「ヘルメス バイオレットってもう売ってないの?」──そんな声が、カクテル好きの間でじわじわと広がっています。あの鮮やかなすみれ色と華やかな香りを覚えている人なら、一度は探したことがあるかもしれません。この記事では、ヘルメス バイオレットの終売事情、なぜ姿を消したのか、そして再販や代替リキュールの可能性について、最新情報をもとに整理してみました。
ヘルメス バイオレットは本当に終売なのか?
まず結論から言うと、ヘルメス バイオレットは現在「終売」とみられます。サントリーの公式製品一覧には掲載がなく、全国の酒販店でも「在庫限り」「販売終了」と表示されているケースが多く見られます。
一部のネットショップではまだ在庫が残っている場合もありますが、ほとんどが長期保管された古いボトル。オークションサイトなどでは「未開封の古酒」として取引されることもあり、流通量が極端に減っているのが現状です。
1990年代後半の時点で「終売(98-0)」という表記が見られる販売店もあり、この数字がそのまま「1998年に終売」という意味であれば、すでに四半世紀が経過していることになります。いずれにせよ、現行生産が行われていないことはほぼ確実です。
ヘルメス バイオレットとはどんなリキュールだったのか
ヘルメス バイオレットは、サントリーが展開していた「ヘルメス」シリーズの一つ。華やかなすみれの香りと美しい紫色が特徴のリキュールで、カクテル「バイオレット・フィズ」や「パルフェ・タムール」系のベースとして人気がありました。
度数は20度前後で、甘味が強く、香りの主張もはっきり。色味のインパクトも相まって、バブル期にはバーやディスコなどで頻繁に使われていたといいます。当時のレビューには「懐かしい香り」「青春の味」といった言葉も見られ、時代の空気を象徴する存在だったことが伺えます。
終売の背景にある複数の理由
では、なぜそんなヘルメス バイオレットが姿を消してしまったのでしょうか。公式な発表はありませんが、いくつかの要因が重なったと考えられます。
1. カクテルブームの終焉と需要減少
1980〜90年代の日本ではカクテルブームが巻き起こり、数多くのリキュールが発売されました。しかし2000年代以降、嗜好が焼酎やハイボール、ワインなどへ移り、家庭でもカクテルを作る人が減少。すみれの香りのように個性的なフレーバーは、次第にニッチな需要へと追いやられました。
2. ブランド整理による生産終了
サントリーの「ヘルメス」シリーズ自体、長年にわたって多品種展開されていました。バナナ、ミント、メロン、カカオ、ホワイトなど、カクテル向けのリキュールがずらりと並んでいましたが、需要や採算の変化により多くが整理・終売となっています。ヘルメス バイオレットもその流れの中で静かに消えた可能性が高いでしょう。
3. 原料・コストの問題
バイオレットリキュールは香料や着色料、花の抽出物などを使用しており、原料コストや品質維持が難しい商品でもあります。すみれ系の香料は安定した供給が難しく、需要が減ると製造ラインの維持自体が採算に合わなくなります。特に国内生産を続けるには、原料調達や法規制対応のコストが重くのしかかった可能性もあります。
4. 表示制度・酒税制度の変化
酒類のラベル表示や酒税制度が年々厳格化するなか、旧仕様の製品を維持するためには再設計や再登録が必要となります。古いレシピのまま販売を続けるには多くの手続きが必要であり、リニューアルするほどの需要が見込めなければ生産停止を選ぶのは自然な流れです。
現在の入手状況と市場での扱い
現在、ヘルメス バイオレットを見かけるのは主に以下のルートです。
- 在庫を抱える一部の酒販店(在庫限り)
- オークション・古酒専門ショップ
- 個人保管の未開封ボトル販売
- 並行輸入や業務用ストックの放出品
価格は新品時の1,500円前後から上昇し、オークションでは2,000〜3,000円前後で取引されることもあります。状態やボトルデザインによってはコレクターズアイテムとして扱われるケースもあり、飲用よりも「懐かしの一本」として価値が上がっている印象です。
再販の可能性はある?
