スコッチ好きの間で密かに話題になっているのが、「マクリームーア10年 終売」のニュース。アラン島から生まれたこのライトピーテッド・モルトが、なぜ市場から姿を消してしまったのか。この記事では、終売の背景や味わい、再販の可能性までをわかりやすく解説していきます。
アラン島のピート香 ― マクリームーアという存在
「マクリームーア(Machrie Moor)」は、スコットランド・アイランズ地域のアラン蒸溜所が手掛けるシングルモルトウイスキー。アラン島の西海岸に広がる湿原「マクリー・ムーア」にちなんで名付けられたブランドです。
通常のアラン蒸溜所はノンピーテッド(ピートを使わない)タイプで知られていますが、このシリーズは例外。20ppmほどのライトピーテッド麦芽を使い、ファーストフィル・バーボンバレルで熟成された原酒を使用しています。
いわば“スモーキーなアラン”として、ファンから長年愛されてきた存在です。
マクリームーア10年の特徴と味わい
「マクリームーア10年」は、そのシリーズの中でも特に評価が高い一本。700ml・46度でボトリングされ、無着色・ノンチルフィルターのナチュラル仕様です。
見た目は淡いゴールド。香りを取ると、まず優しいピートスモークが広がり、奥からバニラ、ハチミツ、ナツメグ、ホワイトペッパーなどのスパイスが顔を出します。
口に含むと、シロップのような柔らかな甘みと桃のフルーティーさが感じられ、余韻にスモークとジンジャーが優しく残る。ピート系の中では比較的穏やかで、初心者にもとっつきやすい仕上がりです。
「ピート香が好きだけど、アイラの強烈さはちょっと…」という人にこそ、この10年はぴったりだったのです。
終売の噂は本当?2023年ごろから動きが
終売の話が出始めたのは2023年後半。国内のウイスキー専門店やレビューサイトで「マクリームーア10年が終売」「ラスト入荷」といった文言が相次いで見られるようになりました。
情報を追っていくと、どうやらこの終売は単なる一時的な欠品ではなく、生産体制の変更による“実質的な生産終了”とみられます。
アラン蒸溜所がピーテッド原酒の製造を、南部に新設されたラグ蒸溜所(Lagg Distillery)へ移行したという報道があり、それに伴い「マクリームーア」ブランドとしてのシリーズが一区切りを迎えたと考えられています。
実際、いくつかのショップでは「ラグ蒸溜所への移行に伴い、マクリームーア10年は終売となりました」と明記されており、再出荷の予定は立っていません。
なぜこのタイミングで終売になったのか
ウイスキーの世界では、人気製品が突然終売になることは珍しくありません。
その理由を推測すると、いくつかの要因が浮かび上がります。
- 生産拠点の移行
ラグ蒸溜所が稼働を始めたことで、ピーテッドタイプの生産を一本化した可能性があります。アラン蒸溜所本体ではノンピート路線を強化し、ピート系は別ブランドへ移す流れです。 - 原酒の確保難
世界的なウイスキーブームにより、熟成年数のある原酒が慢性的に不足しています。ピーテッド麦芽を使った限定原酒は特に希少で、安定供給が難しかったと見られます。 - ブランド整理・リニューアル戦略
アラン蒸溜所は近年ボトルデザインやラインナップを刷新しており、その過程で旧シリーズを整理しているようです。マクリームーア10年もその流れの一環だったのかもしれません。
こうした背景から、“突然の終売”ではなく、“次のステップへの移行”として理解するのが自然でしょう。
入手困難化と価格の高騰
終売のニュースが広まるにつれ、在庫は一気に減少。
かつて定価8,000円前後で販売されていたボトルが、今では通販・フリマサイトなどで1万円を超える価格で取引されています。中には、3本セットで4万円近いものも見られるほどです。
楽天やAmazonではほとんどの正規品が「SOLD OUT」表示。並行輸入品が少数流通していますが、ラベル違いやロット差があるため、購入時には注意が必要です。
特にコルクや液面の状態、保管環境などは中古市場では大きなポイント。
終売ウイスキーの価格は市場次第で急変するため、状態をよく確認してから手に入れることをおすすめします。
再販や後継モデルの可能性は?
今のところ、アラン蒸溜所や輸入代理店から「マクリームーア10年再販」の公式発表は出ていません。
しかし、完全にブランドが消滅したわけではなく、「マクリームーア」という名称自体は、アラン蒸溜所のピーテッドシリーズとして今後再登場する余地を残しています。
また、同じ蒸溜所が手掛ける「ラグ蒸溜所」では、よりピートを効かせたウイスキーを展開中。マクリームーア10年の遺伝子を受け継ぐ存在として注目を集めています。
もし再販が実現するなら、今度はラグ蒸溜所のラベルで登場する可能性もありそうです。
代わりに楽しめるスコッチたち
「マクリームーア10年がもう買えない…」と嘆く方に向けて、似たテイストを持つ銘柄をいくつか紹介します。
- アラン シェリーカスク
ピートは無いものの、同じアラン蒸溜所の繊細な果実味が味わえる一本。マクリームーア10年の甘やかさを感じたい人に。 - ハイランドパーク12年
同じくアイランズ系のライトピーテッドモルト。スモーキーながらハチミツとオークの調和が美しい。 - タリスカー10年
より潮気のあるピート感を求めるならこちら。マクリームーア10年よりパワフルだが、共通する“海とスモーク”の個性が魅力。
こうしたボトルを試しながら、自分の好みのピート感を探してみるのも楽しい時間です。
終売ウイスキーをどう楽しむか
「終売」という言葉を聞くと、どうしても“もう手に入らない”という印象が強くなります。
しかし、ウイスキーの魅力は「その瞬間にしか味わえない一期一会の個性」にあります。
もし手元にマクリームーア10年を持っているなら、特別な日に少しずつ開けるのも良いでしょう。
もしくは飲まずに大切に保管しておくのも一つの選択です。
熟成ウイスキーは、時間と共に価値も味わいも変化します。
まとめ:マクリームーア10年 終売の今、味を記憶に残そう
「マクリームーア10年 終売」は、ただのニュースではありません。
アラン島の蒸溜所が次の時代へ進むための節目であり、ウイスキー文化の移り変わりを象徴する出来事でもあります。
柔らかなピート香とフルーティーさが融合したあの味わいは、今でも多くのファンの記憶に残っています。
再販や後継モデルが登場する日を期待しつつ、今は手元の1本をじっくりと楽しむ――それが、マクリームーア10年への最高の敬意かもしれません。

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