かつてミニバンの代名詞として人気を誇ったホンダ「オデッセイ」。1994年の登場以来、ファミリーカーの定番として愛され続けてきましたが、2021年末をもって国内生産が終了し、実質的な“終売”を迎えました。なぜ長年にわたり支持されてきたモデルが姿を消したのか。そして、後継にあたる車種や復活の動きはあるのか。ここでは、その背景と最新情報をわかりやすく整理していきます。
オデッセイとは?ホンダを代表するミニバンの歩み
ホンダ・オデッセイは、1990年代半ばに登場した初代モデルから続くミニバンの代表格です。セダンのような走行性能と、ミニバンの広い室内空間を両立したことで、当時のファミリー層から絶大な人気を得ました。
初代〜3代目までは「低床・低重心」の乗用車的な設計が特徴で、スタイリッシュで走りの良い“スポーティミニバン”として高評価を獲得。4代目以降はスライドドアを採用し、より実用性を重視する方向に進化しました。そして2013年に登場した5代目では、上級志向のラージミニバンへと変貌。高級感のあるデザインや先進的な装備を備え、ホンダのフラッグシップ的存在となっていました。
しかし、そんな人気モデルが2021年末をもって生産終了。多くのファンが「なぜ?」と驚いたのも無理はありません。
オデッセイ終売の理由は?背景にある3つの要因
1. 生産拠点・狭山工場の閉鎖
最大の要因は、ホンダの埼玉・狭山工場の閉鎖です。オデッセイはこの工場で生産されていましたが、2021年いっぱいで稼働を終了。その結果、同じラインで作られていたレジェンドやクラリティなども同時に生産終了となりました。
工場の老朽化や、国内生産体制の効率化といった経営上の理由が背景にあり、「販売不振で打ち切り」というよりは、構造的な事情による生産停止といえるでしょう。
2. 市場トレンドの変化
もうひとつの要因は、ミニバン市場そのものの変化です。ここ数年、SUVやクロスオーバータイプの人気が急上昇し、ファミリー層の購買傾向も変化しました。かつて主役だったミニバンは、少しずつ影を薄めています。
オデッセイは高級志向の大型ミニバンとして独自のポジションを築いていましたが、トヨタ・アルファード/ヴェルファイアのブランド力や、日産・エルグランドとの競争が激化。ユーザー層の嗜好変化も相まって、販売面での存在感が相対的に低下していきました。
3. ホンダのラインナップ整理
ホンダはこの数年、国内外の生産体制を再構築し、モデルラインを集約しています。車種を絞り、電動化やグローバル戦略に集中する流れの中で、販売ボリュームの少ない大型ミニバンは整理対象となりました。
つまり、オデッセイ終売は単なる販売不振ではなく、ホンダ全体の戦略転換の一環といえるのです。
販売終了はいつ?在庫販売と「事実上の終売」
正式な発表によると、オデッセイの国内生産は2021年12月に終了しました。
メーカーへの新規注文は同年秋ごろに締め切られ、以降は在庫車のみの販売体制に移行。2022年中にはディーラー在庫もほぼ完売し、カタログからも削除されています。
「マイナーチェンジ直後に終売」となったのも話題を呼びました。2020年11月にフロントデザインや安全装備を刷新したばかりだったため、ファンからは「まだ新しくなったばかりなのに」「もったいない」といった声が多く聞かれました。
終売後も人気は健在?オデッセイが愛された理由
オデッセイが長年支持されてきた理由は、単に“広い”や“便利”といった実用性だけではありません。ミニバンでありながら走行性能に優れ、上質な乗り味を提供する点が最大の魅力でした。
低床設計による安定感のある走り、静粛性の高い室内、そして上質な内装。これらはホンダの技術力の象徴であり、“走るミニバン”という独自のポジションを確立していました。
また、2020年モデルでは「Honda SENSING」に後方誤発進抑制機能を追加するなど、安全装備面でも高い完成度を誇りました。
中古車市場でもこの評価は継続しており、特に最終型やハイブリッド仕様のe:HEVモデルは今でも高値で取引されています。「終売=価値の低下」ではなく、「むしろ今が買い時」という声も多く聞かれます。
