ウイスキー好きの間で長く愛されてきた「グレンモーレンジ10年」。ハイランド地方を代表する定番のシングルモルトとして、多くのバーや家庭の棚に並んできました。そんな“定番中の定番”が終売になるというニュースが、2024年に入り大きな話題を呼んでいます。なぜ、あのグレンモーレンジ10年が姿を消すことになったのか？そして、その後継として登場する「グレンモーレンジ12年」との違いはどこにあるのか？この記事では、その真相を詳しく解説します。
グレンモーレンジ10年とは？定番ウイスキーの魅力
まずは、「グレンモーレンジ10年」とはどんなウイスキーだったのかをおさらいしましょう。
正式名称は「グレンモーレンジ オリジナル 10年（Glenmorangie The Original 10 Years Old）」。スコットランド・ハイランド地方のティン（Tain）にあるグレンモーレンジ蒸留所で造られる代表的なシングルモルトです。
この蒸留所は1843年創業。世界でもっとも背の高いポットスチルを使用しており、軽やかで華やかな酒質を生み出すことで知られています。グレンモーレンジ10年は、その繊細なスタイルを象徴する一本。柑橘系の香り、バニラ、蜂蜜、そしてほんのりとしたオークのニュアンスがバランスよく調和し、初心者にも飲みやすい味わいが特徴でした。
その優しい香味と口当たりから「ハイランドの優等生」と呼ばれることもあり、世界中で人気を博してきました。日本でもウイスキー入門者から上級者まで幅広いファンが存在し、「これぞグレンモーレンジ」と言われるほどの定番でした。
終売の事実 ― 正規代理店が発表した「販売終了のお知らせ」
そんなグレンモーレンジ10年が終売になるというニュースが、2024年夏に正式に発表されました。
正規輸入代理店である「MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社」が、2024年7月に「グレンモーレンジ10年 700ml 販売終了のご案内」を発表。そこには「現在庫をもって販売を終了いたします」という明確な文言が記されています。
つまり、すでに生産は終了し、流通しているボトルが市場に残る限りの販売という状況。全国の酒販店やバーでも「終売」「在庫限り」と表示されるようになり、ウイスキーファンの間で「なくなる前に買わなきゃ」という動きが広がりました。
SNS上では、「長年飲んできたボトルが終売になるなんて信じられない」「終売と聞いてすぐに2本買い足した」など、惜しむ声が続々と上がっています。
終売の理由 ― なぜ10年は姿を消したのか？
では、なぜグレンモーレンジ10年は終売になったのでしょうか。メーカー側からの公式な理由としては、「より美味しいウイスキーを届けるため」というものです。実際、海外メディアやプレスリリースでも、10年から12年へと進化する背景には“品質向上”の意図があることが明かされています。
理由1：12年熟成の方が「味わいが優れていた」
グレンモーレンジのマスターディスティラーやテイスティングパネルによると、「10年よりも12年熟成させた原酒の方が、よりリッチでバランスが取れた味わいに仕上がった」とのこと。
熟成期間が2年延びることで、樽由来の甘みやバニラ香が深まり、オレンジや桃のようなフルーティさが一層際立つようになったそうです。これは単なる年数の延長ではなく、「グレンモーレンジらしさ」をより極めた結果とも言えます。
理由2：ブランドの刷新とプレミアム化戦略
もう一つの背景には、ブランドイメージの刷新があります。
10年という年数表示は“入門向け”という印象を与えやすく、上位レンジの製品との差別化が難しい面もありました。そこで、よりプレミアムな印象を打ち出すために、ブランドのフラッグシップを「グレンモーレンジ12年」へと格上げ。パッケージデザインも一新し、“新しい時代の定番”として再スタートを切ったわけです。
理由3：原酒供給・生産体制の見直し
グレンモーレンジ蒸留所では、近年需要拡大に対応するための設備投資を進めており、熟成庫や原酒管理体制の見直しも行われています。そのなかで、原酒の在庫バランスや熟成年数の最適化が進み、より長熟タイプへのシフトが自然な流れとなったと考えられます。
新定番「グレンモーレンジ12年」との違い
10年の後継として登場したのが、「グレンモーレンジ12年」。2024年8月21日に正式リリースされました。
見た目はこれまでの10年版に近いデザインながら、味わいは一段と深みのある仕上がりになっています。
新しい12年版は、バーボン樽熟成によるバニラやキャラメルの甘み、ピーチやオレンジのフルーティーさがより強調されています。口当たりはシルキーで、余韻には心地よい甘さとスパイス感が残ります。
一方で、10年版特有の軽やかさや柑橘の爽やかさはやや控えめになり、「より丸みのある味わい」に進化しています。
SNSでは「10年の爽やかさが好きだった」「12年はより濃厚で華やか」と意見が分かれており、どちらにもファンが存在するようです。
終売による市場への影響
グレンモーレンジ10年の終売により、酒販市場ではすでに動きが出ています。
国内の正規販売ルートでは在庫が減少し、「終売品」として高値で取引されるケースも出始めました。一部のオンラインショップでは、以前よりも数割高い価格で販売されているところもあります。
ただし、終売＝即プレミア化というわけではなく、並行輸入品などの在庫がしばらく流通する可能性もあります。
とはいえ、時間が経つにつれて10年版のボトルが手に入りにくくなるのは確実です。ファンの間では「飲み納めとして一本確保しておきたい」「12年と飲み比べをしたい」という声が多く見られます。
また、バー業界でもメニュー変更が進んでおり、「10年を扱うのは在庫がある限り」「今後は12年へ切り替え」とする店舗が増えています。これにより、今後「グレンモーレンジ10年をグラスで飲める場所」は徐々に減少していくでしょう。
グレンモーレンジ10年を愛するファンたちの声
ウイスキー愛好家の間では、今回の終売を「時代の節目」として受け止める声も多く見られます。
「10年はウイスキーを好きになるきっかけだった」「飲みやすくていつも家に置いていた」など、思い入れの強いユーザーも少なくありません。
一方で、「12年はより完成度が高くて良い進化だ」「ブランドが前向きに進化している証拠」と評価する声もあり、ファンのあいだでも“惜別と期待”が入り混じる複雑な心境が伺えます。
終売という言葉にはネガティブな響きがありますが、実際には「より良い品質へのアップデート」というポジティブな意味も込められているのです。
グレンモーレンジ10年終売のまとめ ― 今こそ飲むべき理由
ここまで見てきたように、「グレンモーレンジ10年終売」は単なる販売終了ではなく、ブランド進化の一環としての決断です。
10年版の軽やかでフルーティーな味わいは、多くの人のウイスキー人生を支えてきました。そして今、新しいグレンモーレンジ12年がその系譜を引き継ぎ、さらにリッチでエレガントなスタイルへと進化しています。
もしあなたが10年版のファンであれば、今がまさに“飲み納め”のチャンスです。手元に一本確保しておけば、いつか12年と並べて飲み比べるという楽しみ方もできるでしょう。
終売のニュースは寂しいものですが、グレンモーレンジというブランドの精神はこれからも続きます。
10年で培った伝統と、12年で迎える新たな時代。その両方を味わいながら、変化を楽しむのもウイスキーの醍醐味ではないでしょうか。
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