近ごろ、「サッポロ フォー ナイン（99.99）」を見かけなくなった、と感じている人は多いはず。あのスタイリッシュなパッケージと、キレのあるクリアな味わいが印象的だった缶チューハイは、いったいどこへ消えてしまったのか。
この記事では、サッポロ フォー ナインが終売に至った背景を、当時の市場動向やメーカーの方針、そして現在の代替商品まで徹底的に追っていく。
発売当初のフォー ナインは“ストロング系の新星”だった
2018年、サッポロビールが発売したサッポロ フォー ナインは、アルコール度数9％という「ストロング系」カテゴリーに属するRTD（Ready to Drink）飲料だ。
“99.99％の高純度ウォッカ”をベースに、雑味のないクリアな味わいを実現したのが最大の特徴で、発売時のキャッチコピーは「研ぎ澄まされたうまさ」。当時、強めのアルコールでスッキリ飲めるチューハイが流行していたこともあり、発売直後から大きな注目を集めた。
シリーズには「クリアレモン」「クリアドライ」「クリアグレープフルーツ」など複数のフレーバーがあり、缶デザインも黒×シルバーの高級感ある仕上げで、“大人のストロング”という印象を与えた。
年間販売目標を早期に達成したという報道もあり、初動としてはサッポロのRTDブランドの中でも成功した部類に入るだろう。
ストロング系ブームが巻き起こした市場の変化
2017〜2019年ごろは、いわゆる“ストロング系缶チューハイ”の黄金期だった。
サントリーの「−196℃ ストロングゼロ」やキリンの「氷結ストロング」と並び、サッポロ フォー ナインもその一角を占めていた。手軽に強いお酒を楽しめる点が支持され、仕事帰りの一本として選ばれることも多かった。
しかし、ブームの裏では課題も生まれていた。
一つは“飲み過ぎ”や“高アルコール依存”への懸念だ。価格が手頃でアルコール度数が高いという特徴が、一部の消費者の過剰摂取につながるのではという指摘もあり、社会的な視線が厳しくなっていった。
さらに、2020年代に入ると健康志向の高まりが加速。低アルコール・ノンアルコール飲料市場が拡大し、「ほどよく酔える」や「お酒の味だけ楽しみたい」といったニーズが主流になっていった。
つまり、サッポロ フォー ナインが登場したときの“強さ”を求める時代から、“軽やかさ”を求める時代へと移行していったのだ。
売り場から消え始めたフォー ナイン
2023年ごろから、コンビニやスーパーでサッポロ フォー ナインを見かけなくなったという声が増えた。
サッポロの公式発表では明確な「販売終了時期」は示されていないが、複数の情報サイトや愛飲者の投稿によると、2023年中に全フレーバーが生産終了となったとされている。
製造終了の理由について、公式には言及がない。だが、同時期にストロング系全体の販売が減少していることや、他メーカーも“高アルコール新商品の発売を控える方針”を発表していたことから、業界全体の流れとして撤退を決めた可能性が高い。
サッポロとしても、RTD市場では次世代の低アルコール商品やクラフト系チューハイなど、より幅広い層を意識した展開にシフトしており、サッポロ フォー ナインは役目を終えたと判断されたのだろう。
終売の背景にあった4つの要因
フォー ナインの終売を理解するには、いくつかの構造的な要因が見えてくる。
1. 市場のトレンドが変化した
ストロング系チューハイの販売金額は、2017年をピークに減少傾向にある。
2024年には一部メーカーが「アルコール8％以上の商品を今後発売しない」と発表し、時代のトレンドが完全に低アル志向へ移った。サッポロ フォー ナインの9％という度数は、かつての強みがそのまま弱点になった形だ。
2. ブランドの差別化が難しくなった
ストロング系市場は似たコンセプトの商品が乱立していた。
「クリア」「キレ」「ストロング」といったキーワードがどのメーカーからも出ており、ブランドごとの個性が見えづらくなっていた。サッポロ フォー ナインの洗練されたデザインや味わいも、数年経つうちに埋もれてしまったのかもしれない。
3. 企業方針の転換
サッポロビールは2024年以降、ストロング系缶チューハイの新商品を発売しない方針を固めたと報じられている。
健康や社会的課題を考慮し、より“安心して楽しめるお酒文化”を志向する姿勢に変わったと考えられる。ブランドの統廃合やラインアップ整理の中で、サッポロ フォー ナインも整理対象となったのだろう。
4. 規制や社会的要請の影響
ストロング系飲料は、行政や保健当局からも「手軽に高アルコールを摂取できることへの懸念」が示されていた。メーカーが自主的に販売や新商品展開を控える流れがあり、サッポロ フォー ナインもその波の中にあったと考えられる。
今、フォー ナインはどこで手に入る？
終売後も、サッポロ フォー ナインを探す声は絶えない。
一部通販サイトやオークションでは、在庫限りの販売が続いていることもあるが、ほとんどがプレミア価格になっている。
特に「クリアレモン」「クリアグレープフルーツ」「クリアドライ」など人気のフレーバーは入手が難しく、希少品化している。
実店舗ではほぼ流通しておらず、再販の可能性も今のところ低い。
ただし、サッポロは近年クラフト系や素材志向のチューハイを展開しており、「純度や素材のこだわり」というフォー ナインのDNAが、別の形で引き継がれる可能性はある。
代わりに楽しめるチューハイは？
サッポロ フォー ナインのような「高アルコール×クリアな味わい」を求める人に向けて、次のようなブランドが候補に挙がる。
- サントリー「−196℃ ストロングゼロ」：安定した人気と豊富なフレーバー展開。
- キリン「氷結ストロング」：フルーツ感とキレのバランスが魅力。
- アサヒ「贅沢搾りストロング」：果実感をしっかり味わえるタイプ。
一方で、最近の潮流としては、5〜7％程度の“ミドルストロング”や“微アル系”が増えており、「ほどよく飲める」チューハイが主流になりつつある。飲みやすさ・健康配慮・次の日の軽さといった要素が重視されており、消費者の価値観そのものが変化しているのだ。
サッポロ フォー ナイン 終売 が示す時代の転換点
サッポロ フォー ナインの終売は、単なる一商品の終了ではなく、日本のアルコール市場の変化を象徴している。
“強さ”を競い合っていた時代から、“心地よさ”や“バランス”を求める時代へ。
お酒が「酔うためのもの」から「味わうもの」「楽しむもの」へと進化する中で、サッポロ フォー ナインはその節目を見届けて静かに姿を消したのかもしれない。
消費者の嗜好も、メーカーの戦略も、そして社会のあり方も変わっていく。
それでも、あの“99.99”という数字に込められた純度と完成度へのこだわりは、多くのファンの記憶に残り続けるだろう。
もしかすると、いつかまた新しい形で“フォー ナインの精神”が復活する日が来るのかもしれない。
サッポロ フォー ナイン 終売 を振り返って
サッポロ フォー ナインが終売を迎えた理由には、時代の変化と企業の選択が重なっていた。
強いお酒を求めた時代から、軽やかに楽しむ時代へ――。
その転換点にあったサッポロ フォー ナインの存在は、缶チューハイというジャンルの進化を語る上で欠かせない一章といえる。
もし今でもあの味を懐かしむなら、在庫を探してみるのも一つの手。
だが同時に、「あの時代の味」として心に留めておくのも悪くない。
サッポロ フォー ナインが教えてくれた“研ぎ澄まされたうまさ”は、確かに一つの時代を作ったのだから。
コメント