サントリー 頂 終 売 なぜ？まずは経緯から振り返る
2017年夏、サントリーが満を持して発売した「頂〈いただき〉」。
アルコール度数7％、高麦芽量、高発酵、高炭酸という“トリプルハイスペック製法”を掲げ、「力強いコクと飲みごたえ」を売りに登場しました。パッケージには山頂を象徴するデザインが描かれ、「7％なんだよ」というキャッチコピーも印象的でした。
当時、ビール系飲料市場は「発泡酒」や「第3のビール」と呼ばれる新ジャンルが全盛期。サントリーはこの中で“飲みごたえ重視型”の商品として「頂〈いただき〉」を投入したのです。
しかし、勢いよく登場したこのブランドは、わずか2年ほどで終売を迎えます。なぜこれほど早く市場から姿を消すことになったのでしょうか。
終売のタイミングと公式の動き
サントリーの公式サイト「製造終了商品一覧」によると、「頂〈いただき〉」はすでに製造を終了しています。
一部の流通業者や専門ブログによれば、2019年春ごろにすでに製造が止まっており、同年7月にはブランドページから姿を消していたとの報告もあります。
つまり、発売からおよそ2年での終売。アルコール飲料としては極めて短命なブランドでした。公式に明確な終了理由は公表されていませんが、複数の要因が重なっていたことがうかがえます。
終売の背景①：市場シェアと競合環境の変化
「頂〈いただき〉」が登場した2017年当時、各社がしのぎを削っていたのは“高アルコール系新ジャンル”市場です。
ストロングゼロ（チューハイ系）のヒットを背景に、ビール類でも“ガツンと飲みごたえ”がトレンド化していました。サントリーはそこに「度数7％の新ジャンル」という挑戦をぶつけたわけです。
しかしその後、市場の主流は「飲みごたえ」よりも「ビールに近い味わい」へとシフトします。キリン「本麒麟」などが代表例で、消費者の嗜好が“強いアルコール”より“味の満足感”へ変わったのです。
つまり、頂〈いただき〉が得意としていた“ストロング系のポジション”が、市場トレンドから外れていったということになります。
終売の背景②：ブランド戦略とラインナップ再編
サントリーは頂〈いただき〉を発売後、わずか数か月でリニューアルを実施しました。アルコール度数を8％に引き上げ、麦芽量も増やした“強化版”。
それだけ初期の販売結果が期待ほどではなかったという裏返しでもあります。
そして2019年ごろには、同社は金麦〈ゴールド・ラガー〉など、よりビールライクな味わいを持つブランドへ注力をシフト。新ジャンル領域での主力を金麦シリーズに一本化する方向に動きました。
この戦略転換の中で、頂〈いただき〉は自然とラインナップ整理の対象となったと見られます。
終売の背景③：製造コストと流通上の課題
「高麦芽量・高発酵・高炭酸」という製法は、確かに味わいに厚みを出しますが、その分コストも上がります。
新ジャンル製品は“安価で楽しめるビール代替”という性格が強く、製造コストが上がると価格競争力を失うリスクが高いのです。
また、アルコール7〜8％という設定も、税制・販売単価・飲みやすさの面で微妙なバランスにありました。
コンビニなどの定番棚で長期的に売るには、もう少し“軽め”の仕様が主流。こうした構造的なハンディも、継続的な製造を難しくした要因の一つといえます。
終売の背景④：消費者の嗜好変化
近年の酒類市場では、「健康志向」や「食事と合わせやすい飲みやすさ」が求められるようになっています。
以前のように“強いアルコール”や“ガツンと来るコク”を求める層が縮小し、「飲みやすく、味わい深い」方向にニーズが移っているのです。
頂〈いただき〉はまさに“男らしいストロング路線”を象徴する商品でしたが、この流れとは逆行していました。
つまり、消費者が求める方向とブランドの個性がズレてしまったことも、販売縮小につながったと考えられます。
終売の背景⑤：ブランド継続の難しさ
発売からわずか数年で終売したことを考えると、「頂〈いただき〉」は長期的なブランド育成を前提とした商品ではなかった可能性もあります。
市場動向を試す“テストブランド”としての側面が強く、一定の成果をもって役割を終えたという見方もできます。
実際、サントリーはこれまでにも短期間で終了する限定ブランドをいくつも展開しており、消費者の反応を踏まえて主力ラインにフィードバックしてきました。
頂〈いただき〉もその一環として、後続商品の開発に知見を残した存在といえるでしょう。
「頂〈いただき〉」の特徴を改めて振り返る
終売してもなお、ファンの間では「もう一度飲みたい」という声が絶えません。
それほど印象に残ったのは、以下のような特徴があったからです。
- 麦芽のうまみが濃厚で“重厚な飲みごたえ”
- 高炭酸による爽快感とキレ
- 7〜8％という高めのアルコールで満足感がある
- 缶デザインやブランドメッセージに“山頂感”があり、特別感があった
こうした特徴は、当時の他ブランドと明確に差別化できていたポイントでもありました。
今後の代替選び──「頂」に近い味を求めるなら
「もう買えないの？」と思った方に向けて、代替選びのポイントを整理します。
- アルコール度数で探す
頂〈いただき〉の代わりを探すなら、7％前後の高アルコール新ジャンルが候補。飲みごたえを重視するなら、この数字が目安になります。 - “麦芽感”“コク重視”の製品を選ぶ
サントリー製品なら「金麦〈ゴールド・ラガー〉」など、麦のうまみを押し出したラインが比較的近い方向性です。
また、他社であればキリン「本麒麟」やアサヒ「極上〈キレ味〉」なども同系統の味わいを持っています。 - 長期販売が続いているブランドを選ぶ
短期で終売する製品より、シリーズ展開している定番ブランドの方が、味の安定性や入手しやすさで安心です。 - シーンに合わせて選択
「晩酌にしっかり飲みたい」「休日に一本だけで満足したい」など、飲む場面に合わせて選ぶと失敗がありません。
今後、復活や再販の可能性は？
現時点で「頂〈いただき〉」の再販情報は確認されていません。
ただし、サントリーは人気ブランドをリニューアル・復活させる事例も多く、今後の市場動向によっては、同コンセプトの製品が再登場する可能性もあります。
実際、「金麦〈ゴールド・ラガー〉」シリーズや「トリス」「ザ・プレミアム・モルツ」などでも、時代に合わせて仕様変更や限定復刻を繰り返してきました。
そのため、「頂〈いただき〉」という名前そのものでなくとも、同系統の“飲みごたえ重視”製品が再び登場する日を期待する声は少なくありません。
サントリー 頂 終 売 なぜ──まとめ
サントリーの「頂〈いただき〉」が終売となった理由は、
- 市場トレンドの変化
- ブランド戦略の再編
- 製造コストや流通の課題
- 消費者嗜好の変化
など、複数の要因が絡み合った結果でした。
短命ではありながら、確かな存在感を残したブランドでもあります。
今後、もし“あの飲みごたえ”を求めるなら、近いコンセプトを持つ新ジャンルを探してみるのがおすすめです。
「頂〈いただき〉」が築いた“力強いコクと爽快なキレ”のDNAは、今も多くの製品に受け継がれているのです。
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