「痔かな…」と思って薬局に行くと、ずらっと並ぶボラギノールAシリーズの箱。ボラギノールAシリーズ、ボラギノールMシリーズ、内服ボラギノールEX、内服ボラギノールEP、坐剤、注入軟膏、軟膏…どれを選べばいいの?と思った経験がある方は多いはずです。
ここでは、薬剤師の視点から、症状別にボラギノールAシリーズの違いと選び方をわかりやすく解説します。薬機法や景品表示法に配慮しつつ、一般的な情報としてお伝えします。
痔のタイプを知ることが薬選びの第一歩
痔は大きく3つのタイプに分かれます。
- いぼ痔(痔核)
肛門にいぼ状のふくらみができるタイプで、内側にできる「内痔核」と外側の「外痔核」があります。出血や腫れが特徴です。 - きれ痔(裂肛)
肛門の出口付近が切れて痛むタイプ。排便時に激しい痛みが出やすく、硬い便や便秘が原因で起こりやすいです。 - 痔ろう(痔瘻)
肛門の中と外をつなぐトンネルのような炎症。これは市販薬では治療できず、医療機関の受診が必要です。
まずは、自分の症状がどのタイプなのかを確認することが、適切な薬を選ぶための出発点です。
ボラギノールAシリーズの種類と違いを整理
ボラギノールAシリーズは、症状の強さや部位によって複数のシリーズがあります。代表的なのが以下の4つです。
- ボラギノールAシリーズ(ステロイド配合)
- ボラギノールMシリーズ(ステロイド非配合)
- 内服ボラギノールEX(錠剤タイプ)
- 内服ボラギノールEP(顆粒タイプ)
ここからは、それぞれの特徴と使い分けを見ていきましょう。
炎症・出血・腫れがつらいならボラギノールAシリーズ
「痛い・出血する・腫れている」など、症状がはっきりしているときは、ボラギノールAシリーズが候補になります。
プレドニゾロン酢酸エステルというステロイド成分が配合されており、炎症を鎮め、腫れやかゆみを抑える働きがあります。
Aシリーズには3つの剤形があります。
- ボラギノールA注入軟膏:内外どちらにも使える2ウェイタイプ。肛門の内外に症状がある場合に便利。
- ボラギノールA坐剤:肛門の内側(内痔核)向け。排便後の出血や痛みに対応。
- ボラギノールA軟膏:外側の腫れ・痛み・かゆみに。外痔核やきれ痔に使いやすいです。
ただし、ステロイド配合のため、長期間の使用や化膿している部位への使用は避けるのが基本。10日程度使っても改善しない場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
痛みやかゆみが軽い・ステロイドを避けたいならボラギノールMシリーズ
「出血はないけど、ヒリヒリする」「かゆみが気になる」「長期で使いたい」
そんな方には、ボラギノールMシリーズがおすすめです。
ボラギノールMシリーズはステロイドを含まない代わりに、グリチルレチン酸やアラントインなどの抗炎症・修復成分が入っています。
作用は穏やかですが、デイリーケアに向いており、軽症時や再発予防にも適しています。
ボラギノールMシリーズにも坐剤と軟膏があり、外側中心の痔にはボラギノールM軟膏、内側の症状にはボラギノールM坐剤が選ばれます。
また、妊娠中・授乳中でも使用できる製品があるため、注意書きを確認しながら選ぶと安心です。
内側に痛み・出血があるなら坐剤や注入軟膏を選ぶ
痔が肛門の内側にある「内痔核」の場合、軟膏を塗るだけでは届きにくいことがあります。
そういうときは、坐剤や注入軟膏を使うのが効果的です。
- 坐剤は体温で溶けて薬が広がるので、奥の炎症にも届きます。
- 注入軟膏はチューブの先端を挿入し、内外の両方に薬を届けられるので、内痔核と外痔核が混在するケースにぴったりです。
挿入タイプに抵抗を感じる方もいますが、症状が内側にあるときはこれが一番確実。どうしても難しい場合は、内服タイプとの併用も検討できます。
再発しやすい・体の内側から整えたいなら内服タイプ
外用薬で一時的に良くなっても、また繰り返してしまう…。そんな場合は、体の内側から血流やうっ血を改善する内服ボラギノールEXや内服ボラギノールEPが選択肢になります。
- 内服ボラギノールEX:10種類の生薬エキスを配合。肛門部のうっ血や痛みを体の内側から和らげる。
- 内服ボラギノールEP:3種類の生薬とビタミンEを配合。飲みやすい顆粒タイプで、比較的軽めの症状に。
どちらも外用薬と併用可能で、慢性化している人や「塗るのが面倒」という人に向いています。
ただし、1か月ほど服用しても改善が見られない場合は、医師の診察を受けましょう。
症状別の選び方まとめ(目安)
- 出血・腫れ・炎症が強い → ボラギノールAシリーズ(ステロイド配合)
- 痛みやかゆみが中心で軽い → ボラギノールMシリーズ(非ステロイド)
- 肛門内側に症状 → ボラギノールA坐剤またはボラギノールA注入軟膏
- 外側の痛み・きれ痔 → ボラギノールA軟膏またはボラギノールM軟膏
- 繰り返す・長引く・体質的なうっ血 → 内服ボラギノールEX/内服ボラギノールEP
- 妊娠中・授乳中 → ボラギノールMシリーズ(使用前に添付文書要確認)
あくまで目安なので、自己判断で長期使用せず、改善しない場合は早めに専門医へ相談を。
使用上の注意と生活改善も忘れずに
薬を選ぶときと同じくらい大切なのが、生活習慣の見直しです。
- 便秘を防ぐ(食物繊維・水分をしっかり取る)
- 長時間座りっぱなしを避ける
- 排便を我慢しない
- トイレで長居しない
- 肛門周りを清潔に保つ
また、薬の使用期間にも注意が必要です。
外用薬は10日程度、内服薬は1か月ほどで効果が見られない場合は、使用を中止して医療機関へ。
痔ろうのように市販薬では治らないタイプもあるため、「いつもと違う痛み」「膿が出る」「強い出血」がある場合は必ず受診しましょう。
まとめ:ボラギノールAシリーズはどれがいい?迷ったら症状と部位で判断を
ボラギノールAシリーズはどれがいいのか――その答えは「症状のタイプ」と「患部の位置」で変わります。
出血や腫れが強ければボラギノールAシリーズ、軽いかゆみや長期ケアにはボラギノールMシリーズ。
肛門の内側ならボラギノールA坐剤・ボラギノールA注入軟膏、外側ならボラギノールA軟膏。
再発しやすい体質や慢性的なうっ血には内服ボラギノールEXを検討してみましょう。
大切なのは「早めに正しいケアを始めること」。
恥ずかしいと感じるかもしれませんが、痔は誰にでも起こりうる身近な症状です。
無理に我慢せず、自分に合った方法でケアを続けていけば、快適な毎日を取り戻せます。
