「サントリー それから 終売」という話題が静かに広がっています。かつてサントリーの本格焼酎シリーズとして親しまれた「それから」が、気づけば店頭から姿を消していた。愛飲していた人の中には、「どこに行っても見つからない」「在庫限りと書かれていた」と感じた方も多いのではないでしょうか。この記事では、その終売の背景や影響、そして今後の焼酎市場の行方を探ります。
「それから」とはどんな焼酎だったのか
サントリーの「それから」は、麦焼酎・芋焼酎それぞれのラインがあり、まろやかな香りと飲みやすい後味で人気を集めていました。比較的手頃な価格帯ながら、サントリーらしい丁寧な造りが感じられ、家庭用から居酒屋まで幅広く流通していました。
デザイン面では、シンプルな横長ボトルに「それから」とだけ書かれた控えめなラベルが印象的。派手さはないが、静かに飲み手の心に残るようなブランドでした。
しかし近年、通販サイトなどでは「終売」「旧ボトル」「在庫限り」といった表示が目立つようになり、事実上の販売終了が進んでいます。サントリー公式サイトでも「製造終了商品一覧」に焼酎カテゴリーの一部が掲載されており、「在庫がなくなり次第販売終了」と案内されています。
なぜ「それから」は終売となったのか
メーカーから正式な詳細発表は出ていませんが、複数の要因が重なっていると考えられます。
まず大きいのは、焼酎市場全体の縮小と変化です。近年、若年層を中心にチューハイやハイボールなどのRTD（Ready To Drink）飲料が主流になり、家庭で焼酎を飲む層が減少しました。特に麦焼酎や芋焼酎は、固定ファンはいるものの市場全体の勢いは弱まりつつあります。
さらに、サントリー自体のブランド再構築の流れも背景にあります。現在、同社が焼酎カテゴリーで積極的に展開しているのは「大隅（おおすみ）」ブランド。芋と麦の両ラインを揃え、若い世代にも受け入れやすい軽やかな味わいとスタイリッシュなデザインを採用しています。「それから」はこの新しい焼酎戦略の中で整理対象となったとみられます。
また、原材料価格の上昇や製造コストの高騰も無視できません。芋や麦などの主要原料は近年値上がりしており、採算が取りづらい商品は生産を縮小せざるを得ない状況です。多品種展開を見直し、採算性の高い主力ブランドに集中する――サントリーに限らず、酒類メーカー全体に共通する傾向です。
飲食店・消費者が感じた「喪失感」
SNSを中心に「お気に入りの焼酎が終売になった」との声が散見されます。中でも飲食店関係者からの反応が目立ち、「麦焼酎の『それから』が先月で終売になってしまったので、『大隅』に切り替えます」という投稿も見られました。
こうした声からも、ブランドの入れ替えが現場レベルで進んでいることがわかります。消費者にとっては「知らない間に無くなっていた」という印象が強いですが、流通や飲食店の間ではすでに数年前から終売対応が進んでいたようです。
一方で、「それから」はクセのない味わいで家庭用にも人気があり、在庫を求めて複数の通販サイトを探す人も少なくありません。終売によって一部では価格が上昇したケースもあり、プレミア化まではいかないものの「懐かしの一本」として探し求めるファンが一定数存在します。
終売の裏にあるサントリーの戦略転換
サントリーはもともとウイスキーやビールのイメージが強い企業ですが、焼酎事業にも長く関わってきました。「それから」はその中でも“本格焼酎への入り口”のような存在でした。飲みやすく、気取らず、家飲みにちょうどいい――そんな立ち位置です。
しかし市場全体が変わる中で、企業としてもポートフォリオの見直しが求められます。多ブランドを維持することはコストがかかり、プロモーション面でも分散が生じやすい。そこで「それから」を含む旧来のブランドを整理し、「大隅」を中心に新しい焼酎イメージを構築する方向に舵を切ったと考えられます。
「大隅」は九州産の原料を使用し、より地域色とクラフト感を打ち出しています。従来の「それから」に比べると若干高価格帯ではありますが、ブランドストーリー性やデザイン性を重視した現代的なラインとして位置づけられています。
消費者に残る選択肢と代替商品
もし「それから」の味わいが好きだった方は、サントリーの「大隅」を試してみるのが一つの方法です。麦焼酎・芋焼酎どちらも展開されており、クセが少なくすっきりした飲み口は共通しています。ラベルデザインも落ち着いたトーンで、家飲み用としても違和感がありません。
また、他社製品であれば「いいちこ」「二階堂」「黒霧島」などが近いジャンルの麦・芋焼酎として挙げられます。これらは全国で安定供給されており、手軽に購入できます。
ただし、「それから」はサントリー特有のブレンド技術による柔らかい口当たりが特徴だったため、完全に同じ味を再現するのは難しいかもしれません。だからこそ、在庫が残っているうちに手に取る価値があります。
終売による“価値の変化”とは
終売というのは単なる販売終了ではなく、あるブランドの「物語が閉じる瞬間」でもあります。その商品を愛してきた人にとっては、思い出とともに残る存在。ときに懐かしさや希少性が加わり、“もう手に入らない”という事実が新たな価値を生むこともあります。
一方でメーカーにとっては、終売は次の一歩への準備段階。生産ラインやブランド資源を整理し、新しい市場ニーズに対応するための戦略的判断です。サントリーもまた、時代に合わせた新しい酒文化を作るために「それから」という歴史の一章を閉じたと見るのが自然でしょう。
終売を前向きに捉えるために
「それから」のように、愛された商品が静かに姿を消すのは寂しいものです。しかし、終売は決して“終わり”だけを意味しません。その裏には、メーカーが次のステージに向かって挑戦を続ける姿勢があります。
もし「それから」を愛飲していた方は、代わりに登場した「大隅」などの新ブランドを手に取ってみてください。もしかすると、その一口の中に「それから」の面影を感じるかもしれません。
そして、今もどこかに残る在庫や旧ボトルを見つけたら、それはもう一期一会の出会い。焼酎文化の変遷を感じながら、ゆっくりと味わうのも一興です。
サントリー「それから」終売をめぐる考察のまとめ
「サントリー それから 終売」という出来事は、単なる商品の終了ではなく、焼酎市場の変化やブランド戦略の転換を象徴しています。市場縮小・嗜好変化・コスト上昇といった要因が重なり、サントリーは「それから」から「大隅」へと軸を移した。消費者にとっては寂しさもありますが、酒造りの新たな方向性が見える節目でもあります。
焼酎という文化は、時代に合わせて形を変えながら続いていきます。「それから」が残した味わいと記憶は、次の世代の焼酎づくりにも確かに息づいているのです。
コメント