2024年初頭、長年マツダのフラッグシップセダンとして親しまれてきた「マツダ6」が、ついに国内で終売を迎えました。かつて「アテンザ」として登場し、走りの良さと上質さを両立していたこのモデルが、なぜ日本市場から姿を消すことになったのか。そして今後、後継モデルは登場するのか——。この記事では、その背景と最新情報をじっくりと掘り下げていきます。
マツダ6の終売が正式発表されたのはいつ?
マツダが「マツダ6の国内向け生産を終了する」と発表したのは、2024年1月19日。
公式リリースでは「2024年4月中旬をもって国内仕様の生産を終了」と明言され、同年4月15日には実際に国内向け車両の生産が打ち切られました。
もともとマツダ6は2002年に「アテンザ」として誕生し、スポーティな走りとスタイリッシュなデザインで人気を集めていました。2019年のマイナーチェンジで世界統一名称「MAZDA6」に改名され、以後もセダンとワゴンの2タイプで展開されていましたが、ついに22年の歴史に幕を下ろすことになります。
累計販売台数は22万台を超え、マツダを象徴する存在であったことは間違いありません。それだけに、今回の終売決定は多くのファンにとって衝撃的なニュースでした。
なぜマツダ6は国内で販売終了となったのか?
終売の背景には、いくつもの理由が複雑に絡み合っています。大きく分けて4つのポイントで整理してみましょう。
1. セダン・ワゴン需要の縮小
日本市場では、ここ数年でSUV人気が急上昇しています。
その一方で、従来主流だったセダンやステーションワゴンは年々販売台数を減らし、メーカー各社がラインナップを整理する動きが目立っています。マツダ6も例外ではなく、「市場のニーズに合わない」という現実がありました。
かつての「アテンザワゴン」のような上質なステーションワゴンは一定の支持を集めていたものの、ファミリー層はSUVやミニバンを選び、若年層はコンパクトSUVへと流れたことで、セダン/ワゴン市場の縮小は避けられなかったといえます。
2. 電動化・環境規制への対応
近年、世界的に電動化の波が押し寄せています。マツダも「2030年までにEVを本格導入」という方針を掲げており、既存のガソリン・ディーゼル主体の車種は再構築を迫られています。
マツダ6もクリーンディーゼルなどの選択肢を用意していましたが、電動化対応という観点では今後の規制を見据えた再設計が必要になっていました。
現行のマツダ6を無理に延命させるより、新アーキテクチャを採用した次世代モデルへ移行する——そんな判断が下されたとみられています。
3. モデルライフの長期化
現行マツダ6は2012年の発売から10年以上が経過していました。
2019年に商品改良こそ行われたものの、プラットフォーム自体は初期から大きく変わっていません。
他メーカーが相次いで新世代モデルを投入する中、マツダ6はやや古さが否めず、販売台数も伸び悩んでいました。
モデルサイクルが長期化すれば、生産コストや部品調達も非効率になります。一定のタイミングで「一区切り」をつけるのは自然な流れだったといえるでしょう。
4. ブランド戦略の再構築
マツダは現在、SUVラインナップの強化に注力しています。
「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」など、ラージ商品群を中心とした新世代SUVを展開し、これが新しいブランドの柱となっています。
結果的に、セダン・ワゴンの存在感は薄れ、経営資源を集中させる上でマツダ6の整理は避けられなかったとみられます。
ただし、マツダは「今後セダンを出さないわけではない」とコメントしており、完全な撤退というわけではありません。あくまで“次の時代に向けた一時的な整理”と捉えるのが妥当です。
マツダ6の歴史を振り返る
2002年に「アテンザ」として登場した初代モデルは、当時のマツダデザイン革命を象徴する存在でした。スポーティで流麗なフォルムと、しなやかで応答性の高いハンドリング。
「走る歓び(人馬一体)」を掲げたマツダの理念を体現する1台として、多くのファンを魅了しました。
2代目(2008年)では静粛性や内装品質を向上させ、3代目(2012年)では「魂動デザイン」と「スカイアクティブ技術」を全面採用。
そして2019年、車名を世界統一の「MAZDA6」へ変更し、上質なグランドツアラーへと進化しました。
約22年にわたる歴史の中で、マツダ6は常に「大人のスポーティセダン」という立ち位置を貫き続けたといえるでしょう。
終売後のマツダ6を取り巻く状況
現在、国内のマツダディーラーでは在庫車の販売が終了に近づいています。すでに受注を締め切った店舗も多く、事実上の“新車購入は困難”な状況です。
中古車市場では、終売発表以降、状態の良い個体を求めるユーザーが増加傾向にあり、人気グレードでは相場が上昇しています。
特に「マツダ6 ワゴン 25S Lパッケージ」など上位グレードは、今後プレミア化する可能性もあるでしょう。
一方、整備やパーツ供給に関しては、メーカーが一定期間は対応を継続するため、急に困ることはありません。ただし長期保有を考える場合、今後の部品供給状況についてはディーラーへの確認が安心です。
マツダ6の後継モデル「マツダ6e/EZ-6」とは?
気になるのは「後継モデルが登場するのか?」という点。
実はすでに、マツダが開発中の次世代セダン「マツダ6e(海外名:EZ-6)」が2024年4月の北京モーターショーで世界初公開されています。
このモデルは、中国市場向けに先行投入される電動セダンで、長安マツダとの協業で生産されます。
パワートレインにはバッテリーEVとレンジエクステンダー(増程型EV)の2種類が設定され、航続距離は最大550km前後と発表されています。
デザインは魂動デザインを継承しながらも、より未来的で滑らかなシルエットに刷新されており、まさに「次世代のマツダ6」と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
日本国内での販売については、まだ正式発表はありません。
ただ、マツダが掲げる中期計画では、今後電動車ラインナップを世界展開する方針が明記されているため、将来的に右ハンドル仕様が投入される可能性は高いと見られています。
終売は寂しいが、マツダの挑戦は続く
長年親しまれてきたマツダ6の終売は、確かに一つの時代の終わりを意味します。
しかし同時に、それは新しいマツダのスタートでもあります。
SUV群を中心に再構築されるラインナップ、「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」のような新世代モデル、さらにはEVやPHEVの拡充。
マツダは単なる“電動化”ではなく、「走る歓び」を次の時代にどう引き継ぐかというテーマに真正面から取り組んでいます。
マツダ6という名のセダンは一旦幕を下ろしますが、そのDNAは次世代モデルへと確実に受け継がれていくでしょう。
かつてアテンザが時代を変えたように、マツダ6eもまた、新しい走りの価値を提示してくれるはずです。
マツダ6 終売まとめ
・マツダ6(旧アテンザ)は2024年4月をもって国内生産終了
・終売理由はセダン需要減少・電動化対応・モデルライフの長期化・ブランド再編など
・後継として「マツダ6e/EZ-6」がすでに海外発表済み
・日本市場への導入は未定だが、将来的な可能性は高い
マツダ6は終わっても、マツダの“走る歓び”は終わらない。
時代が変わっても、あのしなやかなドライビングフィールを愛した人々の記憶に、マツダ6という名前はきっと残り続けるでしょう。

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