岡山の地酒ファンのあいだで長年愛されてきた「御前酒9（GOZENSHU 9／GOZENSHU NINE）」が、ついに終売を迎えました。
日本酒好きの間では「なぜあの名酒が消えるのか？」と惜しむ声が相次いでいます。この記事では、御前酒9の終売理由や背景、そして今後どこで入手できるのかまでを、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
御前酒9とは？蔵元「辻本店」が生んだ革新的な日本酒
御前酒9を造っていたのは、岡山県真庭市勝山にある老舗蔵元・辻本店。
江戸時代から続く酒蔵で、岡山が誇る酒米「雄町（おまち）」を中心に酒造りを行ってきました。近年は「雄町×菩提もと仕込み」という独自の路線を突き詰め、全国的にも注目を集めています。
そんな伝統ある蔵が2008年に試験醸造を始め、2009年から本格展開したのが「GOZENSHU 9（NINE）」シリーズでした。
“9”という数字とシンプルな英字デザイン、500mlという小ぶりなボトルサイズ。これまでの日本酒とは一線を画すモダンな見た目が特徴的で、特に日本酒初心者や若い世代からも支持を集めていました。
味わいは、御前酒らしい雄町の旨みと上品な酸味が調和したキレのあるタイプ。
伝統と革新を両立させた一本として、多くの飲食店や愛好家の定番になっていたのです。
終売発表は2023年秋――15年の歴史に幕
そんな御前酒9の終売は、2023年11月7日に蔵元の公式サイトで発表されました。
発表文では、次のような言葉が添えられています。
「2008年の試験販売、2009年から全国展開を開始してから15年。多くの皆様に愛され、蔵の幹となる商品に育てていただきました。今シーズンはGOZENSHU 9の醸造を行わず、現在庫をもって終売といたします。」
つまり、2023年の仕込みを最後に、製造自体を終了。
以後は在庫限りの販売となる、完全な“終売”です。
公式InstagramやX（旧Twitter）でもこの告知が行われ、多くのファンから「信じられない」「もう一度飲みたい」といったコメントが寄せられました。
15年にわたり御前酒を象徴する存在だっただけに、その反響の大きさは当然といえるでしょう。
御前酒9の終売理由｜蔵が語る「次のステージ」への決断
終売理由は、単なる採算や原料不足ではありません。
蔵元の発表によると、「酒質をさらに超えるプロダクトを世に送り出すため」という明確な意図がありました。
御前酒9は、若手蔵人たちの挑戦から生まれたお酒。
当時の蔵が“自分たちの可能性を形にした一本”として造り続けてきたものの、今や技術も設備も次の段階に進み、蔵全体として「より高みを目指す時期」に入ったといいます。
「GOZENSHU 9は、今の私たちの礎を築いた酒。その役割を終え、さらに進化するために終売という選択をした」
――そんな想いが、公式コメントからも伝わります。
つまり、御前酒9の終売は「終わり」ではなく、「再出発」のための節目。
蔵の理念そのものを再構築するタイミングだったのです。
背景にある「全量雄町・全量菩提もと」への転換
御前酒蔵元・辻本店は、ここ数年で大きな方針転換を行っています。
それが「全量岡山県産雄町米」「全量菩提もと仕込み」への統一です。
雄町米は、栽培が難しく手間のかかる品種ですが、唯一無二の旨みと余韻を生む酒米として知られています。
また、菩提もと仕込みは室町時代から伝わる古来の製法で、自然の乳酸菌を活かして醸す繊細な手法。時間も手間もかかりますが、味わいはより奥深く、独特の酸味とまろやかさが出ます。
この2つをすべての御前酒に採用する――それは、まさに蔵の原点回帰であり、品質主義の徹底。
御前酒9のようなモダンシリーズを一度リセットし、全体を再構築することで、ブランド全体の軸を強固にする狙いがあるのです。
実際、御前酒の別シリーズ「御前酒 辛口」「御前酒 辛口蔵出冷酒」なども、同じ方針で終売が発表されています。
