ウイスキー好きの間で長年親しまれてきた「カティーサーク12年」。その終売の知らせに驚いた人も多いのではないでしょうか。明るく軽やかな味わいで知られるこの銘柄が、なぜ市場から姿を消してしまったのか。今回は、カティーサーク12年の歴史から終売に至る背景、そして代わりに楽しめるウイスキーまで、じっくりと掘り下げていきます。
カティーサーク12年とは？ブランドの歴史と特徴
「カティーサーク（Cutty Sark）」は、1923年にスコットランドで誕生したブレンデッド・スコッチ・ウイスキーの老舗ブランドです。ブランド名は19世紀に活躍した快速帆船「カティーサーク号」から取られたもので、スピード感と軽快さを象徴しています。
当時のブレンデッドウイスキーは重厚でスモーキーなタイプが主流でしたが、カティーサークは“軽くて明るい味わい”をコンセプトに開発されました。その結果、スコッチの中でも飲みやすく、カクテルやハイボールにも合うスタイルとして人気を確立しました。
中でも「カティーサーク12年」は、同ブランドの上位モデルに位置づけられる一本。12年熟成の原酒を使用し、滑らかな口当たりと奥行きある味わいを両立させています。ドライフルーツやトロピカルフルーツ、バニラ、スパイス、そして微かな海塩のニュアンス。まさに、日常の一杯から特別なシーンまで楽しめる完成度の高いブレンデッドウイスキーでした。
カティーサーク12年の終売が告げられた理由
残念ながら、カティーサーク12年は日本市場ではすでに「終売扱い」となっています。多くの酒販店が「在庫限り」「終売」「輸入終了」と明記しており、現在は古酒・オールドボトルとして扱われています。
1. ブランド戦略の転換
カティーサークを所有するエドリントン・グループは、マッカランやハイランドパークといったプレミアムモルトブランドを抱える企業です。2017年前後、同社はブランド戦略の見直しを進めており、ブレンデッドカテゴリーの整理も実施。その一環として、「カティーサーク12年デラックス」や「カティーサーク18年デラックス」、「カティーサークストーム」などが終売となりました。
2. 熟成年数原酒の確保難
12年熟成のブレンデッドを維持するには、一定量の熟成原酒を安定的に確保する必要があります。しかし世界的なウイスキーブームの影響で、長期熟成原酒の在庫が逼迫。特に2010年代後半からは、スコッチ全体で「ノンエイジ化（熟成年数表記を外す）」が進んでおり、カティーサークも例外ではありませんでした。
3. 日本市場における輸入・流通の終了
日本では並行輸入や一部代理店を通じてカティーサーク12年が販売されていましたが、輸入元の在庫が終了した時点で販売ルートも途絶。これにより、国内市場では“実質的な終売”状態となりました。現在は海外通販やオークションでのみ見かけるレベルになっています。
終売がもたらした影響とボトルの希少性
終売後のカティーサーク12年は、市場での希少価値が急上昇しました。古酒市場やオークションでは、状態の良いボトルが定価の2〜3倍で取引されることもあります。
コレクターズアイテムとしての人気
「旧ラベル」「オールドボトル」としてコレクターからの需要が高く、特に箱付き・未開封品は希少。かつての柔らかいブレンド感や、今では再現が難しい熟成年原酒の風味が評価されています。
味わいの違いも魅力
現行のノンエイジモデルよりも、12年熟成版はまろやかさと深みが際立ちます。樽由来のバニラ香やドライフルーツ感、オークの余韻が絶妙なバランスを保ち、「これぞブレンデッドの完成形」と評されるほど。終売によってこの味が再現できなくなったことは、愛飲者にとって痛恨の一言です。
味わいの特徴とテイスティングノート
改めて、カティーサーク12年の味わいを振り返ってみましょう。
- 香り（ノーズ）：オレンジピール、塩キャラメル、セヴィルマーマレード。ほのかに草原のような爽やかさ。
- 味わい（パレット）：バニラ、ドライフルーツ、トロピカルフルーツ。舌の上で感じる軽いスパイスとナッツのコク。
- 余韻（フィニッシュ）：オークの甘みとドライシーウィード（乾いた海藻）のような塩気が残り、すっきりとした後味。
この軽やかでフルーティなバランスこそが、カティーサークの真骨頂。飲みやすさの中に奥行きを感じさせる逸品でした。
カティーサーク12年の代替候補ウイスキー
「もう手に入らないなら、似た味わいのものを探したい」という人のために、代替・類似銘柄を紹介します。
1. カティーサーク オリジナル
最も近い存在はやはり現行の「カティーサーク オリジナル」。ノンエイジ仕様ながら、ブランド特有の軽快なフルーティさをそのまま継承しています。ハイボールにも相性抜群。
2. ブレンデッド系12年クラスの他ブランド
スペイサイドモルトを主体にしたブレンデッド12年は、カティーサーク12年と共通するフルーティでまろやかな傾向があります。バニラや蜂蜜のニュアンスを持つブレンデッドスコッチなら、代替として満足度は高いでしょう。
3. 軽やかモルト系
「軽やかで香り高いウイスキーが好き」という方には、スペイサイドやローランドのシングルモルトもおすすめです。リンゴや洋梨のような香りが楽しめる銘柄を選べば、カティーサーク12年のエッセンスを感じられるはずです。
今後、再販の可能性はあるのか？
現時点で、カティーサーク12年の再販・再リリースに関する公式発表はありません。ただし、ウイスキー業界では限定復刻やボトラーズリリースが行われることも多く、完全に再登場の可能性がゼロとは言い切れません。
近年では「カティーサーク プロヒビション」や「カティーサークストーム」など、限定的な新ラインも展開されています。ブランドとしては存続しているため、今後のリニューアルや特別版に期待する声も多く聞かれます。
カティーサーク12年終売のまとめと今後の楽しみ方
カティーサーク12年の終売は、多くのファンにとって惜しまれる出来事でした。
1923年から続く歴史の中で、12年熟成モデルはブランドの完成形とも言える存在。その味わいを知る人にとっては、まさに“黄金比のブレンド”でした。
終売となった今、手に入るのは限られたオールドボトルのみ。しかし、カティーサークの系譜は今も続いており、軽快なブレンドスタイルは他のラインナップでも健在です。もし見かけたら、ぜひ現行モデルと飲み比べてみてください。違いの中に、ブランドの変遷と時代の味わいが感じられるはずです。
そして何より、「カティーサーク12年」という名を冠したボトルは、ウイスキー史の一部として語り継がれる存在。終売という事実が、むしろその価値をより一層際立たせているのかもしれません。
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