「ロックミシンを手に入れたけれど、糸の種類が多すぎて何を買えばいいかわからない……」
「普通のミシン糸じゃダメなの? 番手って数字が大きいほうが太いの?」
初めてロックミシンに触れるとき、誰もが最初にぶつかる壁が「糸選び」です。家庭用ミシンとは違い、ロックミシンは一度に3本、4本と大量の糸を使います。適当に選んでしまうと、糸調子が合わずに何度も縫い直したり、せっかく作った服の端処理がゴロゴロして肌当たりが悪くなったりすることも。
でも、安心してください。ロックミシンの糸選びには、明確な「正解のパターン」があります。この記事では、初心者の方が迷わずに済むよう、糸の種類から番手の使い分け、さらにはコスパの良い揃え方まで、プロの視点を交えて分かりやすく解説します。
ロックミシンの糸選びで最初に知っておきたい「3つの種類」
ロックミシンで使われる糸は、大きく分けて3種類あります。これらを適材適所で使い分けることが、既製品のような美しい仕上がりへの第一歩です。
万能選手の「スパン糸」
ロックミシンにおいて最も一般的で、まず最初に揃えるべきなのがポリエステル100%の「スパン糸」です。表面にわずかな毛羽立ちがあり、生地によく馴染むのが特徴。
布端のほつれ止め(縁かがり)から、ニット生地の縫い合わせまで幅広く対応できます。家庭用ミシンでよく使われるシャッペスパンもスパン糸の一種ですが、ロックミシン用はより長巻きでコストパフォーマンスに優れたものが主流です。
滑らかさと光沢の「フィラメント糸」
フィラメント糸は、長い繊維を束ねて作られた糸で、光沢がありツルツルとした質感が特徴です。テトロン糸などがこれに当たります。
非常に滑りが良いため、薄い生地を縫う際や、糸をできるだけ目立たせたくない場合に重宝します。ただし、初心者の方にとっては、スパン糸に比べて糸調子の微調整が少し難しいと感じることもあるかもしれません。
伸縮性の要「ウーリー糸」
ナイロン100%で、ゴムのようにビヨーンと伸びるのが「ウーリー糸」です。糸自体にボリュームがあり、ふわふわとした質感を持っています。
主にニット生地の縫い合わせや、布端を細かく埋める「巻ロック」に使用します。この糸を使うことで、生地の伸びに糸がついていけるようになり、ブチッと糸が切れるトラブルを防ぐことができます。
迷ったらこれ!「番手(太さ)」の標準的な使い分け術
糸のラベルに書かれている「90番」「60番」という数字。これは糸の太さを表す「番手」です。ロックミシンでは、この数字のルールを正しく理解しておく必要があります。
数字が大きいほど「細い」というルール
ミシン糸の世界では、数字が大きくなるほど糸は細くなります。ロックミシンで主に使用するのは、主に以下の2パターンです。
- 90番(細め): ロックミシンの標準的な太さです。主に「縁かがり(端処理)」に使います。
- 60番(普通): 90番より少し太く、強度があります。主に「地縫い(縫い合わせ)」に使います。
縁かがりには「90番」がベストな理由
「大は小を兼ねるから、全部60番でいいんじゃない?」と思うかもしれません。しかし、ロックミシンにおいて、縁かがりに太い糸を使うのはあまりおすすめしません。
なぜなら、ロックミシンは糸を複雑に交差させて布端を包むため、糸が太いと縫い代がボコッと厚くなってしまうからです。表から見たときに縫い代の形が浮き出てしまう「アタリ」を防ぐためにも、縁かがりには細めの90番スパン糸を選びましょう。
縫い合わせ(地縫い)には「60番」を
2本針4本糸のロックミシンを使って、Tシャツなどのニット生地を直接縫い合わせる場合は、強度が求められます。この時は、針糸に60番のスパン糸を使用するのがセオリーです。
もし90番で縫い合わせてしまうと、着用時の負荷に耐えきれず、縫い目が開いたり糸が切れたりするリスクが高まります。
作るもの別!失敗しない糸の組み合わせパターン
具体的に何を縫うときに、どの糸をどこにセットすればいいのか。代表的な3つのケースを紹介します。
1. 布帛(伸びない生地)の端処理
ブラウスやスカートなど、一般的な生地の端がほつれないようにする「縁かがり」の場合。
- 針糸:90番スパン糸
- 上ルーパー糸:90番スパン糸
- 下ルーパー糸:90番スパン糸すべて90番で統一すれば、軽やかで邪魔にならない仕上がりになります。
2. ニット生地の縫い合わせ
Tシャツやカットソーなど、伸縮性のある生地を縫う場合。
- 針糸(2本):60番スパン糸
- 上ルーパー糸:ウーリー糸(または60番スパン糸)
- 下ルーパー糸:ウーリー糸(または60番スパン糸)ルーパー糸にウーリー糸を使うと、縫い目が柔らかくなり、肌に当たってもチクチクしにくくなります。また、生地を伸ばしたときの追従性が格段にアップします。
3. フリルやハンカチの「巻ロック」
布端を巻き込みながら、密なステッチで飾る「巻ロック」の場合。
- 針糸:90番スパン糸
- 上ルーパー糸:ウーリー糸
- 下ルーパー糸:90番スパン糸(またはウーリー糸)上ルーパーにウーリー糸を持ってくるのが最大のポイントです。ウーリー糸のボリュームが布端を隙間なく埋めてくれるので、サテンリボンのような美しいエッジが完成します。
賢い色の揃え方:全色買う必要はありません!
