「昔から愛用していたタナベ胃腸薬〈調律〉が店頭で見つからなくなった」「どこに行っても売っていない」――そんな声が最近増えています。
この記事では、販売終了に至った背景と今後の入手方法、そして代わりに選ばれている胃腸薬について、できるだけわかりやすくまとめました。
タナベ胃腸薬〈調律〉とは?どんな薬だったのか
まずは、この製品がどんな特徴を持っていたのかを簡単に振り返っておきましょう。
タナベ胃腸薬〈調律〉は、田辺三菱製薬(旧・田辺製薬)から販売されていた総合胃腸薬で、胃の不快感や膨満感、食べすぎ・飲みすぎなどに幅広く対応するOTC医薬品でした。
特徴的なのは、主成分として「トリメブチンマレイン酸塩」が配合されていたこと。
この成分は、胃や腸の運動を整える働きがあり、胃の動きが弱くても強くても“ちょうどいいリズム”に調整する作用があるとされています。つまり、胃が動きすぎてムカムカするときにも、逆に動きが鈍くて胃もたれする時にも対応できるバランス型の胃腸薬だったのです。
また、消化酵素(ビオヂアスターゼ・リパーゼ)や制酸成分、カンゾウ・ロートエキスなどの生薬も配合されており、「消化促進」「胃粘膜保護」「胃酸中和」など複数の働きを持っていました。
そのため、長年愛用していた人からは「食べすぎた時に助かった」「他の薬より自分に合っていた」という声が多く、人気の高いロングセラー製品でした。
突然の販売終了、その背景にあった出来事
そんなタナベ胃腸薬〈調律〉ですが、2015年頃から徐々に姿を消していきます。
実はそのきっかけとなったのは、同社が行った品質に関する自主回収でした。
田辺三菱製薬は2015年2月、同シリーズの「タナベ胃腸薬〈調律〉顆粒」の一部ロットで、主成分トリメブチンマレイン酸塩の含量が規格を下回る結果が出たと公表しました。
さらに、他の成分である炭酸水素ナトリウムなどが逆に規格を上回る事例も確認され、安定性試験の結果から品質のばらつきが見つかったのです。
同社は「他ロットでも同様の事象が起こる可能性を否定できない」として、顆粒タイプの全ロットを自主回収。当面の販売を休止すると発表しました。
安全面で大きな健康被害の報告はありませんでしたが、薬としての信頼性を保つために販売を一時停止する判断が取られたのです。
その後の展開:再販されず、事実上の終売に
当初は「販売休止」とされていましたが、その後、販売再開の案内は出ませんでした。
田辺三菱製薬の公式サイトにある「製造終了品一覧」には、現在タナベ胃腸薬〈調律〉の名前が掲載されており、事実上の製造・販売終了となっています。
一部では錠剤タイプが少し後まで流通していたとの情報もありますが、顆粒タイプの回収をきっかけに、シリーズ全体が市場から姿を消した形です。
発売当初(1997年頃)から長年販売されてきた製品でしたが、品質管理の見直しや製造コスト、他社製品との競合を考慮し、再開よりも終売を選択したと見られます。
現在の入手状況:店頭では販売終了、ネットでは在庫品がわずかに残るのみ
では、今タナベ胃腸薬〈調律〉を入手することはできるのでしょうか?
