ベンチマーク終売の理由とは?
ウイスキー好きの間で長く親しまれてきたアメリカ産バーボン「ベンチマーク」。手頃な価格で楽しめる良質なボトルとして、バーや家庭でも人気がありました。しかし近年、「終売した」「店頭から消えた」という声が増えています。なぜ、そんなベンチマークが姿を消してしまったのでしょうか。
実は、ベンチマークの終売には複数の要因が絡んでいます。単に「売れなくなったから」という単純な理由ではなく、ウイスキー業界全体の流れや国際的な供給事情、そしてブランド戦略の変化が大きく関係しています。
まず、ベンチマークを手がけるのはアメリカ・ケンタッキー州の名門蒸留所「バッファロートレース」。この蒸留所はブランデッド・ウイスキーの中でも非常に人気が高く、「ブラントン」「バッファロートレース」などの銘柄も製造しています。世界的に人気が高まった結果、原酒の供給がひっ迫。熟成年数の長い原酒を十分に確保できず、結果的に廉価モデルのベンチマークへ回す余力がなくなったと見られています。
また、アメリカ国内での需要拡大も影響しています。特にコロナ禍以降、自宅でウイスキーを楽しむ文化が定着し、アメリカ市場内での消費が急増。これにより、輸出用の在庫が減少しました。日本への輸入量が減れば、自然と「終売扱い」に見える状態になります。
さらに、為替や物流コストの上昇も大きな要因です。ベンチマークはもともと1,000円前後で手に入る手頃なバーボンでしたが、輸入コストが高騰すれば利益を維持するのが難しくなります。そのため、輸入代理店が取扱いを中止した可能性も考えられます。つまり、メーカーが製造を止めたのではなく、「日本市場での流通が止まった」というのが実態に近いでしょう。
終売の背景にあるウイスキー業界の事情
ここ数年、ウイスキー市場全体では「原酒不足」が深刻化しています。世界的なウイスキーブームによって、10年以上前に仕込んだ原酒の在庫が追いつかず、多くの蒸留所がラインナップを見直しているのです。
例えばスコッチやジャパニーズウイスキーの分野では、「12年」「17年」といった年数表示付きボトルが姿を消し、代わりにノンエイジ(年数表記なし)の商品が増えています。バーボン業界でも同様の傾向があり、熟成期間を短くしたり、他ブランドに原酒を回したりする動きが見られます。ベンチマークもその流れの中で影響を受けたと考えられます。
また、バッファロートレース蒸留所は自社のブランド価値を高める方向にシフトしており、「より高品質・高価格」なラインを優先する傾向が強まっています。結果として、低価格帯のベンチマークシリーズが後回しになった可能性もあります。
さらに、国内の販売店側でも「限られた棚スペースに利益率の高いボトルを置く」動きが進み、廉価な輸入ウイスキーは流通上不利な立場にあります。こうした市場構造の変化が、ベンチマーク終売の一因と言えるでしょう。
ベンチマークは本当に完全に終売?復活の可能性を探る
では、今後ベンチマークが再び店頭に戻ってくる可能性はあるのでしょうか。結論から言えば、「完全に消滅した」と断言はできません。
まず、バッファロートレース蒸留所自体は今も健在で、アメリカ国内では「Benchmark Old No.8」として販売が続いています。つまりブランドそのものは生きており、日本向けの輸入・流通ルートが止まっているだけの可能性が高いのです。
実際、過去にも似たようなケースがありました。例えば「ブラントン」や「イーグルレア」なども一時的に市場から姿を消しましたが、数年後に限定的ながら再流通が再開されています。ウイスキーは仕込みから商品化まで長い年月を要するため、原酒が整えば再登場することも十分あり得ます。
復活の条件としては、
- 原酒の熟成在庫が安定すること
- 日本市場の需要が明確にあること
- 輸入コストや為替が落ち着くこと
この3点が鍵になります。特に、ベンチマークのようなコスパ重視の銘柄は利益率が低いため、輸入再開の判断には慎重さが求められます。ただ、近年のクラフトウイスキー人気や「手頃でおいしいバーボン」を求める声が強まれば、再び流通する可能性もあります。
ベンチマークの代わりに楽しめるおすすめ銘柄
「もうベンチマークが買えないなら、何を飲めばいい?」という読者の方も多いはず。そこで、味わいや価格帯が近い代替銘柄をいくつか紹介します。
まずおすすめしたいのは、同じバッファロートレース蒸留所が手掛ける「オールドチャーター8年」。こちらもまろやかな甘みと樽香が特徴で、ベンチマークの持つクラシックなアメリカンバーボンの雰囲気をしっかり感じられます。
次に挙げたいのが「バッファロートレース」そのもの。少し価格は上がりますが、同蒸留所の代表銘柄として安定した品質と風味を楽しめます。ベンチマークよりもややスパイシーですが、同系統の味わいで満足感が高い一本です。
もう少し手軽な代替としては「ワイルドターキー8年」や「エズラブルックス」なども候補になります。どちらも比較的入手しやすく、ベンチマークのようにソーダ割りやロックでもバランスよく楽しめます。特にエズラブルックスはコスパの高さで再注目されており、「日常の一杯」にぴったりです。
また、「イエローストーン」「ジョージディッケル」などのテネシー系ウイスキーも、スムースで飲みやすい点で共通しています。香ばしい樽のニュアンスやバニラ香を好む人には良い代替になるでしょう。
ベンチマーク終売で感じる“手頃なウイスキー”の価値
ベンチマークの終売は、ウイスキー愛好家にとって一つの時代の終わりを感じさせます。安価ながら本格的な味わいを持つボトルが市場から消えるのは、寂しいものです。しかし、こうした動きは同時に「ウイスキーの多様化」が進んでいることの裏返しでもあります。
昔ながらの銘柄が減る一方で、クラフト蒸留所や新興ブランドが次々と登場し、選択肢はむしろ広がっています。ベンチマークの味を懐かしみつつも、新しい一本を開拓する楽しみが増えている時代とも言えるでしょう。
さらに、終売によって一部のボトルが希少化し、オークションなどで高値が付くこともあります。もし自宅にベンチマークの未開封ボトルがあるなら、保管しておくのも一つの選択です。希少なボトルとして価値が上がる可能性もあります。
ベンチマーク終売のまとめと今後の展望
改めてまとめると、ベンチマークの終売は「原酒不足」「コスト上昇」「輸入停止」といった複合的な要因が背景にあります。ただし、ブランド自体が完全に消滅したわけではなく、アメリカでは今も生産が続いています。したがって、日本市場での復活の可能性もゼロではありません。
今後もし再発売されるとすれば、価格は上がり、仕様も多少変わるでしょう。しかし、長く愛されてきたブランドだけに、再びその名を目にできる日を楽しみに待ちたいところです。
そして何より、ベンチマークが教えてくれたのは「安くても良いウイスキーはたくさんある」ということ。もし店頭で見かけたら、それは過去の名残かもしれませんが、同時にウイスキーの原点を感じる一本でもあります。終売をきっかけに、次のお気に入りを見つける旅に出てみるのも悪くありません。
ベンチマーク終売の理由を探ることで、ウイスキーという飲み物がどれだけ時代とともに変化しているかが見えてきます。いつの日か、またあの味わいに再会できることを願って。

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