後継車種は?実質的な代替モデルと復活の動き
オデッセイの後継として正式に発表されたモデルはありません。しかし、ホンダのミニバンラインを見渡すと、ステップワゴンやフリードが事実上の“後継的存在”として位置づけられています。
ステップワゴンが担う中核的ポジション
2022年に登場した新型ステップワゴンは、「家族で快適に過ごせるミドルミニバン」として再定義されました。室内空間の広さや走りの質感、安全装備の充実など、かつてのオデッセイに通じる価値を受け継いでいます。
サイズはややコンパクトながら、取り回しやすさと快適性のバランスがよく、オデッセイのユーザーが乗り換えるケースも増えています。
再登場した“新型オデッセイ”の存在
実は、オデッセイは完全に消滅したわけではありません。2023年12月、ホンダは中国生産モデルを日本に導入する形で“オデッセイ”の再発売を発表しました。
デザインのリファインや「Honda CONNECT」対応など、最新の装備を搭載し、以前のオデッセイの上級志向を継承。輸入モデルとしての復活ですが、ラージミニバンの需要に再び応える形です。
この“復活オデッセイ”は、国内での空白期間を経て再評価される可能性もあり、「終売→再投入」という珍しい経緯を辿っています。
他社との比較:オデッセイが築いた独自の立ち位置
ミニバン市場の主役といえば、トヨタのアルファード/ヴェルファイアや日産のエルグランドが挙げられます。これらのモデルは豪華志向が強く、内装・装備・ブランドイメージで高級車的な位置づけを確立しています。
一方、オデッセイは“走りと質感の両立”という方向性で差別化を図ってきました。背の低いボディによる安定した走行性能、重心の低い乗り味、ホンダらしいエンジンフィールなど、他社とは異なる価値を提供していました。
近年のSUVブームの中でも、「運転する楽しさがあるミニバン」として一定のファン層を維持していたことは特筆すべき点です。
そのため、終売を惜しむ声は多く、ネット上でも「これほど完成度の高いミニバンはもう出ないのでは」という意見が多く見られます。
終売による影響とユーザーの選択肢
オデッセイがカタログから消えたことで、ホンダの国内ラインナップから大型ミニバンが一時的に消滅しました。この“空白期間”は、ユーザーにとって少なからず影響を与えています。
中古車市場の活況
生産終了の報道以降、オデッセイの中古車価格は上昇傾向にあります。特に最終モデルのハイブリッド仕様や上級グレードは人気が高く、「最後の純国産オデッセイ」として希少価値が増しています。
購入希望者の間では「今のうちに状態の良い個体を確保したい」という動きも目立っています。
保守・維持への不安
メーカーによる部品供給やサポートは一定期間続くとはいえ、長期的には維持コストが上がる懸念もあります。特に電子制御部品やハイブリッド系の修理費は高額になりやすく、長く乗る予定のユーザーは注意が必要です。
後継・代替モデルの検討
ラージミニバンを求める場合、ホンダ内ではステップワゴンや再投入された新型オデッセイが候補となります。
また、他社ではトヨタ・アルファード/ヴェルファイアや日産・エルグランドが有力な選択肢。価格・燃費・装備を比較しながら、自分のライフスタイルに合った1台を見極めることが重要です。
まとめ:オデッセイ終売は「時代の転換点」
ホンダ・オデッセイの終売は、単なる一車種の終了ではなく、日本の自動車市場が大きく変化していることを象徴しています。
ミニバン全盛の時代から、SUV・電動化へとシフトする流れの中で、長年愛されたモデルがひとまず幕を下ろしたのです。
しかし、2023年の再投入に見られるように、オデッセイというブランドは完全には消えていません。ユーザーの需要や市場の動き次第では、再び“復活の象徴”となる可能性も秘めています。
長く家族の思い出を支えてきたミニバン、オデッセイ。
その歴史と価値を振り返りつつ、次の時代のホンダ車がどんな形で進化していくのか、これからも注目していきたいところです。

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