近年、サントリー「わつなぎ」が市場から姿を消したことに気づいた人は多いでしょう。カフェやバーで使われていた和素材のシロップとして人気を集めていたこのシリーズが、なぜ終売になったのか。そして今後どんな代替商品を選べばよいのか——この記事では、その背景と現状、そして次に選ぶべき選択肢をわかりやすく解説します。
「わつなぎ」とは?和素材にこだわったプレミアムシロップ
「わつなぎ(WATSUNAGI)」は、サントリー食品インターナショナルが展開していた業務用シロップブランドです。
“和素材をつなぐ”という名の通り、北海道産てんさい糖や阿波和三盆糖、沖縄産黒糖など、日本各地の伝統的な糖素材を組み合わせた高付加価値な製品でした。
シリーズには「わつなぎ ゆず」「わつなぎ 生姜」「わつなぎ 抹茶」「わつなぎ すだち」などがあり、それぞれ徳島県産ゆずや国産しょうがといった原料を使用。飲料、カクテル、デザート、料理の仕上げに使えるプロ仕様の味わいが特徴でした。
特に、甘さを控えた「淡甘(あわあま)設計」は評価が高く、素材の香りや酸味を活かしたバランスのよさがカフェ業界で支持されていました。
サントリー「わつなぎ」シリーズが終売になった背景
では、なぜ人気があった「わつなぎ」が終売となってしまったのでしょうか。
サントリーの公式製品ページには、複数のフレーバーで「製造終了」「在庫限り」との記載があり、流通在庫を最後に販売が終了したことが確認されています。
ただし、「シリーズ撤退」や「後継品の発売」といった発表は行われていません。
ここでは、業界全体の動向を踏まえて考えられる背景を整理します。
1. 業務用市場の縮小と需要の変化
「わつなぎ」は飲食店・カフェなどの業務用市場向け商品でした。しかしコロナ禍を経て業務用需要が一時的に縮小し、仕入れ数量が減少。
一部の専門店では「仕入れが安定しない」「在庫確保が難しい」との声もあり、需要変化が終売の一因と考えられます。
2. 原材料コストと供給リスクの増大
北海道産てんさい糖や和三盆糖、国産ゆずなどを使用するため、原料コストは通常のシロップよりも高め。
さらに、近年の物流コスト上昇や天候不順による収穫量の変動が重なり、安定供給が難しくなった可能性もあります。
3. ブランド再編・商品ポートフォリオの整理
サントリーでは、業務用向け飲料素材ブランドの整理を進めており、「わつなぎ」もその流れで統廃合の対象になったとみられます。
「和素材×高級志向」というコンセプト自体は評価されつつも、一般市場向けへの展開が難しかった点も影響したでしょう。
現在の在庫と流通状況
現在、「わつなぎ」はサントリー公式サイトでも「製造を終了しました」と明記されています。
一部の業務用卸サイトでは「メーカー終売」「終売予定」などの表記が見られ、在庫限りの取り扱いとなっています。
大手通販サイトでも「在庫なし」や「入荷未定」と表示されるケースが増えており、新規で入手するのは難しくなっています。
それでも、まだ流通在庫が残っている店舗や業務用ルートも存在します。もし特定フレーバーを継続的に使用している場合は、早めの在庫確保が推奨されます。ただし、終売品のため価格が高騰する傾向にあり、通常時より割高になっている点には注意が必要です。
「わつなぎ」の代替商品を探すポイント
では、「わつなぎ」に代わるシロップを選ぶにはどのような点に注目すべきでしょうか。以下の観点を意識すると、失敗しにくい選び方ができます。
1. 和素材・国産原料へのこだわり
「わつなぎ」は“和の甘味”をテーマにしていました。そのため代替品を探す際も、国産素材を使用しているかを確認しましょう。
例:徳島産ゆず、鹿児島産しょうが、宇治抹茶など。
素材の産地が明示されている製品ほど、品質・風味が安定しており、業務用としても安心です。
2. 甘味のバランス(淡甘タイプ)
わつなぎは、甘さを控えめにして素材の香りを引き立てる「淡甘設計」が特徴でした。
代替品でも、過度に甘いタイプよりも「自然な甘味」や「香料控えめ」をうたう製品が適しています。
3. 業務用仕様・容量・保存性
500mlや250ml瓶など、業務用サイズが用意されている製品を選ぶと使い勝手が良いです。
また、開封後の保存性(冷蔵・常温対応)や賞味期限も比較のポイントになります。
4. 供給継続性と入手しやすさ
終売リスクを避けるためにも、安定した供給ルートを持つメーカーや卸サイトを選ぶことが大切です。
大手飲料メーカー、専門シロップメーカー、または業務用食品問屋が扱う商品を優先すると安心です。
5. 用途への適合性
カフェドリンクやカクテル、デザート、料理ソースなど、使用目的に応じて相性が異なります。
たとえばドリンク向けなら溶けやすさ、料理用途なら粘度や香りの残り方を重視すると良いでしょう。
「わつなぎ」愛用者におすすめの代替シロップ例
具体的に、代替候補として検討できるジャンルを挙げてみます。
- モナン(MONIN)シリーズ
海外ブランドながらゆず、抹茶、ジンジャーなど日本的フレーバーも豊富。カフェ・ホテルで定番。 - 1883メゾンルータンシリーズ
果実の香りを活かした自然派シロップ。わつなぎのような淡い甘味に近い。 - 中村商店 和シロップシリーズ
国産ゆずや抹茶を使った業務用和風シロップを展開。国産素材を重視したい店舗におすすめ。 - サントリー他ブランド(ボス カフェベース/クラフトボス)
同社の「ボス カフェベース」「クラフトボス」シリーズなど、用途によっては代替材料として活用可能。
これらの製品はいずれも、和素材をテーマにしたドリンク開発にも向いており、「わつなぎ」愛用者にも比較的近いテイストが得られます。
終売品の取り扱いと注意点
終売品を扱う際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
- 賞味期限の確認
在庫として流通している商品は、製造から時間が経っている可能性があります。使用前に必ず期限を確認しましょう。 - 品質変化のリスク
糖分濃度が高いとはいえ、保管環境(高温・直射日光)によって香りや色が変化することがあります。 - 販売・紹介時の表現
終売品を紹介する際は、「在庫限り」「販売終了済み」と明記し、誤解を招く表現を避けることが重要です。 - 代替品へのスムーズな切り替え
既存メニューに使用していた場合は、味の再現性を確認しながら徐々に切り替えるとスムーズです。
サントリー「わつなぎ」終売品の実情と代替商品の選び方を詳しく紹介
サントリー「わつなぎ」は、日本の素材と職人の技を融合させた稀有な業務用シロップブランドでした。
しかし、飲食業界の環境変化やコスト上昇、ブランド再編などの影響により、惜しまれつつ終売を迎えたと考えられます。
現在は在庫限りの流通であり、購入できる機会は限られています。もし「わつなぎ」の味わいやコンセプトを引き継ぎたい場合は、国産素材・淡甘設計・業務用対応といった条件を重視して代替品を選ぶとよいでしょう。
また、終売という事実を踏まえつつ、「あの味を再現する」「和素材の新しい組み合わせを試す」といった発想で、新たなメニューや商品開発に生かすのも一つの方向性です。
和の香りと甘みをつないできた「わつなぎ」の精神は、形を変えて次の時代にも受け継がれていくはずです。

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