ウイスキー好きの間で長年愛されてきた「竹鶴17年」。その終売(生産終了)のニュースは、多くのファンに衝撃を与えました。なぜあの名品が市場から姿を消したのか。この記事では、竹鶴17年の終売理由や背景、そして今後の動きまで、できるだけわかりやすく掘り下げていきます。
竹鶴17年ピュアモルトとはどんなウイスキー?
「竹鶴17年ピュアモルト」は、ニッカウヰスキーが誇るピュアモルトシリーズの中核を担う一本でした。ピュアモルトとは、大麦麦芽だけを原料とするモルトウイスキーをブレンドしたもの。竹鶴ピュアモルトシリーズは、創業者・竹鶴政孝の名前を冠し、彼の理想とした“本格ウイスキー”を象徴しています。
竹鶴17年ピュアモルトは、余市蒸溜所のスモーキーな原酒と宮城峡蒸溜所の華やかな原酒を絶妙にブレンド。その香りや味わいは、ウイスキー愛好家の間で「完成されたバランス」と評されていました。熟成年数17年という時間が生み出す奥深さと、7000円前後という定価の手頃さも相まって、コスパの良さでも高い評価を受けていました。
終売が発表された時期と背景
竹鶴17年が公式に販売終了を迎えたのは、2020年3月末。ニッカウヰスキーは同時に、竹鶴21年や竹鶴25年といった熟成年数を冠した竹鶴ピュアモルトシリーズも生産終了とする方針を発表しました。
当時のリリースでは「原酒不足」が主な理由と説明されています。ウイスキーは長期熟成が必要なため、今から17年前、つまり2000年代初頭に仕込んだ原酒を使って造られています。しかし、当時は現在ほどのウイスキーブームを予想しておらず、熟成原酒のストックが圧倒的に足りなくなってしまったのです。
なぜ竹鶴17年は生産終了になったのか
竹鶴17年の終売理由をもう少し具体的に見ていくと、いくつかの要素が重なっていることがわかります。
1. 原酒不足という構造的な問題
最も大きい要因は「原酒の確保が追いつかない」こと。竹鶴17年に使われる原酒は、余市と宮城峡、いずれも長期熟成を経た希少なモルトです。これらを安定供給するには17年以上前から計画的に仕込みを続けなければなりません。
しかし、2000年代当時のウイスキー市場は低迷しており、需要予測に基づく仕込み量は最小限。まさか後に「ジャパニーズウイスキー」が世界で評価され、ここまでの需要が爆発するとは想定していなかったのです。
2. 世界的なジャパニーズウイスキーブーム
2014年のNHK連続テレビ小説『マッサン』の放送をきっかけに、竹鶴ピュアモルトブランドの知名度は一気に全国区へ。さらに世界的なコンペティションでも高い評価を受け、「TAKETSURU」という名前は海外でも注目される存在になりました。
その結果、国内外で需要が急増。特に欧米やアジア圏のバイヤーが買い占める動きもあり、熟成原酒の枯渇が加速していったのです。
3. 生産コストとブランド戦略の見直し
熟成年数を表記したウイスキーは、仕込みからボトリングまで長期間にわたって原酒を寝かせる必要があり、コストも膨大になります。貯蔵スペースの確保、熟成中のロス、在庫リスクなど、経営的にも負担が大きい。
そこでニッカは、長期熟成ボトルを一旦整理し、「ノンエイジ(年数表記なし)」の新しい竹鶴ピュアモルト(ノンエイジ)に注力する方針を打ち出しました。これにより、生産の柔軟性を高めつつ、ブランドの継続を図る戦略へとシフトしたのです。
終売後の市場価格とプレミア化
終売のニュースが出た直後から、竹鶴17年の価格は急騰しました。定価7,000円前後だったものが、2020年以降は3万円、さらに2025年時点では5万円を超えるケースも珍しくありません。今では店頭で見かけることはほぼなく、オークションサイトや一部の専門店でプレミア価格で取引されています。
このプレミア化は、単なる希少性だけでなく、「あの味をもう一度味わいたい」というファンの心理も大きく影響しています。竹鶴17年は、単なるウイスキーではなく、“日本のウイスキー史を代表する銘柄”としての価値を確立したと言えるでしょう。
竹鶴17年の味わいと魅力
竹鶴17年の魅力は、なんといってもそのバランスの良さ。
余市モルトの力強いスモーキーさ、宮城峡モルトのフルーティーで繊細な香り。これらが一体となり、甘み・苦味・渋みの調和を生み出しています。香り立ちは落ち着いたピート香と熟した果実。口に含むと樽のウッディさとほのかなバニラ、そして17年という歳月がもたらす丸みが感じられます。
一口目から余韻まで計算されたような完成度。これが「竹鶴17年は芸術品」と評される所以です。
ノンエイジ版「竹鶴ピュアモルト」への移行
竹鶴17年の終売後、ニッカは新たに「竹鶴ピュアモルト(ノンエイジ)」をリリースしました。
ノンエイジとは、熟成年数を明記しないウイスキーのこと。これは複数年数の原酒をブレンドすることで、年数に縛られない安定した味わいを実現する手法です。
新しい竹鶴ピュアモルトは、竹鶴17年のような長熟感はやや控えめながらも、竹鶴ピュアモルトらしいピート香とフルーティーさを残した仕上がりになっています。メーカーとしても、これを「次の時代の竹鶴ピュアモルト」と位置づけており、今後のブランド展開の中心を担う存在になるでしょう。
愛好家たちの反応とコレクター人気
終売発表後、SNSやウイスキーフォーラムでは「竹鶴17年がなくなるのは寂しい」「大切に飲もう」「もう手が届かない」などの声が多く見られました。
特にコレクターの間では、未開封ボトルの保存や再販希望の声が根強く、海外オークションでは高額落札が続いています。
また、バー業界でも「17年ものはもう特別な日だけに出すボトル」として扱われるなど、希少酒としてのステータスが確立されました。今や竹鶴17年は、単なる終売商品ではなく「日本ウイスキー黄金期の象徴」として語り継がれています。
竹鶴17年が残したもの
竹鶴17年の存在は、ジャパニーズウイスキーの地位を押し上げる大きな原動力でした。
海外のウイスキーアワードで数々の賞を受賞し、世界のバーで「TAKETSURU」の名を知らしめた功績は計り知れません。終売となった今も、その味わいと哲学は次世代のウイスキー造りに受け継がれています。
ニッカは現在、原酒増産のための設備投資を進めており、将来的には再び長期熟成ウイスキーをリリースできる体制を目指しています。竹鶴17年のような銘酒が復活する日を願うファンも多いでしょう。
まとめ:竹鶴17年終売の真相と今後への期待
竹鶴17年の終売は、単なる製品終了ではありませんでした。
それは、ウイスキー業界の成長と変化、そして長期熟成の難しさを象徴する出来事だったのです。
原酒不足、世界的需要の高まり、ブランド戦略の再構築――これらが重なり合って、竹鶴17年は静かにその幕を閉じました。
しかし、その味わい、哲学、ブランドへの敬意は今も受け継がれています。
もし竹鶴17年を手に入れる機会があれば、それはもう“一期一会”の出会い。
ゆっくりとグラスを傾けながら、その17年の時の流れを感じてみてください。

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