ウイスキー好きの間で長年愛されてきた「サントリー角瓶〈黒〉」。通称「黒角」と呼ばれ、その芳醇でコクのある味わいに惚れ込んだ人も多いでしょう。そんな黒角がいつの間にか店頭から姿を消し、「終売」という噂が広がっています。この記事では、なぜ黒角が販売終了になったのか、そして今でも手に入れる方法があるのかを詳しく解説します。
「サントリー角瓶黒」とは?人気の理由をおさらい
まずは、黒角がどんなウイスキーだったのかを振り返っておきましょう。
サントリー角瓶のシリーズは1937年に登場して以来、日本のウイスキー文化を支えてきた定番ブランド。その中で黒角は2007年に発売され、アルコール度数43%という高めの設定と、パンチョン樽で熟成された山崎蒸溜所産モルト原酒をキーモルトに使用した贅沢なブレンドが特徴でした。
通常の角瓶よりも香ばしく、厚みのある味わい。ストレートやロックで飲むと、モルトの深いコクが感じられ、ファンの間では「一度飲んだら戻れない」と評されるほど。ハイボールブームの時代でも、「黒角のハイボールは別格」という声が多くありました。
サントリー角瓶黒が終売になったのはいつ?
黒角は、公式には2016年3月をもって終売(製造終了)となりました。
サントリーの公式サイトの「製造終了商品一覧」にも掲載されており、以降は在庫限りで販売終了とされています。つまり、現在市場に出回っているものはすべて過去の在庫、または個人所有のストック品ということです。
終売発表当時はファンの間で驚きと落胆の声が広がり、SNSや掲示板では「黒角ロス」という言葉まで生まれました。
それほどまでに、黒角は愛飲者にとって特別な存在だったのです。
終売の背景①:ウイスキー原酒不足という現実
黒角終売の最大の理由として挙げられるのが、原酒不足です。
2008年頃から始まった“ハイボールブーム”により、角瓶シリーズの需要が急増。想定以上のスピードで売れていった結果、原酒の供給バランスが崩れました。ウイスキーは熟成に時間がかかるため、すぐに増産できません。山崎蒸溜所や白州蒸溜所の原酒が逼迫し、各ブランドの製造計画に影響が出たのです。
黒角は山崎モルトを多く使用するプレミアム仕様だったため、限られた原酒の中では優先順位が下がったと見られます。結果として、コストの高い黒角の製造を停止し、より汎用的で需要の高い通常の角瓶へリソースを集中させる判断が取られました。
終売の背景②:ブランド整理と戦略転換
サントリーは2010年代後半、ブランドラインナップの整理を進めていました。
当時、角瓶には「白角」「角瓶プレミアム」「黒角」など複数の派生商品がありましたが、これらが消費者にとってやや複雑で、流通面でも管理が難しかったようです。そのため、よりシンプルで認知度の高い「サントリー角瓶(40%)」に一本化する方向へ舵を切りました。
さらに、黒角はアルコール度数が高く、一般的なハイボール用ウイスキーとしては少し強めの印象もありました。ハイボール需要が主流となる中、より軽やかで飲みやすいスタイルに合わせた製品ラインが重視されたことも、終売の背景にあります。
終売の背景③:コストと生産効率の問題
黒角は“パンチョン樽熟成の原酒”という点で特別でしたが、それは同時に生産コストの高さを意味します。原材料費の上昇、熟成倉庫のスペース不足、ブレンド管理の手間など、企業としては無視できないコストが積み重なっていました。
ウイスキー人気が再燃していた時期には、より多くの量を供給できる体制が求められました。その中で、限定的な製造しかできない黒角は採算が取りにくく、終売という判断に至ったと考えられます。
現在の流通状況:黒角はもう買えないのか?
「もう手に入らないの?」と思う人も多いでしょうが、実はまだ購入できる可能性はあります。
ただし、それはあくまで「在庫限り」「中古市場」「プレミア価格」での話です。
大手ECサイトや酒販店では、黒角を“終売品”として取り扱っている店舗がごく少数ながら存在します。価格は定価の数倍に跳ね上がっており、700mlボトルが1万円〜2万円で販売されているケースも珍しくありません。
また、Yahoo!オークションやメルカリなどのフリマサイトでは、未開封品やコレクション放出品が出品されることもあります。こちらも相場はおおむね9,000円前後から上昇傾向にあり、状態の良いものほど高値で取引されています。
購入を検討する際の注意点
黒角はすでに公式流通ルートでの新品販売が終了しているため、購入時には以下の点に注意が必要です。
- 信頼できる販売元かを確認する
古酒や終売品の市場では、保管状態が悪いボトルやラベル劣化品も出回ります。酒販店の実店舗や、評価の高い出品者から購入するのが安全です。 - 開封済み・未開封を必ず確認する
ウイスキーは開封後に酸化が進みます。コレクション目的なら未開封のものを選びましょう。 - 価格の高騰に注意する
プレミア価格で取引されているため、購入前に相場を調べ、妥当な価格かどうかを見極めましょう。 - 保管環境に配慮する
直射日光や高温多湿を避け、涼しく暗い場所に置くのが理想です。ボトルを横倒しにせず、キャップ部分の劣化を防ぐ工夫も必要です。
黒角の代わりに楽しめる現行ウイスキー
黒角が手に入らない場合、現行の角瓶シリーズや他ブランドで代わりを探すのも一つの手です。
- 現行のサントリー角瓶(40%)
ハイボールに最適で、居酒屋から家庭まで幅広く愛されています。黒角よりも軽快で飲みやすく、日常的に楽しむには十分な品質です。 - サントリーオールド
“だるま”の愛称で親しまれるクラシックなウイスキー。黒角に近いコクと熟成感があり、ストレート派には特におすすめ。 - トリスクラシック
コスパ重視ならこちら。ややライトな味わいですが、角瓶系統のブレンドが好きな人には馴染みやすい一本です。 - 山崎・白州シリーズ
黒角に含まれていたモルト原酒のルーツに近いのがこれらのシングルモルト。価格は高めですが、黒角で感じた香ばしさや深みを求めるなら選ぶ価値ありです。
黒角の復活はあり得るのか?
過去には「白角」の再販が数量限定で行われたことがあります。そのため、「黒角もいつか復活するのでは?」という期待を抱くファンも少なくありません。
しかし、2025年現在までに再販やリニューアルの動きは確認されていません。
サントリーは現在、「角瓶ハイボール缶」や「角ハイ濃いめ」など、手軽に楽しめる商品群に力を入れており、黒角のようなプレミアム仕様を再生産する計画は見られないのが現状です。
ただし、ウイスキー市場の需要が成熟し、原酒供給が安定した段階で復刻版が登場する可能性はゼロではありません。ファンとしては、今後の動向を気長に見守るしかなさそうです。
サントリー角瓶黒が終売に?まとめと今後の楽しみ方
黒角の終売は、多くのウイスキーファンにとって寂しいニュースでした。
しかしその背景には、原酒不足やブランド戦略といった“企業としての現実”があります。
手に入れにくい今だからこそ、黒角を見かけたら一期一会の出会い。
もし手元にあるなら、大切な日や特別な時間にゆっくり味わってみてください。
そして、現行のサントリー角瓶や他のウイスキーを通しても、サントリーが築いてきた味の系譜を感じることができます。
ウイスキーの世界は“終売”もまた一つのストーリー。
黒角の歴史を知ることは、日本のウイスキー文化をより深く楽しむきっかけになるはずです。

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