「シャルトリューズ ヴェールが終売になったらしい」と聞いて、驚いた方も多いのではないでしょうか。
長い歴史を誇るフランスの修道院生まれのハーブリキュールが、突然店頭から姿を消した――。
この記事では、その背景にある“本当の理由”と、今後どうすれば手に入れられるのか、代わりになるリキュールはあるのかを詳しくお話しします。
シャルトリューズ ヴェールとはどんなお酒?
まずは簡単におさらいから。
「シャルトリューズ(Chartreuse)」は、フランス南東部の山岳地帯で生まれた伝統的なリキュール。17世紀にカルトジオ修道会の修道士たちが、130種類以上のハーブや植物を秘伝のレシピでブレンドして生み出したといわれています。
その中でも「ヴェール(Verte=緑)」は、アルコール度数55%と高めで、ミントやスパイス、シナモンのような複雑な香りが特徴。
「シャルトリューズ グリーン」として世界中のバーテンダーから愛され、カクテル「ラストワード」などの定番材料としても有名です。
日本ではバーだけでなく、家庭でも愛飲するファンが増えつつありました。そんななかでの「終売」報道――当然、衝撃が広がりました。
「終売」の噂は本当?現在の流通状況
結論から言うと、「完全な生産終了」ではありません。
ただし、日本国内では“実質的に終売”の状態です。
ヨドバシ・ドット・コムなどの大手通販ではすでに「販売を終了しました」と明記。
一部の酒販店でも「終売品」「在庫限り」と表記されており、店頭在庫やネットショップの在庫も急速に減少しています。
ではなぜ、世界的に愛されるお酒が、こんなにも急に手に入らなくなってしまったのでしょうか。
修道士たちの決断──増産しないという哲学
実は、この背景にはとても独特な理由があります。
シャルトリューズを造っているのは企業ではなく、フランス・グルノーブル近郊の修道院に属する修道士たちです。
彼らは「祈りと静寂の生活」を何よりも大切にしており、ビジネスとしての拡大よりも、伝統と信仰を守ることを優先しています。
そのため、世界的な人気が高まっても「生産量を増やさない」という決断を下しました。
実際、2023年には修道士から各国の輸入業者に向けて、「持続可能な量でのみ製造を続ける」という旨の書簡が出されたと報じられています。
つまり、製造自体は続いているものの、世界的な出荷数を意図的に制限しているのです。
世界的な“シャルトリューズ不足”が進行中
修道士たちのこうした方針に加え、近年のカクテルブームが需要を急増させました。
特にアメリカやヨーロッパでは、クラフトカクテルのトレンドに乗ってシャルトリューズの人気が再燃。
結果、需要に対して供給が追いつかず、世界的な“Chartreuse shortage(シャルトリューズ不足)”が発生しています。
現地のバーでは「入荷制限」「1グラス限定」といった対応も見られ、海外の愛好家も入手に苦労している状態です。
日本では輸入代理店の割当量がさらに少ないため、一般消費者が手に入れるのはほぼ不可能になっています。
「終売」でも完全に消えたわけではない
ここで強調したいのは、“終売”という言葉の誤解です。
メーカーが「もう造らない」と発表したわけではなく、「限られた量しか造らない」ために市場から消えているというのが真相です。
実際、フランス国内では出荷が続いており、一部の専門店やバーにはわずかに流通しています。
ただし、割当制によってごく少量しか供給されないため、一般流通まで回らないのが現状です。
つまり、日本では「事実上の終売」。
世界的には「供給制限下での継続生産」といえるでしょう。
日本での入手はどうすればいい?
ここからは、現実的な入手方法を紹介します。
ただし、いずれも在庫状況や価格の変動が激しいため、自己責任での購入が前提になります。
- 並行輸入品を探す
海外通販サイトや並行輸入業者が在庫を持っている場合があります。
ただし、送料・関税・品質管理には注意が必要です。 - フリマ・オークションをチェック
メルカリやヤフオクでは、未開封品がプレミア価格で出品されています。
偽物や劣化品も出回るため、出品者の評価や保存状態をよく確認することが大切です。 - バーや専門店で味わう
高級バーや老舗のカクテルバーでは、まだ少量の在庫を持っていることがあります。
家でボトルを開ける代わりに、プロの手で作られたカクテルとして体験するのもおすすめです。
「代替品」はある?近い味わいのリキュールたち
シャルトリューズ ヴェールと完全に同じ味わいを再現できるものは、正直ありません。
それほど唯一無二の存在です。
しかし、カクテルや香味の方向性を楽しむ代替として、以下のリキュールが候補に挙げられます。
- シャルトリューズ ジョーヌ(黄)
同ブランドの黄色ボトル。度数は40%前後で、甘く穏やかな風味。
ヴェールよりもマイルドなので、カクテルに使うときは量をやや増やすのがコツ。 - ジェネピ
フランス・サヴォワ地方のハーブリキュール。アルテミシア属の植物を使用しており、シャルトリューズに通じる山岳系の香りが楽しめます。 - ビッテルやアルペスなどのクラフト系リキュール
欧州では“Chartreuse代替”として注目を集めており、ハーブやスパイスの配合が似た製品も登場しています。
もちろん「代替」とはいえ、あくまで“似た方向性の体験”と考えるのが自然です。
それぞれの個性を楽しみながら、新しいハーブリキュールの世界を広げてみても良いでしょう。
保管・コレクション目的での注意点
もし手元にシャルトリューズ ヴェールのボトルがあるなら、それはかなり貴重な一本です。
未開封なら直射日光を避け、涼しい場所で立てて保管してください。
開封後は香りが徐々に変化するため、できるだけ早く飲み切るのが理想です。
また、転売目的での購入はトラブルのもとになるため注意が必要です。
酒類の販売や転売には免許が必要であり、法律上の制限があります。
あくまで個人の嗜み、コレクションとして楽しむ範囲に留めましょう。
今後、再販の可能性はあるのか?
現時点では、修道会から「増産再開」「再販」といった発表は出ていません。
ただし、過去にも一時的な供給停止から復活した時期がありました。
完全に消滅するとは限りません。
とはいえ、修道士たちの哲学が変わらない限り、生産量が劇的に増えることは期待しにくいでしょう。
したがって、見つけたときに購入しておくのが賢明です。
今後は「希少なお酒として大切に楽しむ」「似た系統のリキュールで代用する」という二つの道が現実的な選択肢になりそうです。
シャルトリューズ ヴェール終売の真相と、今後の楽しみ方
まとめると、シャルトリューズ ヴェールの“終売”は「製造終了」ではなく、「供給を抑えた結果としての品薄」が真相です。
修道士たちが信念を貫く限り、このリキュールは“作られ続けるが、手に入りにくい”存在であり続けるでしょう。
もし今後、バーでその鮮やかな緑色の一杯を見つけたら――。
それは奇跡のような出会いです。
ゆっくりと香りを楽しみ、長い歴史と修道士たちの想いに思いを馳せながら味わってみてください。
そして、手に入らないからこそ、他のハーブリキュールにも目を向けてみる。
そんな新しい出会いも、きっとお酒の楽しみ方を広げてくれるはずです。

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