「アベラワーが終売になったらしい」と聞いて、驚いた人も多いのではないでしょうか。スコットランド・スペイサイドを代表するシングルモルトとして長く愛されてきたアベラワー。濃厚なシェリー香と深みのある味わいは、日本のウイスキーファンの中でも根強い人気があります。
しかし近年、酒販店やSNSで「10年が終売」「見かけなくなった」という声が相次ぎ、話題となっています。今回は、その真相と背景、そして今後の再販や代替モデルの可能性について詳しく見ていきましょう。
アベラワーとは？スペイサイドの実力派蒸留所
アベラワー蒸溜所は、1879年にジェームズ・フレミング氏によって創業された歴史ある蒸溜所です。場所はスコットランド・スペイサイド地方のアベラワー村。スペイ川の支流・ロウアー川の水を仕込み水に使い、伝統的なポットスチルでゆっくりと蒸留しています。
フルーティーでオーキー、そしてシェリー樽由来の芳醇な甘みが特徴。スペイサイドらしいエレガントさに加えて、しっかりとしたボディを感じられるのがアベラワーの魅力です。世界的な評価も高く、12年・16年・18年といった年数表記ボトルのほか、カスクストレングスの「アベラワー アブーナ」シリーズも人気を集めています。
アベラワー終売の噂は本当？まずは現状を整理
では、実際に「アベラワーは終売なのか？」という点について整理してみましょう。
結論から言うと、アベラワー というブランドそのものが終売になったわけではありません。 ただし、従来の一部モデルが日本市場から姿を消したのは事実です。
特に指摘されているのが「アベラワー10年」。
かつての定番として長く親しまれてきましたが、多くの酒販店が「終売」「在庫限り」と明記し、正規ルートでの販売はほぼ終了しています。海外通販サイトでも “Discontinued” の表記が見られ、世界的にも生産・流通が終了したモデルとみてよいでしょう。
一方で、「アベラワー12年 ダブルカスクマチュアード」や「アベラワー16年」「アベラワー18年」などは引き続き製造・販売されており、アベラワー自体が消えたわけではありません。つまり、ブランド全体ではなく、特定の年数表記モデルが終売となった というのが正確な状況です。
なぜ終売となったのか？背景にある4つの理由
1. 原酒の不足と需要増加
スコッチ全体で深刻化しているのが、熟成年数付きウイスキーの原酒不足です。
アベラワーも世界的な人気上昇に伴い、10年以上熟成の原酒確保が難しくなったと考えられます。長期熟成は単純に時間がかかるため、供給が追いつかなくなり、若い原酒主体のノンエイジや短熟モデルへと切り替える流れが進んでいます。
2. ラインナップの刷新・ブランド再編
ペルノ・リカール傘下のチヴァーズ・ブラザーズは、アベラワーを含む複数ブランドのラインナップ再構築を進めています。
その一環として、従来の「10年」を終了させ、よりリッチな味わいの「アベラワー12年 ダブルカスクマチュアード」を新たなスタンダードに据えたとみられます。
ダブルカスクはバーボン樽とシェリー樽の原酒をブレンドしており、より深みと厚みを強調した仕様です。
3. 日本での輸入体制の変化
国内ではペルノ・リカール・ジャパンが正規輸入を担っていますが、流通体制の見直しによって取り扱いラインが整理された可能性があります。
特定年数表記の終売やリニューアルは、輸入契約や販売戦略の変更による影響も大きいと言われています。
4. 市場価格の高騰と流通制限
近年、アベラワーを含むシェリー系シングルモルトの人気が高まり、価格が上昇しています。特に旧仕様ボトルはプレミア化が進み、正規販売ルートでの流通が減少。結果として、「終売＝公式ルートで買えない」という状態が広まったと考えられます。
終売モデル一覧：どのボトルが対象か？
現在、終売もしくは流通終了が確認されている主なモデルは以下の通りです。
- アベラワー10年（スタンダードモデル／旧仕様）
- アベラワー15年 セレクトカスクリザーブ
- アベラワー 100 Proof（限定仕様）
これらは国内外の酒販サイトで「終売」「Discontinued」と明記されており、新品での入手はほぼ困難です。ただし、並行輸入やオークションでは一定数流通しており、価格は発売当時の数倍に達するケースもあります。
再販・代替モデルの可能性は？
終売となった10年モデルの“後継”として登場したのが「アベラワー12年 ダブルカスクマチュアード」です。
味わいの方向性は共通しつつ、より厚みと深みを増した仕上がりで、現行の定番ラインとして位置付けられています。
つまり、メーカーとしては10年を「廃止」ではなく「進化」させたと捉えるのが自然です。
さらに、カスクストレングスの「アベラワー アブーナ」シリーズも継続的にリリースされており、アベラワーらしさを追求するファンにはこちらも根強い人気があります。
再販というよりも、「新スタンダードへの置き換え」と考えたほうが現実的でしょう。
ただし、ウイスキー市場全体が在庫調整期にあるため、今後10年モデルが復活する可能性は低く、再販があるとしても特別限定版などの形になると予想されます。
日本市場での入手状況と注意点
現在、日本で流通しているアベラワーの多くは並行輸入品です。
Amazonや一部の酒販サイトではまだ10年モデルが出品されていますが、公式輸入ではなく、価格も高騰傾向。
購入時は「正規品」か「並行品」かを確認することが重要です。
また、終売モデルを購入する際は保管状態にも注意が必要です。古いボトルはコルク劣化や液面低下が起きている場合があるため、信頼できる販売元を選ぶのが安全です。
アベラワーの魅力は今も健在
「終売」と聞くと寂しく感じるかもしれませんが、アベラワーというブランド自体はむしろ進化を続けています。
ダブルカスク12年は、シェリーとバーボンのバランスが絶妙で、旧10年に比べて香りの広がりと余韻がより深くなりました。
また、アベラワー16年やアベラワー18年といった上位モデル、カスクストレングス仕様のアベラワー アブーナなども高い評価を得ています。
特にアブーナはバッチごとに個性が異なり、濃厚で甘やかなシェリー香が存分に楽しめる一本として人気が衰えません。
つまり「終売」という言葉に惑わされる必要はなく、今もなおアベラワーらしい世界観を味わうことは十分に可能です。
終売の真相とこれから
アベラワー終売の噂は、ブランド消滅ではなく、旧モデルから新モデルへの移行を意味していました。
原酒事情や世界的な需要増、ラインナップ再編といった背景を考えると、今後も限定品や新樽仕様のボトルが登場する可能性はあります。
むしろ、10年モデルが終売したことで、12年以降のボトルの個性がより際立ち、ブランド価値が再評価されている印象さえあります。
「昔のアベラワーが好きだった」というファンも、「新しいアベラワーを味わってみたい」というファンも、それぞれの楽しみ方ができるのがこのブランドの魅力です。
アベラワー終売の真相と再販の可能性まとめ
・アベラワー自体は終売していない
・10年、15年など一部旧仕様モデルが販売終了
・理由は原酒不足・ブランド再編・流通体制の見直し
・後継として「アベラワー12年 ダブルカスクマチュアード」が登場
・今後の再販は低いが、限定復活の可能性はある
アベラワーは、時代とともに形を変えながらも“スペイサイドの香り高いウイスキー”という本質を失っていません。
「10年が買えなくなったから終わり」ではなく、「12年からまた新しい物語が始まる」と考えるのが、今のアベラワーを楽しむうえでの正しい見方でしょう。
ウイスキーの世界では、終売が悲報であると同時に、次なる新章の幕開けでもあります。
アベラワーもきっと、その例に漏れないはずです。
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