「ネリザ軟膏が販売終了になった」と聞いて、困っている方も多いのではないでしょうか。
痔の痛みや炎症、かゆみに使っていた人にとっては、急に薬がなくなるのは不安なものです。この記事では、ネリザ軟膏の特徴や、代わりに使える薬、そして症状に合わせた使い分けの考え方を、薬剤師の視点でわかりやすく解説します。
ネリザ軟膏とはどんな薬?
ネリザ軟膏は、**ジフルコルトロン吉草酸エステル(ステロイド)とリドカイン(局所麻酔薬)**を配合した外用薬です。
この2つの成分が組み合わさることで、「炎症を抑える」「痛みやかゆみを鎮める」という二つの作用を同時に発揮します。
主に、痔核(いぼ痔)や裂肛、肛門周囲の炎症などに使用されていました。
ステロイドは強めのランクに分類され、急性期の強い炎症や痛みに対して短期間で効果を発揮する一方で、長期使用すると皮膚の萎縮や感染リスクが上がるため、医師の指導のもとで使う必要があります。
このネリザ軟膏は現在販売中止が発表されており、経過措置期間を過ぎると医療機関でも処方が難しくなる見込みです。そのため、今後は他の薬への切り替えが必要になっています。
ネリザ軟膏の代替品候補
ネリザ軟膏と同じように「痔の痛み・炎症・出血・かゆみ」を改善する薬はいくつかあります。ここでは代表的な代替薬を紹介します。
1. ヘモレックス軟膏
ステロイド(ヒドロコルチゾン)と抗菌成分(フラジオマイシン)が配合された軟膏です。
炎症を抑えるだけでなく、細菌の増殖を防ぐ効果もあり、感染や出血を伴う痔にも使われます。
ネリザ軟膏と同様に短期間の使用が基本で、炎症や痛みが強いときに適しています。
2. 強力ポステリザン軟膏
ステロイドを含み、血流を改善して傷の治りを助けるタイプの薬です。
ネリザ軟膏ほど強いステロイドではありませんが、痔核や裂肛の炎症・出血に幅広く使われます。
症状が落ち着くまで使い、その後はよりマイルドな薬に切り替える流れが一般的です。
3. プロクトセディル軟膏
ステロイドに加えて、抗生物質や麻酔成分も含まれており、ネリザ軟膏に近い構成です。
痛み・炎症・感染・かゆみといった複合的な症状に対応でき、肛門疾患の急性期に広く使用されています。
ネリザ軟膏からの切り替えとして、最もバランスの取れた選択肢の一つです。
ステロイドを含まない代替薬もある
強い炎症が落ち着いたあとの再発予防や、長期的なケアを目的とする場合には、ステロイドを含まない軟膏を選ぶこともあります。
1. ボラザG軟膏
ステロイドを含まず、抗炎症・血行促進・保湿作用がある薬です。
副作用リスクが低く、慢性期や軽症時に向いています。
「痛みは引いたけど違和感が残る」「再発を防ぎたい」という場合に適しています。
2. 白色ワセリン系・保湿系の軟膏
白色ワセリンなど、刺激が少なく皮膚を保護する軟膏も、症状が軽い時や回復期には有効です。
皮膚のバリア機能を保つことで、再発やかゆみを防ぐ効果があります。
ドラッグストアで購入できる市販品も多く、日常のケアに取り入れやすいのが特徴です。
使い分けのポイント
ネリザ軟膏の代替薬を選ぶ際は、症状の程度と目的を明確にすることが大切です。
- 強い痛み・炎症・出血があるとき
→ ステロイドを含む薬(ヘモレックス軟膏、プロクトセディル軟膏、強力ポステリザン軟膏)
短期間だけ使用し、症状が落ち着いたら切り替える。 - 軽いかゆみ・違和感・再発予防が目的のとき
→ ステロイドなしの薬(ボラザG軟膏や保湿系軟膏)
長期使用にも向いており、安全性が高い。 - 感染や膿が見られる場合
→ 抗菌成分を含む薬(ヘモレックス軟膏、プロクトセディル軟膏)
清潔を保ちつつ使用し、悪化する場合は早めに受診を。
薬の使い分けは「強い薬を短く」「弱い薬を長く」が基本です。
自己判断で長期使用するのではなく、医師や薬剤師と相談しながら調整していくことが大切です。
ネリザ軟膏が販売終了になった理由
製造販売元の情報によると、ネリザ軟膏は流通・供給の安定性や市場動向を踏まえ、販売終了が決定されたとされています。
成分の安全性や有効性に問題があったわけではなく、医薬品の入れ替えや新製品への移行といった背景によるものです。
そのため、同様の効果をもつ他の薬に切り替えても、適切に管理すれば症状のコントロールは十分可能です。
代替薬に切り替えるときの注意点
- 同じ成分ではないことを理解する
ネリザ軟膏と完全に同一の組成をもつ薬はありません。
そのため、薬によっては効果の出方や使用感が少し異なる場合があります。 - 症状に合わせて選ぶ
「痛みが主」「かゆみが主」「出血がある」など、症状の中心によって最適な薬は変わります。
自己判断せず、医師・薬剤師に相談して選びましょう。 - ステロイドの強さを意識する
ネリザ軟膏は比較的強力なステロイドを含んでいたため、代替薬を使う際も、急に強さを変えると違和感が出ることがあります。
段階的に切り替えるのが安心です。 - 長期使用は避ける
ステロイド入りの軟膏は、長く使うと皮膚が薄くなったり、感染しやすくなることがあります。
数日〜2週間を目安にし、改善しない場合は医師に再相談を。
市販薬で代用できるケースもある?
症状が軽い場合や、以前使っていたネリザ軟膏を手に入れられない場合、市販の痔用軟膏を利用することも可能です。
ただし、成分や強さは医療用と異なり、即効性はやや劣る傾向にあります。
ボラザG軟膏や白色ワセリン系の保湿軟膏はドラッグストアでも入手可能で、日常的なケアには向いています。
一方で、強い痛みや出血があるときは、自己判断で市販薬に頼るより、医師の診断を受けて適切な治療を受けることが大切です。
ネリザ軟膏の代替品まとめ
ネリザ軟膏が使えなくなっても、症状に応じて選べる薬は多数あります。
強い炎症や痛みにはヘモレックス軟膏・プロクトセディル軟膏・強力ポステリザン軟膏など、
軽症や再発予防にはボラザG軟膏や白色ワセリン系軟膏が有効です。
薬の選択は「今の症状」と「使用期間」で決めるのが基本。
ステロイドは短期集中で使い、治まったらマイルドな薬に切り替えましょう。
販売終了は不安かもしれませんが、正しい知識と使い分けを知っていれば心配はいりません。
これまでネリザ軟膏でケアしていた方も、症状に合わせて適切な代替薬を選び、安心して治療を続けていきましょう。
ネリザ軟膏の代替品を選ぶときに大切なこと
ネリザ軟膏の販売終了をきっかけに、今後はより自分に合った薬を選ぶ時代になっています。
「どんな薬がいいか迷う」「副作用が心配」などの不安があるときは、薬剤師や医師に相談してみてください。
強い薬を短く、弱い薬を長く使うこと。
そして、症状が軽いうちにきちんとケアすることが、再発防止の第一歩です。
ネリザ軟膏の代替品を上手に使い分けながら、無理なく快適な生活を取り戻していきましょう。