ここで気になるのが、再販の可能性です。
残念ながら、現時点ではサントリーから再生産やリニューアルの発表はありません。過去の例を見ると、同社がリキュールを復刻するのはかなり稀で、限定的な記念商品やコラボレーションなどの特別なタイミングに限られます。
ただし、まったく可能性がゼロというわけではありません。最近では「レトロブーム」や「平成リバイバル」の流れで、懐かしの味やデザインが再評価されるケースも増えています。もし「カクテル文化の再興」や「クラシックリキュールへの注目」が再び高まれば、限定再販という形で日の目を見ることもあり得ます。
そのため、メーカーへの問い合わせやSNSでのリクエストが一定数集まれば、ファンの声が届く可能性もあります。長く愛された商品ほど、復活の期待を持ちたいところです。
ヘルメス バイオレットの代替になるリキュール
入手が難しくなった今、同じような香りや色味を楽しみたい人に向けて、代替となるリキュールをいくつか紹介します。
ボルス パルフェ・タムール(BOLS Parfait Amour)
もっとも代表的な代替品といえるのが、オランダの老舗ブランド「ボルス パルフェ・タムール」。すみれの香りに柑橘やバニラを合わせた華やかな風味で、色も美しいバイオレットブルー。カクテル「パルフェ・タムール・フィズ」などに最適で、入手性も安定しています。
デカイパー パルフェ・タムール
同じくオランダ発のリキュール。ボルス パルフェ・タムールよりやや甘味が強く、香りの輪郭もやわらかめ。カクテル初心者にも扱いやすく、スーパーや大型酒販店でも見かけることがあります。
モナン バイオレットシロップ(ノンアルコール)
もしアルコールを控えたい場合や、自宅でノンアルコールカクテルを楽しみたい場合は「モナン バイオレットシロップ」がおすすめ。色も香りもよく似ており、ソーダ割りやレモンジュースでアレンジすれば“バイオレットフィズ風”を再現できます。
自家製バイオレットカクテル
市販リキュールが手に入らないなら、自作という手もあります。無色のリキュール(例えばホワイトラムやウォッカ)に、食用バイオレットエッセンスや天然着色料を少量加えれば、ヘルメス風のカクテルを楽しむことも可能です。香りづけにはフローラル系のハーブやラベンダーシロップを使うのも一案です。
終売品を愛するという楽しみ方
ヘルメス バイオレットに限らず、終売になったお酒やお菓子には独特の魅力があります。それは単なる味や香りだけでなく、「あの頃の思い出」や「時代の空気」を閉じ込めているから。
今の時代、すべてが便利で再現可能になったように見えますが、こうした“もう作られないもの”には、代えがたいノスタルジーがあります。
もし手に入れたら、ぜひ大切に味わってください。炭酸で割って色の変化を眺めるだけでも、当時の雰囲気を感じられるはずです。
まとめ:ヘルメス バイオレット終売の真相とこれから
ヘルメス バイオレットは、華やかな香りと独特の色合いで多くのファンに愛されたリキュールでした。しかし、時代の変化や需要減少、コスト面などの理由から、現在は事実上の終売状態にあります。
再販の可能性は低めですが、古酒や並行輸入で出会えることもあり、代替リキュールも複数存在します。
カクテル文化の復活やクラシックブームの流れ次第では、いつか再びボトルを手に取れる日が来るかもしれません。
その日を夢見ながら、今はボルス パルフェ・タムールやデカイパー パルフェ・タムールなどの代替品で「すみれ色のグラス」を楽しむのも素敵ですね。
「終売」という言葉は少し寂しいけれど、それだけ長く愛された証拠でもあります。
ヘルメス バイオレットが生んだ思い出や味わいは、これからも多くの人の心の中で生き続けていくでしょう。

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