冬の日本酒好きなら、一度は耳にしたことがあるのが「黒龍 垂れ口」。
その名を聞くだけで、しぼりたてのフレッシュな香りや、うすにごりの柔らかな旨みを思い出す人も多いでしょう。
そんな人気の季節限定酒が「終売」との情報が出て、SNSや日本酒ファンの間でざわめきが広がっています。
今回は、黒龍 垂れ口がなぜ終売となったのか、その背景や再販の可能性についてじっくり見ていきましょう。
「黒龍 垂れ口」とは?冬だけ味わえた“しぼりたて生原酒”
「黒龍 垂れ口」は、福井県・永平寺町に蔵を構える黒龍酒造が造ってきた冬の限定酒です。
正式名称は「黒龍 純吟 垂れ口(黒龍 純米吟醸 垂れ口 うすにごり生原酒)」。槽口(ふなくち)から流れ出るしぼりたての純米吟醸をそのまま瓶詰めした、生のうすにごり原酒です。
原料米は福井県産の五百万石、精米歩合55%。
日本酒度+3前後、アルコール度数は17度前後。
「生酒」らしいフレッシュさと、うすにごり特有のまろやかさを併せ持つ一本で、口に含むと微発泡のような軽い刺激と、果実のような香りが広がります。
発売は毎年1月頃。冬の風物詩として、年明けを飾る恒例の一本でした。
「垂れ口が出ると冬を感じる」「毎年これを飲んで一年が始まる」という声も多く、季節限定ながら黒龍の定番的存在として長年親しまれてきました。
終売の報せが広がった経緯
この「黒龍 垂れ口」が終売になるという情報が最初に流れたのは、2024年初頭頃。
一部の酒販店が「今期の販売をもって終売となります」「長年のご愛顧ありがとうございました」とブログやSNSで告知したのがきっかけでした。
ある酒販店では、
「黒龍 純吟 垂れ口はR6BY(令和6年醸造年度)をもって終売となります」と明記。
別の店舗でも「本年分で最後になります」との案内が掲載されています。
つまり、2024年冬に出荷されたロットが“ラスト垂れ口”ということです。
SNSでも「今年で最後」「もう飲めなくなるのか…」という投稿が相次ぎ、黒龍ファンの間では惜しむ声が後を絶ちません。
酒レビューサイト「SAKETIME」には「終売と聞いて最後に買いました」「これが飲めなくなるのは寂しい」といったコメントも目立ちました。
黒龍 垂れ口が終売となった理由
黒龍酒造から公式に“なぜ終売になったのか”という発表は出ていません。
ただし、蔵の事情や日本酒市場の流れを踏まえると、いくつかの背景が考えられます。
1. 生酒ならではの手間とコスト
「垂れ口」は火入れを行わない生原酒。
品質を保つためには、製造から流通、販売に至るまで冷蔵管理が欠かせません。
冬季限定で生産量も限られるため、一般流通酒に比べて手間とコストがかかります。
生酒は保管リスクも高く、蔵元や酒販店にとっては扱いが難しい商品でもあります。
2. ラインナップ整理・ブランド戦略の一環
黒龍酒造は、近年ブランドの再編を進めています。
特に「黒龍」「九頭龍」といったブランドラインの統一感を高め、高品質・安定供給を重視する傾向が見られます。
その流れの中で、季節限定の生原酒よりも通年販売できる銘柄に注力している可能性があります。
3. 限定酒の管理と市場環境の変化
SNS時代の今、“限定酒”は話題性が高く人気も出やすい一方で、転売や過剰なプレミア化が起きやすい側面もあります。
実際、垂れ口も終売発表後には一部で価格が高騰し、オンラインでは定価の倍近い値で出品されるケースも見られました。
こうした流通の乱れを防ぐために、蔵元が供給を整理した可能性も考えられます。
「終売=完全終了」ではない?復活の可能性を探る
「終売」とは通常、“現行の形では販売を終了する”という意味です。
ただし、それが“永久に生産しない”ことを意味するわけではありません。
日本酒業界では、人気の季節酒が数年後に“復刻”や“限定再販”として戻ってくる例も珍しくありません。
黒龍酒造も、これまで季節限定酒や特別仕様を時折出してきた蔵です。
仮に垂れ口が再登場するなら、以下のような形が考えられます。
- 味わいやスペックをリニューアルした「垂れ口202X限定版」
- 火入れタイプや低アル仕様など新バリエーション
- 蔵元限定・直営店限定での数量復活
とはいえ、現時点では公式な再販告知はなく、少なくとも当面の間は市場から姿を消す可能性が高いです。
「今後の動向を静かに見守る」というのが現実的なスタンスでしょう。
現在の入手状況と在庫の注意点
終売情報が出てから、各地の酒店ではあっという間に完売。
オンラインショップでも「在庫なし」「SOLD OUT」が相次ぎました。
在庫を持つ店舗でも「お一人様1本限り」といった購入制限が設けられています。
もしまだ入手を検討している場合は、以下の点に注意しましょう。
- 保存状態の確認:生原酒のため、常温での長期保管は品質劣化の原因になります。
- 価格の高騰に注意:定価を大きく上回る転売品が出回っている場合があります。正規取扱店かどうかを確認することが大切です。
- 流通時期の見極め:2024年冬出荷分が“最後の垂れ口”とされているため、それ以前の古いロットとは別物です。
希少性は高まっていますが、品質を重視するなら信頼できる販売ルートからの購入をおすすめします。
「黒龍 垂れ口」を愛した人たちの声
日本酒ファンの間で垂れ口は特別な存在でした。
冬の訪れを告げるように登場し、その瞬間を楽しむために毎年予約していた人も多かったほど。
SNSでは終売を惜しむ声が続々と上がっています。
「毎年買ってたから寂しい」「あの微発泡感が忘れられない」「黒龍らしい上品な甘みが好きだった」。
中には「終売と聞いて初めて飲んだけど、もっと早く知っておけばよかった」という声も。
それだけファンの記憶に残る一本だったということです。
限定酒ながら“黒龍らしさ”を象徴する一本でもあり、終売はひとつの時代の終わりを感じさせます。
黒龍酒造の今後と新しい展開に期待
黒龍酒造は、創業200年以上の老舗ながら、常に新しい挑戦を続ける蔵です。
近年では、プレミアムライン「石田屋」「仁左衛門」に代表される熟成酒シリーズの評価が高まり、世界的にも注目を集めています。
また、設備の刷新や若手蔵人の育成など、品質重視の取り組みを強化しており、ブランド全体の方向性はより洗練されたものへと進んでいます。
垂れ口のような“限定・生酒系”は一旦区切りを迎えたものの、黒龍の精神は変わりません。
新しい季節酒や限定シリーズが登場する可能性もあり、ファンとしては今後の展開にも目が離せません。
まとめ:黒龍 垂れ口の終売は惜しいが、その魂は次の一杯へ
黒龍 垂れ口の終売は、多くの日本酒ファンにとって寂しいニュースでした。
冬の風物詩であり、毎年の楽しみでもあった一本が姿を消すのは、まるで季節の節目がひとつ終わるような気持ちになります。
しかし、黒龍酒造が培ってきた酒造りの技術と哲学は、これからの新商品にも確実に受け継がれていくはず。
垂れ口の再販があるかは未知数ですが、黒龍の新たな展開を期待しながら、今ある一杯を大切に味わいたいですね。
いつかまた、あの「黒龍 垂れ口」のやさしいにごりが戻ってくる日を信じて。
黒龍 垂れ口が終売となっても、その記憶と香りは、今も多くのファンの心に残り続けています。

コメント