「ねえ、最近、王将で餃子頼んだら、結構値上げされてるよね?」
「そうそう!前はもっと手軽な値段だった気がするんだけど…」
こんな会話、最近していませんか?もはや日本の食文化の一部とも言える「餃子の王将」ですが、実はここ数年で立て続けに価格改定が行われているんです。
店頭でメニューを見て、ちょっと驚いたという方も多いはず。
今回は、「王将の値上げって、いったいなぜ?他の店と比べてどうなの?」という疑問に、最新の情報をもとにお答えしていきます。
王将の値上げはなぜ?気になる理由を深掘り
まずは、なぜ王将がここまで頻繁に値上げをしているのか、その背景を見ていきましょう。
理由は主に3つ。これは業界全体に当てはまることですが、特に顕著に表れています。
- 原材料費の高騰が止まらない
王将の命である餃子の皮や具、ラーメンの麺、炒飯の米や野菜。これらを形作る小麦粉、豚肉、キャベツ、ニラ、食用油などの価格が世界的に上昇し続けています。仕入れコストが上がれば、どうしても価格に転嫁せざるを得ません。 - 人件費や光熱費の上昇
全国的な人手不足の影響で、アルバイトやスタッフの時給は上昇傾向にあります。また、店舗でガスや電気を大量に使う王将のような飲食店は、光熱費の値上がりにも大きく影響を受けます。夏のエアコン代、厨房のガス代など、私たちが思っている以上にランニングコストはかかっているのです。 - 物流コストの増大
全国に店舗を展開する王将にとって、食材を工場から各店舗に届ける配送コストの増加も無視できません。燃料費の高騰が、店頭の価格を押し上げる一因となっています。
つまり王将の値上げは、単に「儲けを増やしたい」からではなく、世界的な経済状況とコスト増に、やむを得ず対応している側面が強いと言えるでしょう。
具体的にいくら上がった?王将メニューの価格変遷
では、実際に私たちの財布にどれくらい影響があるのでしょうか。ここ数年で、代表的なメニューがどのように変わったのか、具体的に見てみましょう。
例:看板メニュー「餃子(6個入り)」の価格の推移(西日本エリア、税込み価格)
- 約3年前:264円
- 現在:341円
価格差:77円。これは約30%の値上げになります。
「たった77円?」と思うかもしれませんが、定期的に通う人にとっては無視できない差ですよね。しかも、これはあくまで一例。2025年2月には一部メニューで最大165円の値上げが実施されました。
大切なのは、この値上げが一度きりではなく、2022年5月からの約3年間で5回も実施されているという点です。短い期間に繰り返し価格が変われば、お客様の「高い」という実感はより強くなるはずです。
王将だけじゃない?他チェーンの価格と戦略を比較
「王将だけが特別に高いの?」という疑問が出てくると思います。結論から言うと、値上げは業界全体の流れです。しかし、その戦略や結果にはそれぞれ特徴があります。
回転寿司チェーンの場合
例えば、スシローなどの回転寿司は、1皿100円からの価格帯が生命線でした。値上げに踏み切った後、売上や客数が減少したという報告もあり、低価格を売りにしていた業態ほど、値上げによるお客様の反応はシビアだと言えます。
他の中華チェーンの場合
日高屋など、王将と直接競合するチェーンも同様に値上げを行っています。価格帯そのものは現在、王将と大きくは変わらないかもしれません。違いは、王将が「店内飲食」に強くこだわる一方で、他チェーンはデリバリーやランチ営業など、付加価値や販路で差別化を図っている点にあるでしょう。
カレーチェーンの場合
CoCo壱番屋に代表されるカレーチェーンも値上げの波に。こちらは「価格」そのものより、豊富な辛さやトッピングによる「カスタマイズ性」が価値の中心です。値上げ後もその強みを保てているかが、客数を維持する鍵となっています。
この比較から分かるのは、王将の値上げが目立つ理由のひとつが、「かつての圧倒的な安さとコスパのイメージ」が強すぎたことではないでしょうか。イメージとのギャップが、現在の「値上げしすぎ」感を助長している面はありそうです。
値上げしたのに売上は過去最高!その矛盾を解くカギ
ここで最も興味深い事実があります。それは、値上げを重ねているにもかかわらず、王将の業績が非常に好調だということです。
2025年3月期の決算では、売上高が過去最高の1110億円、営業利益も15年ぶりの高水準を記録しました。これはどういうことなのでしょう?
