「東京水が販売終了したらしい」と聞いて、驚いた人も多いのではないでしょうか。東京都が自信を持って発信していたあのペットボトルの「東京水」。都庁や東京駅などで見かけたことがある方も多いはずです。
この記事では、「東京水」がなぜ販売終了になったのか、その理由や背景、そして今後の再販や代替となる取り組みについて詳しく解説します。
東京水とは?東京都がつくった“水道水のブランド”
まずは「東京水」とは何だったのかをおさらいしておきましょう。
「東京水」は、東京都水道局が販売していたペットボトル入りの飲料水です。中身は特別な天然水やミネラルウォーターではなく、東京都の高度浄水処理を施した水道水。
つまり、「東京の水道水はここまでおいしい」ということを広く知ってもらうために作られた“広報用の水”だったのです。
販売が始まったのは2000年代前半。都庁の売店や東京駅、観光地などで販売されていました。透明なボトルに「TOKYO WATER」と書かれたラベルは印象的で、東京土産としても人気を集めました。
その後、東京都の水道水の品質向上とともに、東京水は“東京の水のシンボル”として一定の存在感を保ってきました。
東京水が販売終了したのはいつ?実は2021年で販売が終わっていた
そんな「東京水」ですが、実はすでに2021年頃に販売が終了しています。
東京都水道局の公式ページでは明確に「販売終了」と明記されていませんが、複数の公的資料や報道では、2021年10月をもってペットボトル製品としての製造販売を終えたことが確認されています。
2021年といえば、東京オリンピック・パラリンピックが開催された年。大会期間中、東京都は選手村や報道センターなどで「東京水」を活用した給水ステーションを設置しており、ブランドの最終的な活躍の場になったとも言えます。
大会後、販売は自然と終了。都庁の売店などでも在庫限りで姿を消しました。
東京水が販売終了した理由①:広報目的を果たしたから
東京水が販売終了に至った背景には、いくつかの要因が重なっています。
まず最も大きいのは「本来の目的を果たした」という点です。
東京水は、そもそも東京都の水道水が「安全でおいしい」ということをPRするために作られた商品でした。かつては「東京の水はまずい」と言われていた時代もありましたが、高度浄水処理の導入で水質が劇的に改善。
その成果をアピールするために、わかりやすい形として“ボトル入りの東京の水”が登場したのです。
それから約15年。
「東京の水はおいしい」と感じる人が増え、各メディアでも“水道水とミネラルウォーターの差がない”と紹介されるようになりました。
広報としての役割を十分に果たした結果、ペットボトル製品としての役目を終えたと判断されたと考えられます。
東京水が販売終了した理由②:販売コストと採算の問題
もう一つの理由は、コスト面の課題です。
東京水は民間企業ではなく、東京都水道局が製造・販売していました。ボトル製造、流通、保管、販売管理など、すべてにコストがかかります。
しかも販売場所は限られており、都庁・東京駅・観光地などごく一部。
コンビニやスーパーで広く販売されていたわけではなかったため、売上規模も限定的でした。
つまり、商品としての採算が合いにくかったのです。
広報目的の商品に過剰なコストをかけ続けることは、行政としても難しかったのでしょう。
東京都の予算配分を考えると、より実効性のある広報や給水活動へシフトする方が合理的だったと考えられます。
東京水が販売終了した理由③:環境への配慮と時代の変化
販売終了の背景には、環境問題も影響しています。
ペットボトル削減やプラスチックごみ対策が進む中、自治体が自らペットボトル飲料を販売し続けることへの疑問も生まれました。
東京都は2030年に向けて「プラスチック削減」「リユース容器促進」を掲げています。
そんな中で“ペットボトル入りの水道水”を販売し続けるのは、時代の流れにそぐわないと判断されたのでしょう。
環境配慮を重視する社会の中で、「販売をやめること」自体がメッセージになる時代です。
東京水が販売終了した理由④:市場環境の変化と競合の増加
さらに、市場全体の変化もあります。
ミネラルウォーター市場はここ10年で爆発的に拡大し、各社が差別化を競うようになりました。富士山系、南アルプス、軟水・硬水など、ブランド戦略が進み、選択肢が増えた結果、消費者はあえて「水道水のボトル」を買う理由を見失っていきました。
一方で、東京都の水道水自体が高品質であるため、家庭でも「そのまま飲む」という人が増加。
つまり、東京水が掲げた“水道水を飲む文化の普及”というミッションは、市場の成熟とともに自然に実現していったのです。
その結果、東京水という商品を販売し続ける必要性は低下していったと言えます。
東京水は今どうなっている?給水ステーションでブランド継続中
販売自体は終了しましたが、「東京水」というブランドは今も生きています。
現在、東京都水道局は都内各地に「Tokyo Water Drinking Station(東京水 給水ステーション)」を設置。
公園や観光施設、イベント会場などで、誰でも無料で東京の水を給水できるようになっています。
ペットボトル販売から「持参ボトルに給水できるスタイル」への転換。
これはまさに、環境配慮とブランド継続を両立させた新しい形です。
また、スマートフォンアプリ「東京都水道局アプリ」でも、最寄りの給水ステーションを検索できるようになっています。
オリンピック後もこの取り組みは拡大しており、都内だけで900カ所以上に設置されていると報じられています。
「東京水」は“商品”から“サービス”へと進化したと言ってよいでしょう。
東京水の再販予定はある?今後の可能性を考える
「また東京水を買いたい」という声は今も少なくありません。
しかし、現時点で東京都から再販の発表は出ていません。
販売を復活させる動きよりも、「持続可能な給水」という方向に力を入れているのが現状です。
ただし、イベントや都のキャンペーンなどで、特別仕様のボトルが限定配布されることはあります。
たとえば、防災訓練や観光PRイベントなどで、東京水のラベルが付いたボトルが配られるケースも。
これは「販売」ではなく、「広報・啓発活動の一環」として扱われています。
つまり、一般販売の再開は期待しにくいものの、“復活イベント”のような形で出会える可能性は残っています。
東京水販売終了の背景から見える東京都の新しい挑戦
東京水が販売終了したのは、単なる「終わり」ではなく、ひとつの転換点でした。
ペットボトル販売という形式を終え、より環境に優しい形で「東京の水を広める」方向へ進化しているのです。
これは、自治体としての姿勢の変化でもあります。
「売る」ではなく「伝える」。
「消費」ではなく「循環」。
東京水が残したものは、ただの水ではなく、東京のインフラと環境の未来を考えるきっかけでした。
東京水が販売終了したのはなぜ?まとめと今後の展望
改めて整理すると、「東京水」が販売終了した理由は次の通りです。
- 広報目的が達成され、商品としての役割を終えた
- コストや採算面で継続が難しかった
- 環境配慮の観点からペットボトル販売を見直した
- 市場や消費者のニーズが変化した
- ブランドを給水ステーションという形で継続させた
東京都水道局は、東京の水の品質を今後も発信していく方針です。
東京水という名前は、これからも“東京の水道水の象徴”として生き続けるでしょう。
もしまたどこかで、あのシンプルなラベルのボトルに出会えたら、それはきっと特別な瞬間になるはずです。
