「マイヤーズラム、もう売ってないの?」──そんな声を最近よく耳にします。
長年、バーや製菓業界で愛されてきた定番のダークラムが、店頭から姿を消しつつある。
この記事では、マイヤーズラム終売の理由や背景を分かりやすく解説しつつ、代わりに楽しめるおすすめのラムを紹介します。
ジャマイカ生まれの名ラム「マイヤーズラム」とは
マイヤーズラム(Myers’s Rum)は、1879年にジャマイカで誕生した歴史あるラムブランドです。
原料にはジャマイカ産の純粋な糖蜜(モラセス)が使われ、ポットスチルと連続式蒸留機を併用して蒸留。
その後、白オーク樽で最長4年熟成され、複雑で濃厚な味わいが生まれます。
香りは黒糖やバニラ、樽由来のスモーキーな甘さ。
一口飲めば、コクの深さと厚みのある甘みが広がり、まさに「ジャマイカの大地」を感じる味。
その濃厚さから、カクテルのベースはもちろん、アイスやお菓子に香りづけとして使われることも多い名銘柄でした。
日本市場での「終売」アナウンスに広がる衝撃
そんなマイヤーズラムが「終売になったらしい」と話題になったのは、2020年頃。
当時、輸入元だったキリンビールが安定供給の問題を理由に販売を終了したとされ、酒販店やSNSでも「マイヤーズラムが消える」と騒然となりました。
さらに2024年には、製菓材料を扱う宏洋株式会社が「製菓用マイヤーズラム」の休売を発表。
同社の案内によると、「価格面・供給面で継続が困難」とのこと。
つまり、輸入コストや物流体制の変化など、ビジネス的な側面からも販売継続が難しくなったということです。
これにより、一般小売向けだけでなく、製菓用途でも入手が難しくなる可能性が浮上。
バー関係者やお菓子作りを愛する人たちの間で「本当に終売なの?」「今のうちに買っておこう」という声が広がりました。
マイヤーズラム終売の理由を深掘り
1. 供給の安定性が崩れた
コロナ禍以降、世界的な物流網の混乱が続き、ラムの原料やボトリング工程に遅延が発生。
ジャマイカから日本への輸送ルートも安定せず、「一定量を確保できない状態」が続いていたようです。
2. 輸入コストと為替変動の影響
近年の円安や燃料費高騰は、海外酒の輸入コストに直撃。
「安価なダークラム」として親しまれてきたマイヤーズラムも、価格を維持できなくなった可能性があります。
結果として、「この価格では採算が合わない」と判断されたのかもしれません。
3. ブランドの所有と流通構造の変化
実はマイヤーズラムは、2018年に米国のサゼラック社(Sazerac Company)にブランド譲渡されています。
これにより、世界的な販売体制や戦略が見直され、日本での輸入ルートも再編。
旧流通体制のまま継続することが難しくなった、という見方もあります。
4. 市場の変化とカテゴリー再編
日本ではウイスキーやクラフトジンが人気を集め、ラム市場は縮小傾向。
売上規模が減少した結果、優先的に輸入を維持する理由が薄れてしまったのも現実的な要因です。
「終売」とはいえ、完全消滅ではない?
「マイヤーズラムはもう買えないの?」という質問も多いですが、実は完全に消えたわけではありません。
一部の在庫を抱える酒販店や、並行輸入ルートではまだ購入できるケースもあります。
また、製菓業界向けの製品を一部在庫として持っている業者もあるようです。
ただし、流通量は明らかに減っており、価格も上昇傾向。
「今後再販されるか」については、現時点で確実な情報はなく、再び安定して入手できるようになる可能性は低そうです。
マイヤーズラムが愛された理由
マイヤーズラムが長く支持されてきたのには、理由があります。
- 味の安定感
ジャマイカ産ラム特有の厚みある甘さと香ばしさが、どのボトルでもブレずに楽しめる。 - 用途の幅広さ
ラムコークやプランターズパンチといったカクテルから、バニラアイスやガトーショコラへの香り付けまで万能。 - 価格と品質のバランス
手頃な価格で本格的な味わいを楽しめる「コスパの良いラム」として多くのバーで常備されていました。
こうした魅力があるからこそ、「終売」というニュースは多くの人にとってショックだったのです。
代わりに楽しめるおすすめのラム
マイヤーズラムが手に入りにくくなった今でも、似た味わいを楽しめるラムはあります。
いくつかの代表的な銘柄を紹介します。
1. アップルトン・エステート シグネチャーブレンド(ジャマイカ)
同じジャマイカ産で、マイヤーズラムに通じる黒糖やバニラの香りが特徴。
ややスムースで華やかな印象があり、カクテルにも使いやすい。
2. キャプテンモルガン ブラック
スパイスを感じる甘い香りとまろやかなコク。
マイヤーズラムより軽めですが、トロピカルカクテルとの相性が抜群。
3. プランテーション オリジナルダーク
複数のカリブ海産ラムをブレンドした1本。
深みのある香りと濃厚な甘さが特徴で、マイヤーズラム好きにも好まれる味わいです。
4. オールド・モンク(インド)
独特の甘香ばしさと重厚なボディ。
価格も比較的手頃で、コクのあるラムコークにぴったり。
これらのラムはいずれも日本国内で比較的入手しやすく、マイヤーズラムの代替として満足度が高いと評判です。
終売ブランドとしての価値と今後の展望
マイヤーズラムのように、長年愛された定番が姿を消すと、その価値はむしろ高まります。
「懐かしさ」や「思い出の味」が付加価値となり、コレクターズボトルとして扱われる可能性もあります。
実際に一部の通販サイトでは、終売後に価格が上昇しているケースも見られます。
また、ブランドを所有するサゼラック社は世界的にプレミアム化を進めており、今後新シリーズとしてリニューアル再登場する可能性もゼロではありません。
かつての「大衆向けマイヤーズラム」が「高品質・限定ライン」として帰ってくる日がくるかもしれません。
ファンとしてできること
もしまだ店頭やネットでマイヤーズラムを見かけたら、迷わず確保しておくのが賢明です。
終売後の在庫は少なく、再入荷の見込みも薄いため、数年後には手に入りづらくなるでしょう。
また、マイヤーズラムに代わるお気に入りのラムを探すのも楽しい時間です。
「これに似た香りだ」「こっちの方がすっきりしている」など、比較しながら自分の定番を見つけるのも一つの楽しみ方。
ラムは奥深く、ブランドごとに個性がまるで違います。
まとめ:マイヤーズラム終売の理由と、これからの楽しみ方
マイヤーズラム終売の背景には、供給不安や価格高騰、流通体制の変化といった複合的な理由がありました。
けれども、その存在が残した“ジャマイカの香り”と“濃厚な余韻”は、今も多くの人の記憶に残っています。
マイヤーズラムが終売になっても、ラムの魅力は終わりません。
アップルトン・エステート シグネチャーブレンド、プランテーション オリジナルダーク、キャプテンモルガン ブラック……。
世界にはまだまだ多彩なラムがあり、それぞれが新しい発見をくれるはずです。
お気に入りの1本を見つけて、今日もゆっくりとグラスを傾けてみてください。
それはきっと、マイヤーズラムへの最高のオマージュになるでしょう。

コメント