歯ブラシの「かため」が売ってない？その疑問の背景にある事情
最近、「かための歯ブラシがどこにも売ってない」「ドラッグストアで探しても“ふつう”や“やわらかめ”しかない」と感じる人が増えています。
実際、SNSやQ&Aサイトでも「硬めを使いたいのに見つからない」という声が多く見られます。では、なぜ「かため」が店頭から消えつつあるのでしょうか？
背景には、メーカーや販売店、さらには歯科医の推奨スタイルの変化など、いくつかの要因が重なっています。
歯ブラシの硬さ表示の基本と「かため」の特徴
市販の歯ブラシは、毛の硬さによって「やわらかめ」「ふつう」「かため」の3種類に分かれています。
この違いは単なる感覚的なものではなく、毛の太さや弾力、座屈強度（しなりにくさ）などで定義されています。
「かため」の歯ブラシは、毛のコシが強く、歯面の汚れをしっかりこすり落としやすいのが特徴です。
歯垢（プラーク）を物理的に除去しやすいため、「磨いた感」が得られるという理由で長年愛用している人も少なくありません。
一方で、強い圧をかけすぎると歯茎を傷めたり、エナメル質を削ってしまうリスクもあるため、歯科医の間では「ふつう」または「やわらかめ」が推奨されるケースが増えています。
「かため」が売ってない理由①：メーカーがラインナップを縮小している
まず大きな理由の一つが、メーカーによる製品ラインの整理です。
かつては「かため」も含めて複数の硬さを展開していたブランドが、近年では“やわらかめ～ふつう”の2区分のみになっているケースが増えています。
たとえば、ライオンの「クリニカ アドバンテージ」シリーズでは、以前「4列コンパクト・かため」が販売されていましたが、現在は製造終了になっています。
また、花王やサンスターなど他メーカーも、全てのシリーズで“かため”を展開しているわけではありません。消費者の需要が減り、店頭での回転率が下がったことから、取扱数を絞る流れが進んでいます。
「かため」が売ってない理由②：歯科業界の推奨が「やわらかめ」中心に変化
もうひとつの要因は、歯科医の推奨トレンドです。
近年の予防歯科の考え方では、「強くこすって落とす」よりも「やさしく毛先で撫でるように磨く」ことが重視されています。
これは、歯茎の炎症や歯肉退縮（歯茎が下がること）、知覚過敏の予防を目的としたものです。
歯科医院のブログなどでも、「硬いブラシでゴシゴシ磨くと歯茎が下がり、歯がしみる原因になる」「力の入れすぎは歯を守るどころか壊してしまう」と警鐘を鳴らす記述が目立ちます。
このような流れを受けて、メーカー側も「やわらかめ・ふつう」を中心にした商品設計へ移行しているのです。
「かため」が売ってない理由③：ドラッグストアの棚から消えた販売戦略的理由
「昔はあったのに今は棚にない」という現象は、小売店の在庫・棚割り戦略の変化も関係しています。
売り場スペースが限られる中、売れ筋・回転の良いアイテムを優先的に置くのが小売の基本です。
そのため、需要の少ない“かため”はスペース削減の対象になりやすく、「ふつう」「やわらかめ」のみに絞る店舗が増えています。
一方、ネット通販やメーカー直販サイトでは「かため」の在庫が残っている場合も多く、
「店頭にはないがオンラインなら購入できた」という声も少なくありません。
つまり、「かため」が消えたわけではなく、販売チャネルの主軸が店頭からオンラインへ移行したという側面もあります。
「かため」歯ブラシのメリットと注意点
ここで改めて、「かため」を使うメリットとリスクを整理しておきましょう。
メリット
- コシが強く、歯の表面の汚れをしっかり落としやすい
- 歯垢を物理的に除去しやすく、ツルツル感を得やすい
- 歯・歯茎が健康で、力加減をコントロールできる人には効果的
注意点・デメリット
- 歯茎が弱い人や知覚過敏の人には刺激が強すぎる
- 強く磨きすぎると歯茎が下がり、根本が露出する危険がある
- 毛先が硬いため、歯面や詰め物を傷つけるリスクもある
つまり、「かため」は“誰にでもおすすめできる”タイプではなく、
使い慣れていてブラッシング圧をコントロールできる人向けといえます。
「かため」派が困ったときの代替策と選び方
それでも「どうしても硬めじゃないと磨いた気がしない」という人も多いはず。
そんな場合に試せる代替策をいくつか紹介します。
1. 通販限定モデルを探す
Amazonや楽天市場、メーカー公式ショップでは、店頭で見つからない「かため」モデルが今も販売されています。
特にまとめ買いパックなどは、店舗よりもコスパが良いこともあります。
「ビトイーンライオン かため」「クリニカPRO かため」など、在庫が残るシリーズをチェックしてみましょう。
2. 「ふつう」でも硬めの使用感を選ぶ
同じ“ふつう”でも、毛の太さや密度によって硬さの体感が異なります。
毛束が密で、ヘッドがしっかりしたタイプは「かため寄り」に感じることがあります。
商品レビューや説明欄で「しっかり磨ける」「コシがある」と書かれたモデルを選ぶのがおすすめです。
3. 歯科専売品を試してみる
歯科医院で販売されている専売ブランド（ルシェロ、Ci、TePeなど）には、
市販より細かく硬さを選べる製品が揃っています。
歯科医師に相談すれば、自分の歯茎の状態に合った硬さを提案してもらえることもあります。
4. 磨き方の見直しで「かため感」を補う
硬い毛先に頼らずとも、磨き方を工夫すれば汚れをしっかり落とせます。
歯と歯茎の境目に毛先を斜め45度で当てて小刻みに動かす「バス法」など、
歯科が推奨するブラッシング法を実践することで清掃力がアップします。
「かため」歯ブラシが復活する可能性はある？
需要が一定数ある限り、「かため」が完全に消える可能性は低いと考えられます。
実際に、販売終了後もネット上では根強い人気があり、メーカーが限定復活や後継モデルを出すケースもあります。
ただし、今後も歯科医療のトレンドとして「やわらかめ」重視の流れが続くと予想されるため、
「かため」が再び主流に戻ることはあまり期待できないでしょう。
その分、個人の口腔状態や使用感に合わせて製品を選ぶ“パーソナルケア”の時代に移行しています。
メーカー各社も「磨きやすさ」や「歯茎へのやさしさ」を軸にした商品を増やしており、
今後は「硬さ」よりも「毛先の形状」「ヘッドサイズ」「ブラシ圧分散設計」などで差別化が進むと見られます。
歯ブラシのかためが売ってない理由と今後の選び方まとめ
歯ブラシの「かため」が売ってない背景には、
- メーカーによる製造終了・ラインナップ整理
- 歯科医の推奨変化による需要減少
- 小売店の棚スペース削減
といった複数の要因がありました。
ただし、通販や歯科専売ルートではまだ手に入る製品もあります。
もし店頭で見つからなくても、オンラインショップや専門店を活用すれば、
お気に入りの“かため”を継続して使うことは十分可能です。
「歯ブラシのかためが売ってない」と感じたときは、
焦らず代替品や新しい磨き方を試して、自分の歯と歯茎に合ったケアスタイルを見つけていきましょう。
