富士山麓樽熟原酒50度とは？国産ウイスキーの名作
キリンが手がける「富士山麓 樽熟原酒50°」は、静岡県御殿場市の富士御殿場蒸留所で造られた国産ウイスキーの名品。
アルコール度数50度という高めの設計で、樽の香りと原酒の力強さをそのまま感じられる1本です。ノンチルフィルタード（非冷却濾過）製法により、原酒由来の風味を損なわずにボトリングされており、まさに「富士山の麓で熟成された原酒」の個性が詰まったウイスキーとしてファンに愛されてきました。
シリーズとしては「富士山麓 樽熟50°」の後継モデルにあたり、2016年に「富士山麓 樽熟原酒50°」としてリニューアル。700mlボトル、度数50%、ブレンデッドながらも原酒の香味を生かした重厚な味わいが魅力でした。価格帯も比較的手頃で、「コスパ最強ウイスキー」と評されたこともあります。
終売発表は2018年末、理由は“原酒不足”
しかし、この人気ウイスキーも2018年11月に終売が正式発表されます。
キリンはプレスリリースで「原酒の供給が追いつかないため」と説明しており、2019年3月下旬の出荷をもって販売終了となりました。
この「原酒不足」は、当時のウイスキーブームが背景にあります。日本のウイスキー市場は2010年代半ばから急激に成長し、ハイボール人気や訪日観光客の需要増によって、メーカー各社が原酒不足に陥りました。
ウイスキーは仕込みから熟成までに長い時間がかかるため、急激な需要増に対して即座に増産することが難しく、原酒ストックが限界に達してしまったのです。
同じ時期には、サントリーの「白州12年」や「響17年」など有名銘柄も次々に出荷休止・終売に追い込まれており、「富士山麓 樽熟原酒50°」の終売もこの波の中にあったといえます。
終売後の市場の反応と価格高騰
終売発表後、「富士山麓 樽熟原酒50°」は瞬く間に店頭から姿を消しました。
かつては1,000円前後で手に入った時期もあったこのウイスキーが、終売報道以降は一気にプレミア価格に。Amazonや楽天市場などでは定価の数倍の価格で取引され、オークションサイトでは2万円〜3万円で落札されることもあります。
特に「箱付き未開栓品」や「状態良好なボトル」はコレクター人気が高く、買取専門店でも高額査定がつくケースが増加。ウイスキー投資や蒸留所ファンの間では、「最後のキリン原酒50度」として希少価値が評価されています。
一方で、転売目的での過度な価格つり上げも見られ、購入時には出品元の信頼性や保存状態の確認が欠かせません。
50度原酒ならではの味わいと特徴
「富士山麓 樽熟原酒50°」の味わいは、力強く芳醇。
モルトとグレーンの絶妙なバランスに加え、50度という度数がもたらす濃密なボディ感が特徴です。口に含むと、バニラのような甘みとオークの樽香が広がり、後味にはスパイスとビターさが残ります。
ノンチルフィルタード製法により、冷却濾過による香味成分の損失を避けているため、ウイスキー本来の厚みや余韻を楽しめるのも魅力。
ハイボールにしても味が崩れず、加水によって香りが一層開く点も人気の理由でした。
多くの愛飲者が「この味が忘れられない」「終売が本当に惜しい」と語るほど、日常使いにも贅沢な1本として長く支持されてきました。
終売の背景にある「富士御殿場蒸留所」の事情
富士御殿場蒸留所は1973年にキリンとスコッチメーカーとの技術提携で設立された、日本でも数少ない“モルトとグレーンを同一敷地で製造できる”蒸留所です。
つまり、ブレンデッドウイスキーを自社完結で仕上げられる希少な存在でした。
しかし、熟成に時間が必要な原酒の管理は限られた樽容量に依存しており、特に高品質な樽熟成原酒のストックは増やすのが容易ではありません。
その結果、「富士山麓 樽熟原酒50°」のように原酒を大量に必要とする高度数ウイスキーは、供給継続が難しくなっていったのです。
終売時、キリンは「他の富士山麓ブランドの生産に原酒を集中する」とコメントしており、ブランド存続のためにラインナップの整理が行われたとみられます。