ロックミシンは糸を4本使うため、生地の色に合わせて全色4本ずつ揃えようとすると、保管場所もお金も大変なことになります。プロやベテラン勢は、以下のような工夫で賢く運用しています。
究極の「馴染ませカラー」3選
まずは、以下の3色を「大巻き(1500m〜3000m)」で揃えてみてください。これだけで市販の生地の8割以上はカバーできます。
- 薄いグレー: 白、水色、淡いピンクなど、明るい色の生地に驚くほど馴染みます。白糸よりも影に溶け込みやすいため、汎用性ナンバーワンです。
- 濃いグレー(チャコール): 黒、紺、茶、カーキなど、濃い色の生地に万能です。真っ黒な糸よりも「糸だけ浮く」ことが少なく、自然に仕上がります。
- 生成り(アイボリー): ベージュや茶系、温かみのある色の生地に最適です。
針糸だけ色を合わせるテクニック
どうしても糸の色が目立ってしまうのが心配なときは、「左側の針糸」だけ生地の色に近づけてみてください。
ロックミシンの構造上、表から最も見えやすいのは左針の糸です。ルーパー糸(端を包んでいる糸)は、意外と色が多少違っても気にならないものです。
初心者が陥りやすい!糸に関する注意点とトラブル対策
いざ糸を選んで縫い始めても、なぜか上手くいかない……。そんなときにチェックすべきポイントをまとめました。
安すぎる糸には要注意
ネット通販などで極端に安く売られている大巻き糸の中には、糸の太さが不均一だったり、大量の「糸カス」が出たりするものがあります。
糸カスがミシンの内部に溜まると、故障の原因や糸調子不良に直結します。キングスパンのような、国内メーカー(フジックスなど)の信頼できるブランドを選ぶのが、結果としてミシンを長持ちさせる秘訣です。
ウーリー糸とエアスルー(自動糸通し)の相性
最近のロックミシンには、空気の力で糸を通す「エアスルー機能」が搭載されているモデルが多いですが、ウーリー糸はそのままでは通りにくいことがあります。
その場合は、通常の細いスパン糸を30cmほど切り、輪っか状にしてウーリー糸を引っ掛け、先にスパン糸を空気で通してから引き込む「呼び糸」の手法を使いましょう。無理に空気で送り込もうとすると故障の元になるので注意が必要です。
糸の保管場所にも気を配って
糸は日光(紫外線)や湿気に弱いです。窓際に放置しておくと、糸が劣化してプチプチ切れやすくなります。
できるだけ引き出しの中や、光の当たらないケースに入れて保管するようにしましょう。
まとめ:ロックミシンの糸はどう選ぶ?初心者でも失敗しない種類と番手の使い分け術
いかがでしたか? 最後に、大切なポイントをおさらいしましょう。
まず、最初に揃えるべきは**「90番のスパン糸」**です。これを薄いグレー、濃いグレー、生成りの3色で揃えるだけで、あなたのソーイングライフは劇的にスムーズになります。
ニットを本格的に縫いたいなら、針糸用に**「60番のスパン糸」と、ルーパー用に「ウーリー糸」**を買い足しましょう。この組み合わせさえマスターすれば、既製品に負けないクオリティの作品が作れるようになります。
ロックミシンは、正しく糸を選んであげれば、それに応えてくれる素晴らしい道具です。最初は難しく感じるかもしれませんが、一度ルールを覚えてしまえば、もう手放せなくなるはず。
さあ、あなたも最適な糸を選んで、ストレスフリーなロックミシン生活を楽しんでくださいね。
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