「ピコンリキュールが終売したらしい」──そんな声を耳にした人もいるのではないでしょうか。
オレンジの香りとほろ苦さが絶妙なフランスのアペリティフ「ピコン(アメール・ピコン)」は、長年にわたり世界中のバーテンダーやリキュール愛好家に親しまれてきました。
しかし近年、日本ではこのピコンを見かけることがほとんどなくなっています。この記事では、終売の真相や背景、そして代わりに楽しめるおすすめのリキュールについて詳しく紹介します。
ピコンリキュールとは?独特の“ビターオレンジ”が魅力
まず、ピコンリキュールとはどんなお酒だったのかをおさらいしておきましょう。
正式名称は「アメール・ピコン(Amer Picon)」。19世紀、フランス軍人のガエタン・ピコンがアルジェリア駐在中に考案したとされるアペリティフ・リキュールです。
主な特徴は、オレンジの果皮をスピリッツに漬け込み、りんどう根などのハーブを加えた苦味と甘味のバランス。
柑橘の爽やかさとハーブの深みが共存し、ソーダ割りやビール割り(ピコン・ビール)、さらにはハイボールベースなどにも使われてきました。
「大人のほろ苦さ」を感じられる味わいで、食前酒やカクテル素材として愛されたリキュールです。
ピコンリキュールは本当に終売?現状と流通の実態
結論から言うと、**ピコンリキュール**は日本国内ではほぼ終売状態にあります。
酒販店サイトでは「メーカー製造分なくなり次第終売です」との記載があり、再入荷の予定もないケースが多く確認されています。
さらに、一部の輸入元でも取り扱い終了となっており、在庫が市場に残っている分で販売が終わる見込みとされています。
SNSでも「終売ボトルのピコンソーダ」「もう手に入らないリキュール」といった投稿が見られ、すでに市場在庫しか存在しない状況です。
一部の専門店やオークションなどでは購入できることもありますが、価格が高騰している場合や、並行輸入品・長期保存ボトルの可能性もあるため、購入時には注意が必要です。
なぜピコンリキュールは終売になったのか?その背景を読み解く
ピコンが姿を消した理由には、いくつかの要因が考えられます。
公式に「製造終了」を発表している情報は確認されていませんが、複数の要素が重なって“実質的な終売”に至ったと見られます。
1. 採算性の低下と製造コストの上昇
輸入酒市場全体で共通する課題として、原料費や物流費の高騰があります。
特にピコンのようにニッチなカテゴリのリキュールは、大量生産が難しく、利益率の面で継続が難しくなったと推測されます。
また、ビター系アペリティフは一般家庭向けの需要が少なく、業務用途が中心のため販売数量も限られていました。
2. カクテル文化の変化
近年は、クラフトスピリッツやアマーロ(イタリアのハーブリキュール)など、新しいトレンドが注目されています。
「苦味のあるお酒」という分野では競合が増え、ピコンのような伝統ブランドは影が薄くなってしまった面もあるでしょう。
特に若年層では、軽やかでフルーティーなリキュールやノンアルコールアペリティフへの人気が高まっています。
3. 輸入・流通の難しさ
日本国内での酒類輸入には、成分表示や酒税区分などの登録が必要です。
こうした手続きの負担やコスト増により、輸入元が取り扱いを終了するケースも増えています。
「メーカー製造分がなくなり次第終売」という文言は、輸入元が再輸入を行わない方針を示している可能性があります。
ピコンリキュールが消えたあとに残る“文化的価値”
ピコンは単なるリキュール以上の存在でもありました。
それは、フランスの食文化やカクテル史の一部として根付いていたからです。
「ピコン・ビール(Picon Bière)」という飲み方は、フランス東部のアルザス地方では定番のアペリティフ。
ビールに数滴加えるだけで、甘苦く香る独特の風味が楽しめました。
このように、ピコンは“日常の一杯”にさりげなく存在していたのです。
日本ではそこまで浸透しなかったものの、バーテンダーの間では重宝される素材でした。
終売となった今、バーのメニューから quietly 消えたカクテルも少なくありません。
「昔飲んだピコンソーダの味が忘れられない」と語るファンがいるのも頷けます。
代わりに楽しめるおすすめのリキュール5選
ピコンが手に入らなくなったとはいえ、似たような風味を楽しめるリキュールはいくつか存在します。
ここでは、オレンジの香りやハーブの苦味を持つ“代替候補”を紹介します。
1. アペロール
イタリア発祥の軽やかなアペリティフ。
ピコンよりもアルコール度数が低く、甘みがやや強めですが、オレンジとハーブのバランスが近く、ソーダ割りでも楽しめます。
2. カンパリ
苦味をしっかり感じたい人には王道の選択。
カンパリソーダやネグローニなど定番カクテルにも使え、ピコンに比べてややスパイシーな印象があります。
3. グラン・マルニエ
オレンジリキュールの定番。
ブランデーをベースにしているためコクと香りが深く、甘味とビターオレンジの風味を上品に味わえます。
4. サレール
りんどう根を使用したフランスの伝統的なアペリティフ。
ピコンと同じ“ビター&ハーブ”系統で、独特の土っぽい苦味が特徴。アメリ風カクテルにも合います。
5. アマーロ・ノニーノ
イタリアのハーブリキュールで、深い苦味と甘い余韻が魅力。
ピコンほどのオレンジ香はありませんが、ハーブの複雑さを楽しみたい人におすすめです。
いずれも「ピコンの完全な代わり」ではありませんが、味の方向性が似ており、カクテルや食前酒として十分に満足できる選択肢です。
在庫を探すときの注意点
もしどうしてもピコンを手に入れたい場合は、以下の点に注意しましょう。
- 「在庫限り」や「旧ボトル」と書かれた商品は長期保管品の可能性があります。保存状態に留意しましょう。
- 並行輸入品は正規輸入品とラベルや風味が異なる場合があります。
- SNSやフリマサイトでの個人間売買はトラブルになりやすいため避けたほうが安全です。
購入する際は、信頼できる専門店や公式ルートで取り扱っているかを確認するのが安心です。
終売は悲しいけれど、“ピコンの系譜”は残っている
ピコンリキュールが終売となったのは確かに残念ですが、
その味わいの系譜──ビターオレンジ、ハーブ、アペリティフという文化──は今も多くのリキュールに受け継がれています。
アペロールやアマーロ・ノニーノのように、現代の嗜好に合わせて進化した“新しい苦味”を試してみるのも面白いでしょう。
お気に入りのグラスにソーダを注ぎ、オレンジピールを添えて。
その瞬間にきっと、どこかで味わったピコンの余韻を感じられるはずです。
ピコンリキュール 終売のまとめ
- ピコンリキュールは日本では実質的に終売状態。
- メーカー製造分終了・在庫限りの販売が確認されている。
- 背景には需要低下、輸入コスト、文化的変化などが関係。
- 代替リキュールとしてアペロール、カンパリ、グラン・マルニエなどが有力。
- ピコンの“苦味と香り”は今も多くのリキュールに息づいている。
終売というニュースに寂しさを覚える一方で、
この出来事は私たちが改めて“お酒の文化”を味わい直すきっかけになるのかもしれません。

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