結論から言えば、正規の流通ルートではほぼ入手不可能です。
ドラッグストアや公式オンラインショップではすでに取り扱いがなく、メーカーも販売を終了しています。
ただし、ネット通販や一部のショップでは、古い在庫や流通済み商品が「在庫限り」で出品されているケースもあります。
例えばYahoo!ショッピングなどで60錠入りが販売されていることもありますが、使用期限や保存状態、真贋の確認が難しい場合もあるため注意が必要です。
医薬品は保存環境によって品質が変わるため、期限が切れているものや不明なルートで流通している商品を安易に購入するのは避けた方がよいでしょう。
再販の可能性は?メーカーからの公式発表はなし
販売休止時の公式発表では「販売再開時期についてはあらためてご案内申し上げます」と記載されていましたが、その後続報は出ていません。
田辺三菱製薬のOTC事業も年々ラインナップを整理しており、調律シリーズが再販される見込みは低いと考えられます。
一方で、長年愛用していたユーザーの間では「同じような作用の薬が欲しい」という声も根強く、SNSやブログでも代替品を探す投稿が増えています。
次の章では、タナベ胃腸薬〈調律〉の代わりとして検討できる市販薬を紹介します。
代わりになる市販薬は?トリメブチンマレイン酸塩配合や近い作用の胃腸薬
タナベ胃腸薬〈調律〉の特徴は、「胃腸運動を整える作用」を持つ点にありました。
この成分「トリメブチンマレイン酸塩」を配合する市販薬は多くありませんが、同様の作用を持つ製品はいくつか存在します。
代表的なのが「セレキノンS」(大正製薬)。
これは医療用医薬品の「セレキノン」と同じ有効成分を配合しており、胃や腸の運動をバランス良く整える働きを持ちます。
調律に近い体感を求める人が検討するケースが多い薬です。
また、ライオンの「パンシロントリム」シリーズも胃の動きを整える作用を重視しており、食べすぎ・胃の張りに対応する製品として人気があります。
他にも、小林製薬の「セルベール整胃錠」やエスエス製薬の「ガストール」など、胃の不快感を和らげる市販薬はいくつもあります。
それぞれ配合成分や作用の特徴が異なるため、「胃腸の動きを整えるタイプ」「胃酸を抑えるタイプ」「胃粘膜を保護するタイプ」など、症状に合わせて薬剤師に相談しながら選ぶのが安心です。
使用・購入時の注意点
販売終了品や在庫限りの医薬品を購入する場合、いくつかの点に注意が必要です。
- 使用期限が切れていないかを必ず確認する
- パッケージや説明書が正規のものであるかをチェックする
- 保存状態(高温・多湿)によって品質が劣化していないか
- 他の薬を服用している場合は、薬剤師や医師に相談する
特に、胃腸薬は複数の成分が含まれていることが多いため、他の薬との飲み合わせや既往症によっては注意が必要です。
「以前使って問題なかったから」と自己判断で服用するのではなく、必ず専門家のアドバイスを受けましょう。
タナベ胃腸薬〈調律〉販売終了のまとめ
・2015年に有効成分の含量低下が判明し、顆粒タイプを自主回収
・その後、再販されず製造終了品に
・現在は正規ルートでは販売されていない
・在庫品の購入は慎重に判断する必要がある
・代替品としてはセレキノンS、パンシロントリム、セルベール整胃錠、ガストールなどが候補
タナベ胃腸薬〈調律〉は、長年愛されてきたバランス型の胃腸薬でしたが、品質問題をきっかけに惜しまれつつも市場から姿を消しました。
とはいえ、「胃腸のリズムを整える」という考え方自体は今も生きており、同じような作用を持つ市販薬は複数あります。
無理に旧製品を探すよりも、自分の症状や体質に合った現行の薬を選ぶ方が安心です。
タナベ胃腸薬「調律」販売終了後の選び方と今後の対処法
タナベ胃腸薬〈調律〉がなくなってしまった今、最も大切なのは「自分の胃腸のタイプを理解すること」です。
ストレスや食生活の乱れ、加齢などによって胃腸の動きは変化します。
一時的な不調なら整腸系の市販薬で十分対処できますが、長引く症状や繰り返す不快感がある場合は、医療機関を受診することが望ましいです。
かつての「調律」という名前の通り、胃腸を無理に抑えたり刺激したりせず、“整える”ことが大切。
胃腸薬を上手に活用しながら、食事のリズムや睡眠の質を見直すことが、何よりの予防になります。
販売終了は残念ですが、製品の哲学は今も多くの胃腸薬に受け継がれています。
もし「調律」が自分に合っていたという方は、薬剤師にその旨を伝え、近い作用を持つ薬を提案してもらうのが一番の近道です。