後継商品はある？「富士山麓 シグニチャーブレンド」との違い
現在、「富士山麓」ブランドの中で流通している主力商品は「富士山麓 シグニチャーブレンド」です。
ただしこれは「富士山麓 樽熟原酒50°」の直接的な後継ではなく、ブレンド比率やアルコール度数も異なります。
富士山麓 シグニチャーブレンドはアルコール度数43度で、より飲みやすく設計されたバランス型。香りや味わいは繊細で上品な方向に寄せており、「富士山麓 樽熟原酒50°」の力強さ・重厚感とは明確に異なります。
そのため、かつての原酒50度ファンからは「物足りない」との声もあり、終売品を懐かしむ動きが続いています。一方で、日常的に飲みやすい国産ブレンデッドとして評価する層もあり、ブランドとしては新たな方向に進化しているともいえるでしょう。
現在の入手方法と注意点
2025年現在、正規販売は完全に終了しています。
手に入れる方法としては以下の3つが主になります。
- 在庫を持つ酒販店を探す
一部の地方酒販店や小売店に、在庫が残っている場合があります。「終売」と明記されつつも販売中のケースもあるため、問い合わせる価値ありです。 - 中古・オークションサイトを利用する
ヤフオクやメルカリ、楽天ラクマなどでは常時数点の出品が見られます。価格は1万円台から高いもので3万円を超える場合もあり、保存状態や付属品（箱・栓の状態）を確認することが重要です。 - ウイスキー専門買取店・販売店を利用する
「リカーオフ」「ジョニーデップ」など、専門店が扱う正規流通の中古ボトルを選ぶと安心。真贋保証付きのショップも増えています。
ただし、終売から数年経過しているため、液面低下やコルク劣化、ラベルの変色など保存劣化リスクがあります。購入前に写真確認は必須です。
なぜ「富士山麓 樽熟原酒50°」は愛され続けるのか
単なる“終売ウイスキー”ではなく、いまなお語り継がれる理由は3つあります。
- 味の完成度が高い
50度の厚みある味わいながら、雑味が少なくバランスが取れていた。加水やソーダでも崩れず、多様な飲み方に耐える柔軟性。 - 手頃な価格で本格派
終売前は2,000円台で購入できる本格原酒仕様。海外ウイスキーと比べてもコスパが非常に高かった。 - 富士山麓ブランドの象徴的存在
富士御殿場蒸留所の技術力を示す代表作として、ブランドの看板を背負っていた。
これらの要素が重なり、「もう一度飲みたい」「あの味が忘れられない」という声が絶えないのです。
再販や復刻の可能性は？
現時点（2025年）では、キリンから「富士山麓 樽熟原酒50°」の再販に関する公式発表はありません。
ただし、富士御殿場蒸留所は引き続きモルト・グレーンの生産を継続しており、限定リリースや新ブランド展開の余地はあります。
また、近年の国産ウイスキー人気再燃に伴い、メーカー各社が過去銘柄の復刻や特別版をリリースする傾向も見られるため、将来的に「富士山麓50度」が何らかの形で蘇る可能性もゼロではありません。
ファンとしては、再登場を信じて待ちたいところです。
富士山麓樽熟原酒50度を手に入れる最後のチャンス
もし今、この記事を読んで「一度飲んでみたい」と思った方は、今がまさに最後のチャンスです。
終売から数年が経ち、流通在庫は日に日に減少しています。価格も上昇傾向にあり、今後さらに希少価値が高まることは確実です。
手に入れるなら、信頼できる販売店・オークションを慎重に選びましょう。
そして、もし手元に届いたなら、その香りと味わいをゆっくりと確かめてみてください。
富士山の麓で生まれた原酒の力強さと日本のウイスキー文化の深みを、きっと感じられるはずです。
国産ウイスキーの黄金期を象徴した「富士山麓 樽熟原酒50°」。
終売という形で幕を閉じた今も、その名はウイスキー愛好家の記憶に深く刻まれています。
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