「黒龍 特吟」と聞いて、思わず懐かしさを覚える人も多いのではないでしょうか。上品で繊細な香り、透明感のある味わいで多くの日本酒ファンを魅了してきたこの銘柄。そんな黒龍 特吟が、実はすでに“終売”となっているのをご存じでしょうか?
この記事では、黒龍 特吟の終売理由から、今なお入手できる可能性、そして代わりに楽しめる銘柄まで、じっくりと掘り下げていきます。
黒龍 特吟とは?その特徴と魅力をおさらい
黒龍 特吟は、福井県を代表する老舗蔵元「黒龍酒造」が手がけていた大吟醸酒です。精米歩合50%の吟味された酒米を使い、雑味のないクリアな口当たりと、フルーティーながらも控えめな吟醸香が特長でした。
香りはまるで高級メロンのように上品で、飲み口はスッと伸びるような清らかさ。後味にはしっかりと旨味があり、食中酒としても優秀。日本酒好きからは「派手すぎず、飽きのこない理想の大吟醸」として根強い人気を誇っていました。
通年販売されていたにもかかわらず、2021年3月をもって正式に終売。以降は市場から徐々に姿を消していきました。
黒龍 特吟が終売となった理由
黒龍酒造から明確な公式発表は出ていませんが、複数の要素が重なって終売に至ったとみられます。ここでは、その背景を推測できる範囲で整理してみましょう。
1. 商品ラインナップの整理と再構築
黒龍酒造は近年、ブランド全体の構成を見直しています。従来の「特吟」「吟醸」「純吟」などのラインナップから、新定番シリーズ「いっちょらい」へと刷新された時期がありました。
「いっちょらい」は福井の方言で“一張羅(いっちょうら)”を意味し、“特別な日に着る一張羅のように、誇れる一本”という想いを込めて誕生したシリーズです。
そのため、黒龍 特吟という名の通年大吟醸が役割を終え、新ブランドへ移行したと考えられます。
2. コスト・生産効率の見直し
大吟醸は精米歩合が高く、米の歩留まりも低いため、製造コストがかかります。さらに近年は原料米の価格高騰やエネルギーコストの上昇も影響しており、蔵元側が生産体制を効率化する必要があったとみられます。
高価格帯の大吟醸を通年で維持するよりも、季節限定や予約販売で提供する方向へシフトした可能性もあります。
3. コロナ禍による消費環境の変化
2020〜2021年は、外食産業が大きな打撃を受けた時期でもありました。料飲店を中心に提供されていた黒龍酒造の高級酒シリーズは、その影響を避けられなかったでしょう。
飲食店向け需要の減少は、通年供給型の高級酒の販売戦略を見直すきっかけになったとも考えられます。
4. 上位銘柄とのポジション重複
黒龍酒造には、「黒龍 大吟醸 龍」や「しずく」「火いら寿」といった上位ラインが存在します。これらの高級酒と特吟の価格帯・香味バランスが重なっていたため、ブランド整理の一環として統合された可能性があります。
つまり、特吟は黒龍酒造の“定番大吟醸”として一定の役割を果たしたのち、より明確なブランド階層を作るために整理されたといえるでしょう。
現在も手に入る?黒龍 特吟の入手方法
終売といっても、完全に市場から姿を消したわけではありません。いくつかのルートを通じて、まだ手に入る可能性はあります。
1. 酒販店の在庫を探す
黒龍酒造の特約店の中には、終売直後に仕入れた在庫を冷蔵保管しているケースがあります。特に地方の老舗酒屋では「倉庫の奥に数本だけ残っていた」ということも。電話やメールで問い合わせてみる価値があります。
2. 古酒・買取専門店で探す
日本酒専門の買取店では、「終売品」「限定酒」として黒龍 特吟を扱っていることがあります。保管状態や流通履歴が明確なものを選べば、品質的にも安心です。
ただし希少性が高いため、販売価格は定価の2倍以上になることもあります。購入時は保存温度や瓶の状態をしっかり確認しましょう。
