ウイスキー好きの間でじわじわ話題になっている「ヘーゼルバーン10年」。
「最近まったく見かけなくなった」「終売って本当?」という声がSNSや酒販店レビューで相次いでいます。
この記事では、スコットランドの名門スプリングバンク蒸留所が手がけるこの1本について、なぜここまで希少化しているのか、そして今どこで買えるのかを、できる限りわかりやすくまとめました。
ヘーゼルバーン10年とは?キャンベルタウンの個性を映す一本
まず「ヘーゼルバーン10年」というブランドについて整理しましょう。
製造元はスコットランド・キャンベルタウン地区のスプリングバンク蒸留所。ここは1828年創業という長い歴史を持ち、現在も家族経営で操業している数少ない蒸留所のひとつです。
「ヘーゼルバーン10年」は、同蒸留所の3つのブランドの中で唯一のノンピート&トリプル蒸留。
つまり、スモーキーさを抑え、より軽やかでフルーティな仕上がりが特徴です。
原料はノンピート麦芽を使用し、3回蒸留によってアルコールの雑味を除去。熟成はバーボン樽をメインに行われ、香りには洋梨やリンゴ、バニラ、蜂蜜、そしてほんのりとしたミルクチョコのような甘みが感じられます。
スプリングバンクが生む3ブランドの中では最も穏やかで上品。いわば“蒸留所の繊細な側面”を象徴するシリーズです。
10年熟成は、そのバランスの良さから世界中で高い評価を得ています。
「終売」情報の真相──本当に製造終了なのか?
ここ数年、「ヘーゼルバーン10年が終売になった」という情報を見かけた人も多いでしょう。
しかし、結論から言うと公式発表として「終売」は確認されていません。
とはいえ、実際の流通状況を見ると「ほぼ終売状態」といって差し支えないほどの品薄です。
国内の主要販売店では以下のような状況が続いています。
- 「輸入酒のかめや」など一部店舗では「終売(98-0)」と明記
- 信濃屋や酒のふじやなどの専門店でも「SOLD OUT」状態が長期化
- 楽天市場では在庫僅少、価格は2万円前後まで高騰
このように、販売店側の表記として「終売」扱いになっているケースが多く、入手難易度は非常に高いです。
なぜヘーゼルバーン10年は希少化したのか?
終売が噂される最大の理由は、供給量の少なさにあります。
スプリングバンク蒸留所は、他の大手蒸留所と違い大量生産を行いません。
全ての工程――製麦・蒸留・熟成・瓶詰め――を自社で行い、手作業と品質を最優先する姿勢を崩していません。
このため、生産量は年間でごくわずか。輸出先も限られ、日本向けの割り当ては少数です。
さらに世界的なウイスキーブームが重なり、需要が供給を大きく上回っています。
また、原酒不足も深刻です。10年以上寝かせるためには、最低でも10年前に仕込んだ原酒が必要。
スプリングバンク系列のブランドは全体的に熟成年数物が減っており、原酒の割り当てを優先するため「ヘーゼルバーン10年」のボトリング数を抑えていると考えられます。
結果として、販売店は再入荷できず、在庫が尽きたまま「終売」扱いになる――という構図です。
スプリングバンク蒸留所の哲学が生む“意図的な希少性”
スプリングバンクは「増産しない蒸留所」としても有名です。
これは単なる生産能力の問題ではなく、哲学的な選択です。
彼らは効率よりも品質を優先します。蒸留の火加減も人の目で管理し、冷却ろ過や着色を行わない。
結果として得られるウイスキーは、同じ銘柄でもロットごとに微妙な表情の違いを見せます。
その個性こそがスプリングバンクブランドの魅力であり、世界中のファンが“手に入りにくさすら価値”と感じる理由でもあります。
つまり、「ヘーゼルバーン10年が希少化している」のは、単なる供給不足ではなく、蒸留所の伝統と美学が生み出した“必然”とも言えるのです。
終売ではなく「実質終売」?流通事情を整理
