ウイスキーファンの間で長年親しまれてきた「キリン富士山麓」。
その名の通り、富士山の麓にあるキリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所で生まれた国産ウイスキーです。
そんな富士山麓シリーズが一部「終売」となったというニュースは、多くの愛飲者に衝撃を与えました。
なぜ終売に至ったのか？そして今でも手に入る銘柄や後継モデルはあるのか？
この記事では、その背景や今後の展開について、できるだけわかりやすく整理して紹介します。
富士山麓とは？キリンが誇る国産ウイスキーの代表格
「富士山麓 樽熟50°」は、キリンビールが手がける富士御殿場蒸溜所で造られたブレンデッドウイスキーのシリーズ。
2005年に「富士山麓 樽熟50°」が登場して以来、50°シリーズや富士山麓 シングルモルト18年など、多様なラインナップが展開されました。
特徴は、富士山の伏流水を仕込み水に使ったまろやかな口当たりと、熟成樽由来の豊かな香り。
さらに、冷却ろ過を行わない“ノンチルフィルタード製法”を採用したモデルもあり、原酒の持つ力強さをダイレクトに感じられるのが魅力でした。
中価格帯ながら味わいは本格的で、「国産プレミアムウイスキー」として国内外で高く評価されていたのです。
終売の理由は？「富士山麓 樽熟原酒50°」が消えた背景
多くのファンが惜しんだのが、「富士山麓 樽熟原酒50°」の終売。
キリンが公式に「出荷を一時停止する」と発表したのは2019年頃のことでした。
その理由は大きく分けて3つあります。
1. 原酒の供給不足
最大の要因は“原酒不足”です。
ウイスキーは長期熟成を要するため、急な需要増に対応できません。
富士山麓 樽熟原酒50°シリーズは発売当初から人気が高く、想定以上の売れ行きとなった結果、原酒の在庫が逼迫。
一定の品質を維持したまま継続生産するのが難しくなったといわれています。
2. ジャパニーズウイスキーブームによる需要急増
2010年代後半、世界的にジャパニーズウイスキーがブームとなりました。
山崎・白州・響などの人気銘柄が品薄となる中、富士山麓 樽熟原酒50°も注目を集め、販売量が急増。
結果として、他社と同じく原酒のやりくりが困難になり、ライン整理を余儀なくされたのです。
3. ブランド再構築のための戦略的終売
富士山麓ブランドは、多数のラインを展開していた時期がありました。
しかし、ブランドとしての方向性を明確にするため、キリンは2018年以降「富士山麓 Signature Blend」に一本化。
富士山麓 樽熟原酒50°や富士山麓 シングルモルト18年は終売とし、新たなブランド構築を図ったのです。
終売した主な銘柄と販売終了時期
ここで、終売となった代表的なボトルを振り返っておきましょう。
- 富士山麓 樽熟50°：2005年発売、現在は終売
- 富士山麓 樽熟原酒50°：人気の高い50°シリーズ、2019年出荷分をもって終了
- 富士山麓 シングルモルト18年：長期熟成原酒を使用、2015年頃に販売終了
これらはいずれも高い評価を得ており、現在は中古市場やオークションなどでプレミア価格がついています。
特に「富士山麓 シングルモルト18年」は、状態の良いものだと数万円〜7万円台という取引も見られます。
現在も買える「富士山麓」シリーズはある？
結論から言えば、「富士山麓」ブランドは完全に消えたわけではありません。
現在も「富士山麓 Signature Blend」が販売されています。
富士山麓 Signature Blend の特徴
2018年8月に発売されたこのモデルは、ブレンダーの技術を結集したキリンの集大成的ボトル。
従来の50°シリーズよりもアルコール度数をやや抑え、香りと味わいのバランスを重視しています。
スモーキーさよりも穏やかで、フルーティーかつ柔らかな余韻が特徴。
「日常的に楽しめる国産ウイスキー」として評価を受けており、Amazonなどでも比較的手に入れやすい現行品です。
富士山麓終売後の後継銘柄「キリンウイスキー 陸」とは？
富士山麓シリーズが整理される中で、2020年に登場したのが「キリンウイスキー 陸」。
この銘柄は、富士御殿場蒸溜所の技術を受け継ぎながらも、よりライトで親しみやすい味わいに仕上げられています。
キリンウイスキー 陸の開発背景
「キリンウイスキー 陸」は、ウイスキー需要の拡大によって不足したモルト原酒を補うため、グレーン主体のブレンドに方向転換。
富士山麓の持つ香ばしさと厚みを継承しつつ、価格帯を抑えた“日常飲み向けジャパニーズウイスキー”として開発されました。
キリンウイスキー 陸の味わいとスタイル
アルコール度数は50°から46°に調整され、スムーズで飲みやすい仕上がり。
ハイボールでもロックでもバランスよく楽しめるため、家庭用として人気を集めています。
「富士山麓の後継」と呼ばれるのも納得の完成度です。
プレミア化する終売品、価格動向に注意
終売後、富士山麓シリーズは急速に市場価格が高騰しました。
定価1,600円前後だった「富士山麓 樽熟原酒50°」が、今では5,000円〜7,000円台で取引されることも。
18年熟成ボトルなどの希少モデルでは、数万円以上の値がつくケースも珍しくありません。
ただし、注意すべきは保管状態や出所です。
中古市場では、箱なし・液面低下（いわゆる“目減り”）などによって品質に差が出ることがあります。
購入を検討する場合は、信頼できるショップや専門業者を利用するのが安心です。
富士山麓シリーズは今後復活する？
多くのファンが期待する“復活”ですが、現時点で公式な再販の予定は発表されていません。
原酒不足の問題は依然として続いており、再生産には数年以上のスパンが必要になります。
そのため、当面は「富士山麓 Signature Blend」や「キリンウイスキー 陸」がキリンの主力として展開されると考えられます。
ただし、近年は国内蒸溜所の増設・原酒生産量の拡大も進んでおり、将来的に富士山麓ブランドが復刻する可能性もゼロではありません。
かつての味わいを懐かしむ声が多いだけに、ファンとしては期待を持って見守りたいところです。
富士山麓を今から楽しむための選び方
もし今から「富士山麓」を楽しみたいなら、目的に合わせて次のように選ぶのがおすすめです。
- 味わいを再体験したい人 → 「富士山麓 Signature Blend」
- コスパよく日常的に飲みたい人 → 「キリンウイスキー 陸」
- コレクション・贈答向けに探している人 → 終売品「富士山麓 樽熟原酒50°」や「富士山麓 シングルモルト18年」
どのモデルにも富士御殿場蒸溜所の技術が息づいており、それぞれ違った魅力があります。
現行モデルを通じて“富士山麓”の遺伝子を味わうのも、一つの楽しみ方です。
キリン富士山麓ウイスキー終売の理由と今後の展望
改めてまとめると、「キリン富士山麓ウイスキー」終売の背景には、
- 原酒の供給不足
- ジャパニーズウイスキーブームによる需要増
- ブランド再構築による戦略的整理
この3つの要因が重なっていました。
しかし、ブランドそのものは消えておらず、「富士山麓 Signature Blend」や「キリンウイスキー 陸」といった形で確実に受け継がれています。
もし店頭や通販で旧ボトルを見かけたら、それはまさに“出会い”です。
終売の理由を知ったうえで手に取ると、その一杯がより特別に感じられるはずです。
富士山の清らかな水と、御殿場の風土が育んだキリン富士山麓の味わい——。
これからも語り継がれる日本ウイスキーの名作として、多くのファンの記憶に残り続けるでしょう。
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