3. オークション・フリマサイトを活用
ヤフオクやメルカリなどでも「黒龍 特吟」と検索すると、未開栓ボトルが出品されることがあります。
注意点として、保管状態が分からない個人出品はリスクが高いため、出品者評価や写真の細部(液面、キャップの汚れ、ラベルの変色など)を慎重にチェックしましょう。
4. 海外・免税店ルート
一部の免税店や海外の日本酒ショップでは、旧流通ロットが在庫として残っている場合があります。輸送環境や保存期間が長い可能性があるため、品質保証を明確にしているショップを選びましょう。
終売前の定価と現在の市場価格
黒龍 特吟の終売前の定価は、720mlで約1,600円、1.8Lで3,300円前後でした。
現在は希少酒として扱われることが多く、ネット販売やオークションでは2倍以上の価格で取引されることもあります。中には5,000円を超えるケースもあり、コレクターズアイテム化している状況です。
ただし、「プレミア価格だから高品質」というわけではなく、保存状態が品質を大きく左右します。液色の変化や香りの劣化を防ぐため、購入時は保存履歴の分かる店舗を選ぶのがベストです。
黒龍 特吟の味わいを継ぐ代替銘柄
終売になってしまった特吟ですが、黒龍酒造には今でも“特吟の系譜”を感じさせる銘柄があります。
ここでは、特吟ファンにおすすめしたい代替酒を紹介します。
黒龍 いっちょらい(純米吟醸)
もっとも近いポジションにあるのが「いっちょらい」です。
福井弁で“一張羅”を意味するこの銘柄は、黒龍酒造が新たな定番として打ち出した純米吟醸。穏やかな香りとやわらかな口当たり、そして透明感のあるキレ味が特徴で、特吟の上品さを感じさせます。
価格帯も手ごろで、日常酒としても人気。特吟の“次世代スタンダード”といえる存在です。
黒龍 大吟醸 龍
「より華やかで格調高い味を求めたい」という人には、黒龍 大吟醸 龍がおすすめです。
繊細な吟醸香と透明感のある旨味のバランスが秀逸で、黒龍酒造らしい“清らかな香味”をしっかり堪能できます。特吟よりも上位ランクの位置づけですが、黒龍酒造の真骨頂を感じられる一本です。
限定品・季節酒シリーズ
黒龍酒造は、季節限定の「吟十八号」や「しずく」「火いら寿」といった限定品も展開しています。特吟のような繊細な味わいを求めるなら、これらの限定酒をチェックするのも一つの方法です。
入手難易度は高いですが、その分「黒龍酒造の今」を感じられる魅力があります。
黒龍酒造の今後と黒龍 特吟の存在意義
黒龍酒造は創業1804年という老舗ながら、常に新しい挑戦を続けています。
黒龍 特吟の終売は単なる“縮小”ではなく、「より高品質で明確なブランド構成を目指すための一歩」と見るべきでしょう。
時代に合わせて製品構成を整理し、新たなファン層を広げる戦略。その中で特吟は、黒龍酒造が磨き続けてきた“香りと透明感のバランス”を確立した象徴的存在だったといえます。
いま市場で見かける黒龍 特吟のボトルは、単なる酒ではなく、黒龍酒造の歴史を語る一本。終売から数年経った今も、愛好家の心を惹きつけてやまないのはそのためです。
黒龍 特吟 終売のまとめ
黒龍 特吟は、2021年3月をもって通年販売を終了しました。理由は、ブランド再構築・生産体制の見直し・高級酒市場の変化などが重なったためと考えられます。
現在は正規流通では購入できませんが、酒販店の在庫や古酒専門店、オークションなどを通じて入手できる可能性があります。
そして代替としては、「黒龍 いっちょらい」「黒龍 大吟醸 龍」などが最も近い選択肢。特吟が残した“黒龍らしさ”は、今も確実に次の世代の銘柄へ受け継がれています。
黒龍 特吟という名が消えても、その精神は生き続けています。
一杯の酒に、蔵の哲学と歴史を感じたい――そんな人にこそ、いま一度“黒龍酒造”の酒を味わってほしいと思います。

コメント