では、現時点で「終売」とはどう位置づけられるのでしょうか。
結論としては、
- メーカー(スプリングバンク)からの正式な終売発表はなし
- しかし、輸入代理店や販売店レベルでは「取り扱い終了」扱いが進行
という二層構造です。
つまり、製造自体は止まっていない可能性が高いものの、日本への輸入ルートが途絶えている、あるいは「次回入荷未定」の状態になっていると推測されます。
加えて、円安や輸送コストの上昇が価格に影響。以前は7,000円前後だったものが、今や倍以上のプレミア価格で取引されることも珍しくありません。
現在入手できる販売店と価格相場
2025年時点で、ヘーゼルバーン10年を正規ルートで手に入れるのはかなり難しくなっています。
とはいえ、まだいくつかの方法は残されています。
- 大手量販店オンラインショップ
ビックカメラ.comでは一時期10,780円で販売されていましたが、在庫は不安定です。
再入荷通知を登録しておくのがおすすめです。 - 楽天市場・Yahoo!ショッピング
価格帯は15,000~25,000円前後。販売元や並行輸入品によってばらつきがあります。
販売店の評価を必ず確認しましょう。 - 専門店・実店舗
信濃屋、かめや、やまやの一部店舗などで稀に再入荷があります。
「キャンベルタウンフェア」などのイベント期間中に在庫が復活することもあります。 - 中古市場・オークション
メルカリやヤフオクでは3万円以上で取引されるケースも。
ただし保存状態や真贋リスクを考えると、信頼できる店舗経由が無難です。
ヘーゼルバーン10年を探している人へ──今後の展望
今後、スプリングバンク蒸留所がヘーゼルバーン10年を再出荷する可能性はゼロではありません。
同蒸留所では定期的にバッチごとにリリースが行われるため、数年おきに再登場する可能性があります。
ただし、再入荷時は一瞬で売り切れることが予想されます。
そのため、ウイスキーファンにとって現実的な選択肢は次の2つです。
- 今のうちに見つけたら購入しておく
- 代替品として「ヘーゼルバーン12年」や「スプリングバンク10年」「ロングロウPeated」などを検討する
特にスプリングバンク10年は同じ蒸留所の看板商品で、香味バランスも良く、10年熟成クラスでは比較的手に入りやすい存在です。
ヘーゼルバーン10年が愛される理由──“静かな贅沢”
ヘーゼルバーン10年を飲んだことがある人なら、その「柔らかさ」と「奥行き」に驚くはず。
最初に立ち上がるのは、白い花や蜂蜜のような優しい香り。
口に含むと、洋梨やアプリコットのような果実味が広がり、最後にミネラル感を残して消えていきます。
派手さはありません。
しかし飲むほどに深く、静かな満足感がある。
それこそが、このボトルが“通好みのキャンベルタウンモルト”と呼ばれる所以でしょう。
こうした繊細な個性を持つウイスキーほど、一度市場から消えると再登場まで時間がかかります。
だからこそ、今あるうちに大切に味わいたい一本なのです。
まとめ:ヘーゼルバーン10年が終売?希少化の理由と今後の注目ポイント
現時点で「ヘーゼルバーン10年」は公式な終売ではないが、実質的に入手困難な状況です。
その理由は、スプリングバンク蒸留所の少量生産方針、世界的な需要増、原酒不足、そして輸入ルートの縮小。
どれも一朝一夕で解消されるものではありません。
ただし、こうした背景を知ると、単に「希少だから高い」という話ではなく、
職人たちのこだわりやブランド哲学が希少性を生んでいることが分かります。
次の入荷があるかは誰にもわかりません。
でも、もし店頭やネットで見つけたら、それは“偶然ではなく運命”かもしれません。
ヘーゼルバーン10年が語る静かな余韻を、ぜひ一度体験してみてください。

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