「バカルディ151が終売になった」と聞いて、驚いた人も多いのではないでしょうか。
75.5%という圧倒的なアルコール度数を誇るラムとして、バーシーンやパーティーの象徴でもあったこの一本。
なぜあの伝説のラムが姿を消してしまったのか――その背景には、単なる販売終了以上の“事情”がありました。ここでは、終売の真相をわかりやすく解説していきます。
伝説的ラム「バカルディ151」とはどんなお酒だったのか
バカルディ151(BACARDÍ 151)は、アルコール度数75.5%、いわゆる「オーバープルーフラム」に分類される超高アルコール酒です。
通常のラムが40%前後であることを考えると、その度数は異常なまでに高く、「151」という数字はアメリカ式プルーフ表示(75.5%×2)に由来しています。
その強烈なアルコール度数とパンチのある香り、燃えるような刺激で知られ、カクテルのアクセントや炎を使った演出「フレーミングショット」「フランベ」にも多用されてきました。
一度口にした人なら、あの強さを決して忘れられないはずです。
バカルディ151が終売になったのはいつ?
公式に生産終了が確認されたのは2016年。
バカルディ社の公式サイトでも「2016年に生産を終了した」と明記されています。
つまり、今市場に出回っているものはすべて在庫限り。日本国内でもすでに正規輸入は終了しており、購入できるのは並行輸入や個人保管品など、限られたルートだけです。
終売から数年が経った今でも、「また復活してほしい」「幻のラム」といった声が多く見られます。
なぜここまで惜しまれながら、151は市場から姿を消したのでしょうか。
終売の理由①:アルコール度数の高さが招いた“危険性”
最も有力な理由は、やはりそのアルコール度数の高さ。
75.5%という数字は、ただ強いだけではなく「可燃性が非常に高い」という問題を抱えていました。
実際、バカルディ151のボトルには「火をつけて使わないでください(Do not use this product for flaming dishes or drinks)」という警告ラベルが貼られており、瓶口には「火炎抑制キャップ(flame arrester)」まで装着されていました。
つまり、メーカー自身が“危険性を前提とした設計”をしていたのです。
それでも一部のユーザーがフレーミングショットなどに使用し、火傷や火災事故が発生した事例が海外で報告されています。
中には訴訟に発展したケースもあり、メーカー側が「リスク管理上これ以上販売を続けられない」と判断した可能性は極めて高いでしょう。
終売の理由②:ブランドイメージの転換
もう一つ見逃せないのが、ブランド戦略の変化です。
バカルディといえば世界最大級のラムブランド。
近年は「プレミアム」「上質」「カクテルに合う大人のラム」といったイメージを前面に押し出しています。
その中で、「炎をつける」「度数が異常に高い」といったイメージを持つ151は、ブランドの方向性とズレ始めていました。
実際、終売発表時にバカルディ公式が発したメッセージには「他のプレミアムラムを楽しんでほしい」という文言がありました。
つまり、151の終了は“ブランドの成熟”を象徴する動きでもあったのです。
終売の理由③:法規制・流通の壁
アルコール度数が高すぎる酒類は、国や地域によっては販売や輸送に特別な制限が設けられています。
たとえば可燃物として扱われるため、保管や運搬に消防法上の配慮が必要になったり、輸入時の保険や税制が複雑になったりします。
こうした流通・法的なハードルも、販売を難しくした要因のひとつと考えられます。
特に日本では、高度数スピリッツの取り扱いには慎重な業者が多く、継続的な輸入コストや管理リスクを考えれば、ビジネス的に成立しにくい側面があったと言えるでしょう。
終売の理由④:採算性と需要の問題
一部では、「採算が取れなかった」という声もあります。
高アルコール酒は消費者層が限られ、飲み方も限定的。
フレーミング用途やカクテルの演出用としてしか使われないため、販売数量が少なかったと推測されます。
加えて、製造・流通・保険・警告表示といったコストを考えれば、利益率が低い製品であった可能性も高いです。
リスクに見合う売上が得られない以上、撤退は自然な判断だったのかもしれません。
終売による影響と現在の入手状況
2016年以降、バカルディ151はコレクターズアイテム化しました。
在庫が減るにつれて価格は上昇し、ネットオークションや輸入ショップでは数倍の値段で取引されることもあります。
ただし、保存状態や真贋(本物かどうか)に注意が必要です。高アルコールゆえに揮発や味の変化が起こることもあります。
一方で、バー業界では代替となるオーバープルーフラムを使う動きも広がっています。
「レモンハート151」や「デメララ・オーバープルーフ」など、同程度の度数を持つ製品が代わりに採用されるケースも増えています。
しかし、バカルディ151特有の味わいと香りを完全に再現するものは今のところ存在しません。
“伝説”として語り継がれる理由
終売から年月が経っても、バカルディ151が語り継がれているのは、そのインパクトがあまりにも強かったからです。
燃えるようなショット、圧倒的な香り、そして「危険なほど強い」というイメージ。
このラムは単なる酒ではなく、一種の文化的象徴でした。
バカルディ社自身も「伝説(Legend)」という言葉でこの製品を紹介しています。
つまり、終売で幕を閉じたのではなく、“神話化された存在”として今もファンの記憶に生き続けているのです。
バカルディ151の終売は、時代の流れの象徴
近年は「飲みすぎない文化」「安全で上質な酒を少量楽しむ」というトレンドが強まっています。
そうした時代の中で、バカルディ151のような極端な高アルコール酒は、ある意味で“時代の終わり”を象徴していました。
一方で、強烈な個性と伝説的存在感は今もなおファンの心を掴んで離しません。
もし現在、正規品を見つけたとしても、それは間違いなく貴重な一本。
開封するか、飾っておくか――その選択さえも特別な体験になるはずです。
バカルディ151終売の真相と今後の展望
結論として、「バカルディ151の終売」は、アルコール度数の高さによるリスクが最大の要因だったと考えられます。
そこにブランドイメージの刷新、法規制、採算性など複数の要素が重なり、2016年の生産終了へと至りました。
現在、バカルディ社はより洗練されたプレミアムラムへと軸を移し、151は“伝説としての役割”を果たした形です。
しかし、その存在感は今なお多くのファンに語り継がれています。
安全性や法令への配慮が進む中で、あのような「危うい魅力を持つ酒」が再び登場する可能性は低いでしょう。
それでも、バカルディ151が残した記憶は、ラムというお酒の多様性と自由さを象徴するもの。
“危険で美しい伝説のラム”――それが、バカルディ151が今もなお愛され続ける理由なのです。

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