「えっ、エンシェントエイジって終売なの？」
バーボン好きの間でそんな声が広がり、SNSでもちょっとしたざわつきを見せています。長年、手頃な価格で本格的な味わいを楽しめる定番として愛されてきたエンシェントエイジ。実際にどのモデルが終売になったのか、なぜそうなったのか。そして、今後どうすればあの味に再会できるのか――。今回はその真相をじっくり紐解いていきます。
エンシェントエイジとは？アメリカを代表するロングセラーバーボン
エンシェントエイジ（Ancient Age）は、アメリカ・ケンタッキー州フランクフォートにあるバッファロートレース蒸溜所で生まれた歴史あるバーボンです。
1940年代に誕生し、当初は「古き良きアメリカの味」を象徴するブランドとして人気を集めました。アルコール度数は40％（80プルーフ）。コーンを主体にしたマッシュビルにライ麦を多めに配合しており、スパイシーで香ばしい風味が特徴です。
現行品は手頃な価格帯ながら、まろやかでバランスの取れた味わいで知られています。キャラメルやトフィー、バニラの香りがあり、軽やかな飲み口の中にも深みを感じる一本です。
このエンシェントエイジを手掛けているのが、アメリカのサゼラック社（Sazerac Company）。ただし、ブランドの所有権は日本の宝酒造が持っています。そのため、日本市場でも古くから安定して流通していました。
「終売」と言われる理由は？年数表記モデルが姿を消した背景
まず結論から言うと、エンシェントエイジ自体が完全に終売になったわけではありません。
しかし、かつて存在した「年数表記付きモデル」――特に**エンシェントエイジ10年やエンシェントエイジ8年**（通称：トリプルA）などの上位ボトルが次々と市場から姿を消していったのです。
1. 熟成原酒の確保が難しくなった
バーボン業界全体で共通する悩みですが、近年は長期熟成原酒の在庫が逼迫しています。
人気の高まりに対して熟成が追いつかず、年数表記を維持するのが難しくなっているのです。エンシェントエイジも例外ではなく、10年・8年といった熟成モデルを継続的に生産する余裕がなくなったと見られています。
2. ブランド戦略の見直し
エンシェントエイジはもともと「手頃で本格的」なバーボンとして愛されてきましたが、メーカー側はより上位の銘柄（バッファロートレースやブラントンなど）を中心に再編を進めています。
そのため、ブランド内のポジションを整理し、若い原酒を使った現行モデルに統一したと考えられます。結果として、「年数表記＝プレミアムモデル」が廃止されたのです。
3. 日本市場向けモデルの縮小
日本では宝酒造が輸入を担当してきましたが、販売量が限定的な年数表記モデルは在庫処分ののちに終売扱いとなっています。日本市場専用ボトルであった「エンシェントエイジ8年」は、現在ほとんど入手できません。
4. 世界的なバーボン需要の急増
近年のウイスキーブームで、バーボンの需要は世界的に拡大しました。
バッファロートレース蒸溜所も生産量を増やしてはいるものの、古い原酒を多く抱える余裕はありません。結果として、長熟タイプの製造をやめ、若い原酒を使ったノンエイジ仕様（36か月以上熟成など）へと切り替わったのです。
現在も入手できるエンシェントエイジは？
「じゃあもう飲めないの？」というと、そうではありません。
現行モデルの**エンシェントエイジ**（ノンエイジ）は、今も流通しています。ラベルには「Kentucky Straight Bourbon Whiskey」と表記され、バッファロートレース蒸溜所の正統な系譜に連なる一本です。
味わいは以前より若くライトになった印象ですが、キャラメルや穀物の甘み、ほのかなスパイス感が健在。バーボン初心者にも飲みやすい一本として根強い人気を保っています。
日本の酒販店やネット通販でも比較的入手しやすく、価格も手頃。終売の噂を聞いて「もう買えない」と焦る必要はありません。ただし、過去の年数表記モデルと同じ味を求める場合は注意が必要です。
終売となったモデルの特徴と違い
かつての「エンシェントエイジ10年」や「エンシェントエイジ8年」は、今の現行品とは明確に異なるキャラクターを持っていました。
長期熟成による濃厚なキャラメル香や深いコク、トフィーのような甘み、オーク由来のほろ苦さが特徴で、「安価なバーボンとは思えない完成度」と高評価を得ていました。
また、8年・10年モデルはいずれも高ライ麦比率のマッシュビル（通称マッシュビル#2）を使用しており、スパイシーな刺激と複雑な余韻が際立っていました。これがファンの支持を集め、長く愛された理由でもあります。
今も古酒市場では、これらのボトルがプレミア価格で取引されています。特に10年熟成モデルはオークションサイトで数万円台の値をつけることもあり、コレクターの間では“幻のエンシェントエイジ”と呼ばれる存在です。
代替品・似た味わいを楽しめるおすすめ銘柄
では、今から手に入る「エンシェントエイジに近い」バーボンはあるのでしょうか。
実は、同じ蒸溜所で作られている別ブランドが非常に近い味わいを持っています。
1. バッファロートレース（Buffalo Trace）
同蒸溜所の看板ブランドであり、マッシュビル#1（低ライ麦）を使用。エンシェントエイジよりやや柔らかく、バニラやドライフルーツの香りが豊か。上位ラインの品質を求めるなら最有力の選択肢です。
2. ベンチマーク（Benchmark）
実はエンシェントエイジと同じマッシュビル#2を使用しており、実質的な“兄弟分”です。価格も手頃で、現行エンシェントエイジより濃厚な味わいを感じられることもあります。かつての10年モデルに近い風味を探しているなら要チェック。
3. イーグルレア（Eagle Rare）
こちらもバッファロートレース系列。熟成年数が長く、深みと落ち着きのある味わい。エンシェントエイジの“失われた長熟感”を求める方にはぴったりですが、入手難度は高めです。
4. エヴァンウィリアムスブラックやエライジャクレイグ
バーボンの定番ブランドですが、甘みとスパイスのバランスがよく、エンシェントエイジ好きに馴染みやすい味わいです。特にエヴァンウィリアムスブラックは価格も安定しており、日常飲みに適しています。
ファンの声：終売を惜しむ理由
ネット上では、「学生時代からの愛飲ボトルが消えて寂しい」「10年ボトルのあの香ばしさが忘れられない」といった声が多く見られます。
エンシェントエイジは、決して高価なウイスキーではなかったものの、“手頃な価格で本格的な味を楽しめる”という絶妙なバランスが支持されてきました。
長く続くブランドには、ただの味以上の“記憶”が宿ります。家飲みの定番、バーでの思い出の一杯――そんな存在が消える喪失感こそ、「終売の衝撃」と呼ばれる所以でしょう。
エンシェントエイジ終売のまとめと今後の楽しみ方
改めて整理すると――
- ブランド全体ではなく、年数表記付きモデルが終売
- 原酒不足やブランド再編が主な理由
- 現行モデルは今も入手可能
- 代替品としては「バッファロートレース」「ベンチマーク」などが有力
つまり、“エンシェントエイジが完全に消えたわけではない”のです。
ただし、10年・8年の熟成モデルが持っていた深みを再び味わうには、現行モデルや関連ブランドをうまく選び、飲み比べる楽しみを見つけることがポイントです。
古き良きバーボンの香りを受け継ぐ現行エンシェントエイジをもう一度手に取り、グラスを傾けてみてください。そこには、時代を超えて愛されてきたバーボンの原点が、きっとまだ息づいています。
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