傷の治りが遅いときや褥瘡(じょくそう)、火傷のケアでお世話になった人も多い「イソジンシュガーパスタ」。しかし近年、「販売終了して手に入らない」「病院でも在庫がない」といった声が増えています。そんなときに気になるのが「代替品」や「薬局で買える代用品」です。この記事では、イソジンシュガーパスタの成分・効果をおさらいしながら、同じように使える代替薬をわかりやすく紹介します。
イソジンシュガーパスタとは?どんな薬だったのか
イソジンシュガーパスタは、創傷治癒を促進しながら殺菌効果を発揮する外用軟膏です。
主な成分は「精製白糖(スクロース)」と「ポビドンヨード」。この2つが組み合わさることで、傷口の治りを助けながら細菌感染を防ぐというダブルの働きを持っています。
精製白糖は、傷の表面から余分な水分を吸い取ることで浸透圧を高め、細菌の増殖を抑えます。同時に新しい皮膚の再生(肉芽形成)を促す働きもあります。
一方のポビドンヨードは、イソジンうがい薬などでも知られる消毒成分。幅広い菌やウイルスに対して殺菌作用を持ち、感染予防に役立ちます。
このように「糖+ヨード」の組み合わせにより、感染を防ぎつつ自然治癒力を高める――それがイソジンシュガーパスタの特徴でした。
イソジンシュガーパスタが必要とされる理由
この薬が評価されていた最大の理由は、ただの「消毒軟膏」ではなかった点にあります。
多くの消毒薬は殺菌力が強い一方で、皮膚の再生を遅らせてしまうことがあります。ところがイソジンシュガーパスタは、糖分による「創傷治癒促進作用」とヨードによる「殺菌作用」を両立。しかも膿があるような潰瘍面でも使えるという汎用性の高さがありました。
そのため、病院や在宅医療の現場では、褥瘡(床ずれ)・皮膚潰瘍・熱傷などの治療薬として長年重宝されてきたのです。
代替品はある?同じ成分を持つ医療用薬
現在、イソジンシュガーパスタと同等の成分を含む「後発医薬品(ジェネリック)」が複数販売されています。
成分面で見れば、これらは“代替品”として十分に機能します。代表的なものを紹介します。
・スクロードパスタ
精製白糖とポビドンヨードを配合した軟膏で、成分・効能ともにイソジンシュガーパスタとほぼ同じです。褥瘡や皮膚潰瘍、火傷の処置などに使用されます。
・ネグミンシュガー軟膏
こちらも同成分の後発医薬品です。病院によってはイソジンシュガーパスタの代わりに処方されることもあります。
・ネオヨジンシュガーパスタ軟膏
“シュガーパスタ”という名前が示す通り、基本的な組成は同じ。ポビドンヨード+白糖の構成で、潰瘍部位の殺菌と治癒を促します。
・ポビドリンパスタ軟膏
成分構成は同じで、粘着性や使用感に若干の違いがある程度です。病院の在庫状況によってはこちらが処方される場合も。
・ユーパスタ軟膏
イソジンシュガーパスタの先発品に近い位置づけ。作用・効能ともに同等で、医療現場で広く使用されています。
これらの薬はいずれも「医療用医薬品」に分類されており、基本的には処方箋が必要です。市販薬としてドラッグストアに並んでいることはほとんどありません。
薬局で買える代用品はあるのか?
結論から言えば、「完全に同じ効果を持つ市販薬」は存在しません。
ポビドンヨードを含む製品(イソジンうがい薬、イソジン軟膏など)はドラッグストアでも購入できますが、そこに“白糖”による創傷治癒促進効果はありません。
ただし、「傷の治りを助けたい」「消毒と保湿を両立させたい」という目的であれば、近い働きを持つ市販薬を組み合わせる方法もあります。
・ポビドンヨード系の消毒薬(例:イソジン軟膏)
・白色ワセリンやプロペトなどの保湿保護剤
・ハイドロコロイド素材の創傷パッド(キズパワーパッドなど)
これらを併用することで、「感染防止+湿潤環境の維持」により、ある程度イソジンシュガーパスタに近いケアが可能です。
ただし自己判断で使うよりも、薬剤師に症状を見せたうえで選ぶのが安全です。
病院で相談するのがベストな理由
イソジンシュガーパスタのような薬は、単なる「傷薬」ではなく、感染リスクを伴う創傷に用いられる医療用軟膏です。
そのため、自己判断で似た薬を使うと逆に悪化させることがあります。特に次のようなケースでは、医師または薬剤師に相談するのが基本です。
・潰瘍や褥瘡が広範囲にある
・糖尿病や血流障害を持っている
・ポビドンヨードにアレルギーがある
・妊娠・授乳中である
・甲状腺機能に異常がある
これらの条件に当てはまる場合、ヨードを含まない他の治療薬(例:ゲーベンクリーム、アクトシン軟膏など)を勧められることもあります。
症状の状態や原因によって、治療方針が変わるため、専門家の判断を仰ぐことが重要です。
自作の「シュガーパスタ」はおすすめできない理由
ネット上では「自分で作るイソジンシュガーパスタ」といった情報を見かけることがありますが、これは非常に危険です。
医療現場で使われるシュガーパスタは、精製度の高い白糖を使用し、有効ヨウ素量や無菌性が厳しく管理されています。
市販の砂糖やうがい薬を混ぜて作ると、デンプン混入や菌汚染によって殺菌力が落ちたり、逆に感染を招く可能性があります。
また、保存状態によっては成分が変質するおそれもあります。
傷口に使うものだからこそ、素人が調合したものを塗るのは絶対に避けましょう。
どうしても必要な場合は、医師に相談して代替品を処方してもらうのが安全です。
イソジンシュガーパスタの代替品を使うときの注意点
代替薬を使用する場合も、いくつかの共通注意点があります。
・患部を清潔にしてから塗布する
・ガーゼに薄くのばして貼る、または直接患部に塗ってガーゼで覆う
・1日1〜2回を目安に交換する
・アレルギー反応やかゆみが出た場合はすぐに使用を中止する
・長期間使う場合は、医師の経過観察が必要
これらを守ることで、感染リスクを抑えながら安全に使うことができます。
また、ポビドンヨードを含む薬を長期使用すると、まれに甲状腺機能への影響が出ることがあるため、特に高齢者や慢性疾患を持つ人は注意が必要です。
まとめ:イソジンシュガーパスタの代替品は医療機関で入手可能
イソジンシュガーパスタは「精製白糖+ポビドンヨード」という独自の組み合わせにより、殺菌と治癒促進を両立した優れた軟膏でした。
現在は販売が終了していますが、同成分を持つ後発品(スクロードパスタ、ネグミンシュガー軟膏、ネオヨジンシュガーパスタ軟膏、ユーパスタ軟膏など)が複数存在し、医療機関で処方してもらうことができます。
一方で、一般の薬局で同じものを購入するのは難しく、完全に同じ作用を持つ市販薬はありません。
感染や治癒を伴う創傷ケアでは、自己判断よりも医師や薬剤師のアドバイスが欠かせません。
もしイソジンシュガーパスタが手に入らなくて困っている場合は、「同成分の後発医薬品がないか」「傷の状態に応じた代替治療が可能か」を、まず医療機関で相談することが一番の近道です。
正しい知識と安全な選択で、無理のない傷ケアを続けましょう。
