャン蒸溜所は、スコッチウイスキーの中でも珍しい“三回蒸留”を採用していることで知られています。
通常のスコッチが二回蒸留であるのに対し、三回蒸留を行うことで、より軽やかでクリーンな酒質を生み出しているのが特徴です。
「スリーウッド（Three Wood）」はその名の通り、3種類の樽で熟成されるユニークな一本。
まずアメリカンバーボン樽で一次熟成、その後オロロソ・シェリー樽、最後にペドロ・ヒメネス（PX）シェリー樽で仕上げられます。
これにより、シェリー由来のドライフルーツやチョコレート、ナッツ、スパイスのような深みが加わり、ローランドらしい軽快さの中に甘やかでリッチな層が重なります。
香りはブラウンシュガーやプラム、オレンジピール、味わいはバタースコッチやシナモン、ナッツ。
余韻にはオークとカカオのようなビターさが残り、「デザートウイスキー」と称されることもあるほどです。
終売が噂された経緯と真相
オーヘントッシャン スリーウッドは、日本では2018年頃から「終売」という情報が出回り始めました。
一部の輸入元や酒販店では「2018年秋出荷分をもって終売」「2019年3月終売見込み」といった表記も見られ、事実上の販売終了状態に入ったとされています。
ただし、海外の公式サイトでは現在もラインナップに掲載されており、完全に生産終了したという明確なアナウンスはありません。
このため「日本国内での販売終了（輸入停止）」というのが実際の状況に近いようです。
では、なぜ終売（国内流通停止）に至ったのでしょうか？
主な背景には、次のような要因が考えられます。
オーヘントッシャンスリーウッド終売の背景
1. シェリー樽原酒の供給難
スリーウッドはオロロソ樽とPX樽を使用しており、シェリー由来の原酒確保が難しくなっています。
世界的なウイスキーブームにより、シェリー樽そのものの供給が逼迫。
樽価格の高騰や確保競争が起きており、コスト的にも採算が取りづらい状況です。
2. グローバルブランド再編による影響
オーヘントッシャンはビームサントリーグループの傘下にあります。
同グループでは、世界各国のブランドポートフォリオを見直す動きが進み、販売地域やSKUの整理が行われています。
その一環として、日本市場向けの輸入ラインからスリーウッドが外された可能性があります。
3. ローランドモルトの需要変化
ローランド系ウイスキーは一時期に比べて需要が限られ、特に重厚なシェリーフィニッシュ系よりも「ライト＆フルーティー」な銘柄が注目される傾向があります。
消費者ニーズの変化も、ラインナップ調整の一因となったと考えられます。
4. 為替・物流コストの上昇
近年の円安傾向や輸送コストの上昇も無視できません。
価格維持が困難になった結果、輸入業者が取扱いを見送るケースも増えており、実質的な終売状態につながっています。
今なお愛される理由
スリーウッドは単なる“シェリー系モルト”ではありません。
三回蒸留による透明感と、三種の樽が織りなす重層的な香味が両立した、唯一無二の存在です。
飲み口は柔らかく、口に含むとまずバーボン樽由来の甘みが広がり、続いてシェリー樽の熟した果実感、最後にPX樽の濃密な甘さとウッディな余韻が訪れます。
全体としては滑らかで飲みやすいながら、しっかりとした深みと満足感を感じさせます。
そのため、「初心者でも飲みやすいシェリー系ウイスキー」としても人気が高く、終売後も“復活を望む声”が絶えません。
また、オーヘントッシャンの中でも中核的な存在であり、ブランドの味わいバランスを象徴するボトルとして評価されています。
国内終売後の入手状況
現在、日本国内の正規流通ルートではほぼ在庫が尽きつつあります。
一部の酒販店やオンラインショップで並行輸入品を見かけることはありますが、価格は発売当初より大幅に上昇。
かつて7,000円前後で購入できたものが、現在では1万円を超えるケースも珍しくありません。
海外市場ではまだ販売されている地域もあり、個人輸入や免税店などでの入手が可能な場合もあります。
ただし、今後も安定供給が続く保証はなく、「見つけたら即購入」が基本スタンスとなりつつあります。
スリーウッドに似たおすすめ代替ウイスキー5選
スリーウッドが手に入らない今、似た味わいや雰囲気を持つウイスキーを探している方も多いでしょう。
ここでは、代替候補として人気のある5本を紹介します。
1. グレンファークラス 17年
シェリー樽熟成の王道。レーズンやナッツの香り、甘くリッチなボディがスリーウッドに通じます。
よりクラシックなスタイルを求める方におすすめ。
2. アベラワー アブーナ
カスクストレングスでありながら濃厚なシェリー香。
オロロソとPXのブレンド的な甘さを持ち、スリーウッドの濃密感に惹かれた人にはピッタリ。
3. グレンモーレンジィ ラサンタ
スペイン産シェリー樽でフィニッシュされたハイランドモルト。
フルーティーでバランスが良く、価格帯も手頃です。
4. バルヴェニー ダブルウッド 12年
バーボン樽とシェリー樽を使った2段熟成。
スリーウッドの“三重樽”ではないものの、構成の考え方が似ており、飲みやすく上品な甘さが魅力。
5. グレンドロナック 12年
シェリー樽の香味をストレートに感じたい方に。
濃厚なドライフルーツとチョコレート香が強く、スリーウッドの代わりとして人気が高い一本です。
スリーウッドの今後とファンの声
スリーウッドは一度終売となったものの、海外市場ではいまだ健在です。
そのため、将来的にラインナップが再構成され、日本市場に再登場する可能性もゼロではありません。
近年ではクラフト・ローランド蒸溜所の復活が相次いでおり、ローランドモルトへの関心も再び高まっています。
この流れの中で、オーヘントッシャンの象徴的ボトルであるスリーウッドが再評価される日が来るかもしれません。
SNS上では「スリーウッドが飲めなくなるのは寂しい」「あの甘い香りが忘れられない」といった投稿も多く、愛飲者の熱量は根強いものがあります。
中には「最後の1本を大切に取っておく」という声もあり、終売後もなお語り継がれる存在です。
オーヘントッシャンスリーウッド終売を前に、今できること
終売の事実は寂しいものですが、スリーウッドが残した価値は今も確かです。
まだ市場に残っているボトルを見つけたなら、それは一期一会の出会い。
開栓してその味わいを楽しむのも良し、コレクションとして取っておくのも良し。
シェリー樽熟成の豊潤な世界を感じるには、今が最後のチャンスかもしれません。
そして、スリーウッドの系譜を継ぐ他のウイスキーを味わいながら、その独自の魅力を思い返すことも楽しみのひとつです。
「三回蒸留 × 三種類の樽熟成」という哲学を持つこのウイスキーは、ローランドモルトの多様性を象徴する存在として、これからも語り継がれていくでしょう。
ウイスキーの世界では「終売＝終わり」ではなく、「新しい物語の始まり」であることも多いものです。
オーヘントッシャンスリーウッドもまた、その芳醇な余韻とともに、次なる時代へ静かに受け継がれていくのかもしれません。
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