「最近スーパーで素滴しぼりを見かけなくなったけど、終売したの？」
そんな声がSNSや口コミで増えています。果汁100％の贅沢なチューハイとして人気だったこのシリーズ、実は2023年秋に正式に製造終了が発表されました。なぜ愛された商品が姿を消したのか――その背景を丁寧に追っていきます。
素滴しぼりとは？果汁100％の“贅沢チューハイ”
「素滴しぼり」は、富永貿易が販売していた果汁100％の缶チューハイシリーズです。
ラインナップはピンクグレープフルーツ・白ぶどう・りんご・オレンジ・パイナップル・ミックスフルーツなど、どれも果実の味わいをそのまま楽しめる構成でした。甘味料や保存料を使わず、濃縮還元果汁だけで作られた自然派のお酒として、発売当初から「ジュースみたいに飲みやすい」「果汁感がすごい」と好評を集めていました。
アルコール度数は4％前後。強すぎず、軽すぎない“ちょうどいい”飲み心地が特徴でした。
特に女性層やお酒が苦手な人たちの間で人気があり、「晩酌というよりデザート感覚で飲めるチューハイ」として親しまれていたのです。
公式発表による終売の事実
そんな素滴しぼりですが、2023年10月1日付で富永貿易が公式に「素滴しぼり果汁100％チューハイシリーズ製造終了」を発表しました。
対象はシリーズ全商品で、在庫がなくなり次第販売終了という形です。
SNS上でも「最近どこにも売っていない」「終売なの知らなかった」と驚きの声が多く上がりました。店頭でも順次姿を消し、現在は一部の通販サイトで在庫限りの販売が残るのみとなっています。
終売の背景① 市場が“低アルコール化”にシフト
まず大きな理由として挙げられるのが、RTD市場（缶チューハイ市場）全体の低アルコール化です。
近年、「適度な飲酒」「気軽に楽しむお酒」という価値観が広まり、3％前後の低アルコール飲料やノンアルコール系商品が急速に伸びています。
富永貿易の公式発表でも、「RTD市場では低アルコールカテゴリーの成長が続いており、その動向を踏まえて新ブランドを展開する」と明記されています。
つまり、4％というアルコール度数の素滴しぼりは“やや強い”と感じる層が増え、市場の流れに合わなくなっていたのです。
「軽く飲みたい」「お酒よりジュースに近いものがいい」というニーズが高まり、果汁100％チューハイも“より軽やかさ”が求められる時代になりました。
終売の背景② 後継ブランド「100％カジューハイ」の登場
素滴しぼりの製造終了とほぼ同時に、富永貿易は新ブランド100％カジューハイを発売しました。
発売日は2023年9月19日。アルコール度数を3％に下げ、デザインを刷新し、より現代の嗜好に寄せた果汁100％チューハイとして再スタートを切っています。
「果汁100％」というコンセプト自体はそのままに、“よりライトに・よりカジュアルに”楽しめる仕様へ。
この新ブランドこそ、実質的な**素滴しぼりの後継シリーズ**です。
つまり、「終売＝撤退」ではなく、「ブランドリニューアルによる再編成」だったというのが実情。
人気ブランドのDNAは残しつつ、より広い層に届く形へと生まれ変わったのです。
終売の背景③ 果汁100％ゆえのコストと流通課題
もう一つの要因として考えられるのが、果汁100％という高コスト構造です。
一般的な缶チューハイは果汁5～20％ほど。100％使用は極めて珍しく、原料価格や仕入れリスクが大きくなります。
近年は果汁原料の高騰や物流コストの上昇が続いており、特に輸入果汁を使う飲料メーカーにとっては大きな負担となっています。
果汁を贅沢に使う製品ほど採算が取りづらく、定価を維持するのが難しい状況になっていた可能性があります。
加えて、スーパーやコンビニの棚では「低価格・多フレーバー型チューハイ」が主流。
こだわり系の高果汁チューハイはスペースを確保しにくく、販売効率の面からも厳しかったと思われます。
終売の背景④ 飲酒シーンの変化と健康志向
コロナ禍以降、“家飲み文化”が定着する一方で、健康意識の高まりも進みました。
「平日は飲まない」「アルコールを控える」「糖質・添加物が気になる」といった価値観が一般化しつつあります。
素滴しぼりは「果汁100％」「添加物不使用」という強みを持っていましたが、同時に“甘いジュース感”が強く、「お酒として飲みたい層」からは敬遠されることもありました。
果汁が多い分、糖分も自然に高くなるため、「ヘルシー志向」への対応が難しかった面もあるでしょう。
結果として、ライトな味わいと低糖質を両立する新商品へシフトした方が、より多くの層に受け入れられると判断されたと考えられます。
終売後の反応：「また飲みたい」「残念」の声
SNSや掲示板では、素滴しぼりの終売を惜しむ声が相次ぎました。
「素滴しぼりのオレンジ味が本当に好きだったのに…」
「知らないうちに終売してた。あの果汁感が忘れられない」
「100％カジューハイも美味しいけど、素滴しぼりの濃さが恋しい」
果汁感の強さ、ナチュラルな甘み、すっきりとした後味――。
それらが“唯一無二”だっただけに、終売を惜しむファンが多いのも納得です。
一方で、後継ブランド100％カジューハイを飲んだ人からは、「軽くなって飲みやすい」「新しい方向性としてアリ」という肯定的な意見も増えています。
消費者の嗜好が多様化する中で、ブランドも進化を迫られているといえるでしょう。
終売によって変わるもの・残るもの
素滴しぼりの終売は、一見すると惜しまれる出来事ですが、見方を変えればブランドのリスタートでもあります。
“果汁100％のお酒”という価値はそのままに、より現代的なアプローチで再構築されたのが100％カジューハイです。
お酒のトレンドは年々変わります。強さよりも「香り」「果実感」「飲みやすさ」が重視される時代。
その中で、素滴しぼりが築いた“果汁系チューハイの魅力”は確実に次の世代へと受け継がれています。
素滴しぼり終売の理由まとめ
・果汁100％で人気を集めた富永貿易のチューハイシリーズ
・2023年10月に正式に製造終了（在庫限りで販売終了）
・RTD市場が低アルコール志向へシフトした影響
・後継ブランド100％カジューハイ登場に伴うブランド再編
・果汁コストや健康志向の高まりも背景要因
・ファンからは惜しむ声が多数、ブランド価値は今も健在
素滴しぼり終売の背景を振り返って
「終売」は悲しいニュースに聞こえますが、実は“終わり”ではなく“変化の始まり”でもあります。
素滴しぼりが残した果汁100％のコンセプト、そして「お酒をもっと自然に楽しむ」という発想は、今も多くの新商品に息づいています。
もし素滴しぼりが好きだった方は、ぜひ後継の100％カジューハイや他の果汁系チューハイを試してみてください。
きっと、あの懐かしい果実感にもう一度出会えるはずです。
素滴しぼりが終売になっても、その“果汁の記憶”は消えません。
コメント