その秘密は、王将のとある大胆な戦略転換にあります。それは、「店内で食事を提供することに、全てを集中する」という選択です。
近年、Uber Eatsなどのデリバリー需要が爆発的に伸び、多くの飲食店がデリバリーに注力しました。しかし王将は、むしろこの流れに逆行するかのように、「店内飲食」へのこだわりを強化したのです。
具体的な数字を見ると、2026年3月期のデータで、デリバリーを除く「店内飲食」の客数は前年より増加しています。一方、デリバリー客は減少。全客数に占める店内飲食の割合は、実に83% にものぼります。
なぜこの戦略が成功したのでしょうか?
それは、店内で提供される「焼きたての餃子の香りと音」「熱々の料理」「一貫した接客」 という、王将ならではの体験価値を守り、高めることに成功したからです。値上げ分は、単なるコスト補填だけでなく、スタッフの教育や待遇改善、食材・調理法の見直しといった「品質」に再投資されています。
王将を訪れるお客様は、単に「安いから」ではなく、「あの店で食べる、あの雰囲気と味を楽しみたいから」という理由で足を運んでいる。値上げは、その確かな価値に対する、正当な対価の調整だったと言えるかもしれません。
客は本当に離れた?データから見える意外な真実
「でも、値上げしたらお客さん減るんじゃないの?」というのは当然の疑問です。
確かに、直営店の客数全体で見ると、ごく僅かですが減少しています。しかし、これを詳細に見ると重要な事実が浮かび上がります。
減少の主な原因は、デリバリーやテイクアウトを利用する客層です。先ほどお話しした「店内集中戦略」の結果、この分野の客数は確かに減りました。
しかし肝心の店内で食事をするお客様の数は、逆に増えているのです。
さらに、王将には強力なファンクラブ「ぎょうざ倶楽部」があります。その会員数は132万人を突破し、過去最高を更新し続けています。ポイント還元や会員限定情報で、リピーターをがっちり囲い込む仕組みが機能しています。
これは何を意味するでしょうか?
一時的な「安さ」に飛びつくお客様は減ったかもしれません。しかし、王将の味と体験を本当に理解し、愛してくれる「ロイヤルな顧客」は、値上げ後も確実に通い続けているということです。一部の客離れはあったとしても、確固たるファン層が会社を支え、過去最高の利益を生み出しているのです。
王将の値上げがしすぎなのか、答えを出そう
さて、ここまで一緒に見てきました。果たして王将の値上げは「しすぎ」なのでしょうか?
確かに、約3年間で5回の値上げは頻度が高いと言えるでしょう。昔ながらのファンから見れば、「あの手軽な王将」のイメージからは確かに遠ざかっているかもしれません。他チェーンとの比較でも、かつてのような圧倒的な安さはなくなったと言えます。
しかし一方で、値上げという現実と正面から向き合い、その理由をコスト増だけに求めなかったことが、むしろ成功を生んだとも言えます。値上げで得た分をスタッフと品質に投資し、「店内で食べる体験」という核となる価値を磨き上げた。その結果、値上げに納得し、支持してくれる顧客を確実に増やし、業績を伸ばすことに成功しました。
「安ければそれでいい」という時代は、少しずつ終わりを告げつつあるのかもしれません。私たち消費者は、ただ値段の数字だけでなく、「その値段に、どれだけの価値と物語があるのか」 を、より敏感に見極める時代に入っているのです。
王将の値上げは、一方的に批判するべき「しすぎ」な行為ではなく、変化する経済環境の中で、生き残りと成長をかけた「選択の結果」 として捉えるべきでしょう。次にメニューを見上げて「また上がってる…」と思った時、その値段の裏側にある、素材、人、そして体験の価値にも、ちょっとだけ想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
かつての王将の価格は、もう戻ってこないかもしれません。しかし、新しい価値基準を持った王将が、これからも私たちの身近な存在であり続けるかどうかは、私たち一人ひとりの選択にかかっているのです。