つまり御前酒9の終売は、蔵全体の再編の一部だったというわけです。
終売後の入手方法｜まだ買える可能性はある？
「もう飲めないの？」と気になる人も多いはず。
結論から言うと、現時点では在庫品を探せば入手できる可能性があります。
公式発表でも「現在庫をもって販売終了」と明言されており、製造はすでに停止しています。
ただし、特約酒販店やオンラインショップ、地酒専門店にはまだ在庫が残っている場合があります。
御前酒公式オンラインショップでも、発表当時は一部在庫がありましたが、現在はほとんどが完売。
タイミング次第では、地方の取扱店や百貨店に眠っているケースもあります。
また、オークションやフリマアプリでも出品例が増えています。
ただし、保存状態や転売価格には注意が必要です。
日本酒は温度管理が味に直結するため、信頼できる販売元から購入するのが安心です。
終売後しばらくは“探せば見つかる”時期ですが、時間が経つほど入手は難しくなります。
飲み納めを考えている方は、今のうちに動くのが賢明でしょう。
御前酒9の味わいと魅力を振り返る
御前酒9がここまで愛された理由は、味わいのバランスにあります。
雄町特有のふくよかさと、菩提もと仕込み由来の柔らかな酸が共存する、唯一無二のテクスチャー。
冷やでも燗でも楽しめる万能さもあり、料理を選ばない懐の深さも魅力でした。
さらに、9シリーズは毎年の仕込みで微妙に味わいが異なり、“その年だけの個性”を楽しめるのも特徴。
日本酒に詳しい人ほど、その奥行きを語りたくなる一本だったのです。
一度飲めば忘れられない香りと余韻。
そんな酒が終売になると聞けば、ファンが惜しむのも当然といえるでしょう。
終売の裏に見える日本酒業界の変化
御前酒9の終売は、単なる一蔵の出来事ではなく、日本酒業界の潮流も反映しています。
ここ数年、全国的に「ブランドの再定義」「シリーズ整理」が進んでおり、各蔵が“選ばれる酒”への転換を図っています。
背景には、人口減少や飲酒習慣の変化、原料コストの高騰などがあります。
その中で、量より質を追求する蔵が増え、御前酒もまた「個性と哲学を磨く」方向へ舵を切った形です。
つまり御前酒9の終売は、時代に逆らうのではなく、時代に呼応した進化。
終売という言葉の裏には、蔵の未来への意志が確かに込められています。
今後の展開｜「御前酒 CLASSICS 辛口」シリーズへ進化
御前酒蔵元は、すでに新たな展開を発表しています。
2024年8月には「御前酒 CLASSICS 辛口」という新シリーズを発売。
これも全量雄町・菩提もと仕込みで造られる、新しい時代の定番酒です。
つまり、御前酒9の後継として“次の主役”が登場し始めています。
蔵の公式発表にも「酒質をさらに超えるプロダクトを」とあるように、進化した味わいで再びファンを迎える準備が進んでいるのです。
御前酒9が築いた革新のDNAは、形を変えて次世代の御前酒に受け継がれていく――
そう考えると、終売は悲しみではなく期待へとつながります。
御前酒9の終売理由と今後の入手方法まとめ
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 終売発表： 2023年11月、公式に終了が告知
- 理由： 酒質を高めるためのブランド再構築・全量雄町化
- 背景： 蔵全体の方針転換によるライン整理
- 入手方法： 在庫限り。特約店・ネットショップ・オークションなどで探す
- 今後： 新シリーズ「御前酒 CLASSICS 辛口」などが後継的存在に
御前酒9は、岡山の雄町と共に歩んだ革新の15年でした。
その歴史は幕を閉じますが、御前酒というブランドは、さらに深みを増して次の時代へ進んでいきます。
“幻の銘酒”となった御前酒9。
もし見かけることがあれば、ぜひその味わいを心に刻んでおきましょう。
そして次に登場する御前酒の新たな一杯にも、期待したいところです。
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