「最近、あのVAT69を全然見かけなくなった…」
ウイスキー好きのあいだで、そんな声が聞こえるようになりました。
かつてはバーでも家庭でも定番だったブレンデッド・スコッチ「VAT69（ヴァット69）」。一体なぜ姿を消してしまったのでしょうか。
この記事では、終売の真相や背景、さらに再販の可能性や代替銘柄までをわかりやすく整理していきます。
VAT69とはどんなウイスキー？
まずはVAT69という銘柄の成り立ちから。
VAT69は、1882年にスコットランドのウイスキー商ウィリアム・サンダーソンが手掛けたブレンデッドスコッチです。
彼は100樽のブレンドサンプルを作り、その中で最も出来の良かった“69番の樽（VAT No.69）”を選んだことから、そのまま「VAT69」と名付けられました。
製造元は現在、世界的酒類企業ディアジオ（Diageo）。
モルトとグレーンを40種類以上ブレンドし、ライトでバランスの取れた味わいを持つことが特徴です。
かつては南極探検隊のアーネスト・シャクルトンが携行したという逸話も残るなど、歴史あるスコッチとして知られています。
VAT69終売の噂は本当なのか？
さて本題。VAT69は本当に終売したのでしょうか？
結論から言うと、**「完全な終売ではなく、国内流通が縮小している」**というのが実態に近いようです。
一部の酒販店では「販売終了商品」「メーカー休売」と表示されており、日本の正規流通が途絶えていることは確かです。
しかし、並行輸入ルートでは現在も700mlボトルが販売されており、海外では生産・販売が継続されています。
つまり、メーカーが製造自体をやめたわけではなく、日本市場での取り扱いが減少した、あるいは輸入元が撤退したと考えられます。
なぜVAT69は姿を消したのか？その理由を探る
VAT69が“消えた”背景には、いくつかの要因が重なっています。
1. 原酒構成・キーモルトの変化
ブレンデッドウイスキーは、構成モルトが変わると味わいも変化します。
VAT69はかつて、グレネスク蒸留所（旧ヒルサイド）などをキーモルトとして使用していましたが、同蒸留所はすでに閉鎖。
そのため、原酒の入れ替えやブレンド比率の見直しが行われた結果、往年の味が再現できなくなったとも言われています。
2. 親会社によるブランド整理
VAT69を保有するディアジオは、ジョニーウォーカーやベルズなど他の有力ブランドも抱えています。
世界的なプレミアム志向の流れのなかで、比較的安価なVAT69は販売重点から外れた可能性があります。
「ブランドポートフォリオの再編」によって、主要市場が絞り込まれたのです。
3. 日本市場の変化
日本ではここ数年、「ジャパニーズウイスキー」や「シングルモルト」の人気が高まり、手頃なブレンデッドスコッチの需要が相対的に減少しました。
また、円安や輸入コストの上昇、酒税改正なども重なり、低価格帯の輸入ウイスキーが採算に合わなくなったという指摘もあります。
4. 味わい・評価のギャップ
往年のVAT69を知る人ほど、「昔と違う」と感じることが多いようです。
オールドボトル時代にはピート香と厚みがあったのに対し、現行品はややライトで穏やかな味わいに。
このギャップがブランド離れを招き、販売量減少につながったという見方もあります。
再販の可能性はあるのか？
2025年現在、VAT69の再販や復活に関する公式発表は確認されていません。
しかし、世界的なウイスキーブームの中で、過去ブランドの“復刻”や“限定リリース”が増えているのも事実です。
ディアジオは過去にも、閉鎖蒸留所の原酒を用いた限定シリーズを販売してきました。
そのため、VAT69も将来的に復刻版やプレミアム仕様として再登場する可能性はゼロではありません。
ただし、現時点で一般流通に戻る見通しはなく、入手を考えるなら在庫品や並行輸入を頼るのが現実的です。
いま手に入るVAT69と価格帯
日本国内では、Amazonや酒販サイトで並行輸入品の在庫が見つかることがあります。
価格は700mlで1,500〜3,000円前後と、かつてのリーズナブルなスコッチとしての位置づけを維持しています。
一方、1980年代以前のオールドボトル（特級表記やVAT69リザーブなど）はすでに市場にほとんどなく、コレクター向けの古酒として取引されています。
味わいも現行品とはまったく異なり、当時のモルト構成を感じたい愛好家からは根強い人気です。
VAT69の味わいを改めて振り返る
現行のVAT69は、甘みとバニラ香が主体のやさしいブレンデッド。
メープルシロップのような甘さ、蜂蜜、ナッツのニュアンスを感じられ、ストレートよりもハイボールに適した味わいです。
一方、オールドボトルはもっと重厚で、ピート香とモルティな厚みがありました。
当時を知る人が「今のVAT69は別物」と感じるのも無理はありません。
ただ、ブレンド構成の変化はウイスキーの宿命とも言えます。
同じ銘柄でも時代によって中身は常に変わっており、それが歴史の面白さでもあります。
VAT69の代替銘柄を探すなら
「もうVAT69が買えないなら、どれを選べばいい？」
そんな方のために、味わいや価格帯が近い銘柄を挙げておきます。
- デュワーズ ホワイトラベル：ややライトだが、ハイボールに最適。
- ベルズ オリジナル：VAT69と同じディアジオ系。バランス重視で飲みやすい。
- ティーチャーズ ハイランドクリーム：ピート香を少し感じたい人向け。
- ジョニーウォーカー レッドラベル：安定した供給と定番感。
いずれも1,500〜3,000円前後で手に入りやすく、VAT69の“カジュアルスコッチ”というポジションを引き継ぐ存在です。
名ウイスキーが消えた理由を考える
VAT69が終売したというより、「時代が変わった」と言う方が正確かもしれません。
ブレンデッド全盛の時代には、多くの人が“手頃でうまいスコッチ”を求めていました。
しかし、今はシングルモルト志向やクラフトウイスキー人気が主流。
その中で、VAT69のようなクラシックブランドが影を潜めるのは、流通戦略や消費者嗜好の変化を象徴しているとも言えます。
同時に、長い歴史を持つウイスキーが静かに市場から姿を消していく寂しさもあります。
VAT69終売の真相とこれから
現時点でVAT69が完全に終売したわけではありません。
ただし、日本の正規販売ルートではほぼ流通が止まり、在庫限り・並行輸入に頼る状況です。
背景には、原酒構成の変更、ブランド戦略の見直し、国内市場の変化など複合的な要因が存在します。
それでもVAT69は、130年以上続いた伝統とエピソードを持つスコッチとして、今も多くのファンに記憶されています。
もし再び店頭で見かける日が来たら、その時はきっと“復活の一杯”として味わいたくなるはずです。
そして、いま手元にある一本を大切に楽しむことこそ、この名ウイスキーへの何よりの敬意でしょう。
VAT69 終売の今を振り返って
「終売」という言葉が広まった背景には、単なる供給の停止ではなく、時代とともに移り変わる嗜好の流れがあります。
VAT69が再び注目を浴びる日が来るかは分かりませんが、その名を知る人たちにとっては、いつまでも忘れられない一本であることに違いありません。
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