シャルトリューズVEPとは？その魅力と特別な存在
「シャルトリューズVEP（Vieillissement Exceptionnellement Prolongé）」は、リキュールの中でも特別な地位を占める存在です。
フランスの修道院で生まれた秘伝のレシピをもとに、130種類以上のハーブやスパイスを使用して作られるシャルトリューズ。その中でもVEPは「極めて長期熟成」という意味を持ち、通常のグリーンVEPやイエローVEPのシャルトリューズをさらに長期間オーク樽で寝かせた特別仕様です。
グリーンVEPは力強く深みのあるハーバル香が特徴で、イエローVEPは柔らかく甘やかな余韻が魅力。どちらも瓶詰め前に8〜20年という長い年月をかけて熟成され、他のリキュールでは味わえない複雑で奥行きのある味わいが楽しめます。
ボトルや木箱の仕様も特別で、手書きの番号や封蝋など、まさに「一本の芸術品」と呼ぶにふさわしい逸品です。
しかし近年、このVEPが「終売」あるいは「販売停止」として扱われるケースが相次いでいます。いったい何が起きたのでしょうか。
終売・販売停止とされる背景：なぜ市場から姿を消したのか？
1. 修道士による生産制限と哲学的判断
最大の理由は、製造元であるカルトジオ会修道士たちが「生産量を意図的に制限した」ことにあります。
彼らにとって、シャルトリューズは単なる商業製品ではなく、祈りと修道生活の一部。2019年頃には年間生産量を約190万本に制限したと報じられています。
彼らは「増産すれば修道の本分を失う」と考え、世界的な需要拡大にもかかわらず、供給を抑えるという決断を下しました。
結果として、世界中のバーや愛好家の間で品薄が深刻化。特にVEPのような長期熟成モデルは、製造本数そのものが少ないため、真っ先に市場から消えていったのです。
2. 世界的な需要の急増とクラフトカクテルブーム
もう一つの要因は、カクテルブームによる需要の爆発的増加です。
2000年代以降、クラフトカクテルの流行で「ラストワード」や「ビジョップ」などシャルトリューズを使う名カクテルが世界中で再注目されました。
バーテンダーやウイスキー愛好家の間でも「唯一無二のハーバルリキュール」として再評価され、VEPを求める声が一気に高まったのです。
ところが、生産量が限られているため供給が追いつかず、結果的に「世界的なシャルトリューズ不足」が発生。
アメリカやヨーロッパでは入手制限や購入抽選が行われるほどの人気ぶりで、日本でも在庫が枯渇しました。
3. 日本市場での正規流通の縮小
日本国内では正規輸入代理店経由でのVEP流通がほぼ途絶えています。
現在、酒販店や通販サイトでは「終売」「在庫なし」「並行輸入のみ」といった表記が目立ちます。
とくに「武蔵屋」や「リカーズハセガワ」など専門店のサイトでも「終売品」と明記されており、国内での再入荷見込みは極めて低い状況です。
並行輸入品を取り扱う店舗もありますが、価格は2倍以上に高騰。以前は3万円前後だったボトルが、現在では6万円を超えることも珍しくありません。
これにより、VEPは一般消費者が気軽に購入できる酒ではなくなりつつあります。
「終売」という言葉の真実：公式発表はあるのか？
ここで注意したいのが、「終売」という言葉の扱いです。
現時点で、メーカー（カルトジオ会）や正規代理店が「VEPの製造を終了する」と公式に発表した事実は確認されていません。
つまり、「完全な生産終了」ではなく、「供給制限と市場在庫の枯渇による実質的な終売状態」と言えます。
各酒販店が「終売」と表記しているのは、単に再入荷の目途が立たず、販売を終了せざるを得ないためです。
生産自体はごく少量で継続している可能性があるものの、修道士たちが増産を拒む姿勢を貫いているため、一般市場に出回る機会はほとんどなくなっています。
したがって、「シャルトリューズVEPが終売」とは、「生産が完全に止まった」という意味ではなく、「入手がほぼ不可能になった」というのが正確な表現でしょう。
シャルトリューズVEPを手に入れる方法
それでも、「どうしても手に入れたい」という声は後を絶ちません。
現在、VEPを再入手する方法として考えられるのは以下の3つです。
1. 並行輸入品を狙う
海外の酒販店ルートから仕入れた並行輸入品が、日本国内のネットショップや楽天市場などに時折出回ることがあります。
「再入荷通知」や「予約販売」を設定しておくことで、偶然のチャンスをつかめる可能性も。
ただし、価格は為替や輸送コストの影響を大きく受け、高額化している点には注意が必要です。
2. オークションや中古市場をチェック
Yahoo!オークションやメルカリなどの中古市場では、コレクター放出品として出品されることがあります。
ボトルの保存状態や封印の有無をよく確認し、信頼できる出品者を選ぶことが大切です。
特に未開栓品で木箱付きのVEPは人気が高く、落札価格が10万円を超えることもあります。
3. 海外ショップや免税店を探す
フランス本国や欧州の一部ショップでは、まれに在庫が残っているケースもあります。
旅行時や現地在住の知人を通じて購入するという方法もありますが、輸入規制や関税などに注意が必要です。
また、海外販売サイトでは「ヴィンテージ品」として高値で販売されていることもあるため、価格比較を慎重に行いましょう。
VEPが希少化した今、代替として楽しめる選択肢
VEPが入手困難な今、「通常のシャルトリューズ」も改めて注目されています。
- グリーン・シャルトリューズ：鮮烈なハーブ感とスパイシーな香りが特徴。VEPに比べると若々しく力強い味わい。
- イエロー・シャルトリューズ：蜂蜜やバニラを思わせる甘みがあり、マイルドで優しい印象。
これらもすでに一部で品薄となっており、VEPほどではないにせよ価格上昇が続いています。
特にカクテル用途なら、通常モデルでも十分に魅力的。自宅バーで「ラストワード」などを楽しむなら、むしろこちらのほうが現実的です。
シャルトリューズVEPが終売の衝撃と今後の展望
「シャルトリューズVEPが終売」というニュースは、多くの酒愛好家にとって衝撃的な出来事でした。
それは単なる供給停止ではなく、「修道士たちが信仰と生活を守るために下した静かな決断」でもあります。
商業主義とは対極の哲学を持ち、環境と信仰を重んじる姿勢。
その結果として、私たちは希少で高価な一滴を前に、リキュールの本質を改めて考えさせられるのです。
今後も生産再開の可能性はゼロではありませんが、当面は入手困難が続くでしょう。
もしどこかでVEPを見つけたなら、それは幸運以外の何ものでもありません。
そして、その一杯を味わう瞬間には、修道士たちの祈りと時間の重みを感じてみてください。
まとめ：シャルトリューズVEPが終売の衝撃は続く
「シャルトリューズVEP 終売」という言葉は、今や世界中のバー業界と愛好家の間で共通の嘆きとなっています。
修道士たちの哲学、生産制限、需要の爆発的増加――そのすべてが交錯し、VEPは“伝説のリキュール”として姿を消しました。
けれども、終売という結末は決して悲劇ではありません。
本来の姿勢を貫いた結果としての希少性こそが、VEPの価値をさらに高めているのです。
再販や復活の知らせが届く日を願いつつ、いまあるボトルを大切に味わいましょう。
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